第3話 お前はエスパーか!!
新入生だけではない。
在校生含め
教師以外が同じ制服を身にまとい、
校長、PTA,生徒会長、新入生代表と当たり障りない挨拶をこなしていった。
狭苦しい体育館の中で一時間にわたる
人生最初で最後の貴重な高校入学式は、
俺にとって実に不毛かつ退屈なものに終わった。
新入生から順に解放されていく。
解放された時は、まさに都会の満員電車から
何とか脱出かのするように下車した時の清々しい気分と同じで
「これで俺も晴れて自由の身だ」と
言わんばかりに
一時停止して両手を伸ばし、背伸びをした。
すると
後ろから一瞬だが
「手すりがないのは辛かったね」
と優しく語りかけるような声が聞こえた。
自分の世界に入っている最中、唐突な出来事だった。
俺は自分の世界に入り込みすぎたせいで
満員電車の幻聴が聞こえたのかと冷静さを取り戻そうとする。
「さあ、落ち着こう。
満員電車は俺の心の中の世界だ。
落ち着け落ち着け~!!
息吸って~、吐いて~。もう一度吸って~」
「手すりが必要だ」
間違いない。
再び一字一句ど真ん中で聞こえてきた。
それも優しく語りかけるように。
すぐさま振り返った。
満員電車において手すりは必需品そのもの。
手すりがあることで揺れや他人との接触を
緩和できるという心理的安定になる。
なおかつ、
満員の際、男性は痴漢に疑われないように
両手で手すりを持つなんてことも。
繰り返すが、満員電車において
手すりは欠かせないものである。
その上で
俺の心理を完璧に読み取って、
的確な、的確すぎる、
的確にもほどがある語りかけをしてくるやつは
一体どんな・・・
そこには
サラサラヘアーで笑みを浮かべた
甘いマスクにスラ~とした細身の高身長、
同じ男として反射的に目を背けてしまう
イケメン野郎がこちらをじっと見つめていた。
目があったまま
何を言うでもなく
何をするでもなく
数秒の時が目の前を流れた。
そしてイケメン野郎は三度目の
「手すり・・・必要だね」
と目を反らすことなく、
ニヤニヤした甘いマスクで
口調はそのまま優しく語りかけてきた。
これが三度目の正直というやつだろうか。
いや、何か違う気もする。
ニヤニヤイケメン野郎の発言に
一枚座布団をとられた俺は、
座布団を取り返すべく
ニヤニヤイケメン野郎に負けないくらいに
ニタニタ顔で優しく語りかけた。
「手すり?
必要ない。俺は座っているからね。」
この一言は
座布団を取り返すどころか
倍返しに匹敵する。
電車内において、
満員電車を唯一回避できる最も合理的な方法、
それが座席に座るということだ。
座ってしまえば
目的地に着くまではくつろぎ続けることができる。
満員電車の回避法として敵なしである。
唯一警戒すべきことがあるとすれば
隣の座席に座る見知らぬ人が
睡魔に負けて居眠りし、
俺の肩に横たわってくることくらいだ。
美女ならいいが、おじさまの時は
苦痛以外の何ものでもない。
まず、
この返しはイケメン野郎も
想定外であっただろう。
今、ニヤニヤイケメン野郎は
どんな顔をしているのだろうか。
無性に気になった俺は
顔をあげてイケメン野郎に目をやった。
目をやったその先には、
またもやニヤニヤしながら
距離まで近づけてくるイケメン野郎がいた。
否、目と鼻の先までやってきた。
「そっか、
じゃあ君の隣に座らせてもらうとするよ」
これが唯一友と言える存在の一人
若草 駿
との出会いだった。
と、嘘偽りない俺と駿が出会った
信じられないような話を述べたわけだが、
ここで高校時代の
青春真っただ中の話を打ち切るのも
なんかスッキリしないだろうから・・・
スッキリ・・・しないよね??
ね!!??
ということで
読者のみなさんのリクエストにお応えし、
佐藤太郎の高校時代編を
急遽
「TO be continued」していこうと思う。
しばし
俺のちょっと甘酸っぱかった青春・・・
と振り返られるものであってほしかった
モア―ビターな青春を振り返っていくとしよう。
タイムスリップのご準備を♪
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