第2話 モテ男の名は

俺の数少ない友達の中で

さらに少ない親友と言えるであろう一人


甘いマスクでお人好しな性格の持ち主、

女が放っておかない

いや、放っておくはずがない 


ほとんどの男なら一番の悩みともいえる

モテることの苦労知らず


THEモテ男の名は 



若草 駿 



二十三歳 


働き盛りの独身だ。



 ちぇ、なんだか悔しいぜ。

いや、悔しいを通り越して虚しい気さえする。


決して駿のことを持ち上げているわけではない。

これ以外の言葉が見当たらないのだ。

太郎の親友が駿とは、名前からしてもすでに釣り合っていない。

本当に俺なんかが主人公でいいのか?

まだ駿に切り替えられるタイミングだぞ?

まぁ、この話は作者の好みだからいいんだけど、話を戻して

俺と駿は本当に仲が良く、いつも一緒につるんでいる。

今日はたまたま俺が一人でいたい気分だっただけだ。


そういうとき、

誰にだってあるだろう。


いつもメールで

「あそぼ」

の三文字を俺が送って、

「ピース」

の三文字が駿から返ってくる。


これは何年にも続くお決まりのフレーズだ。

今になっては駿の「ピース」に何も感じないが、

始めの頃は、

普通「いいよ」とか「オッケー」とか

そういうのが返信のフレーズとしては正しいと常々葛藤を抱いていた。


だが今になってみて「ピース」と

さりげなく平和を主張できる駿の光るオリジナル性に、

さすがの言葉を添えるほかない。

外見だけではない

世話好きな面やユーモアさなど中身も含めて駿は全て俺の上をいっていた。


だからこそ二度目になるが、

悔しいを通り越して自分が虚しく、駿がまぶしいのだ。



どうだろう、

そろそろなんで俺なんかが駿と仲良くなれたのか、

きっかけが気になる頃だろう?


え、俺(太郎)とのことはいいから

駿くん個人のことをもっと教えてって?


ちぇ、ほんと教える気なくすぜ。

気になるからといって情報入手を早まってはいけない。

少しずつ知っていく方が

きっとドキドキするというか、胸が高鳴るというか、

とにかくそっちのほうを俺はお勧めする。


ということで話が少し脱線してしまったが

俺と駿との出会いは八年前の高校時代に遡ることになる。








都立海満高等学校入学式





とうとう俺にも

この日が来るとは

我ながら大きくなったものだ。


小学校、中学校と

準青春みたいなものを謳歌してきた。

義務教育であったとはいえ、

やはり人間的経験値の未熟さもあってか、

運動会や文化祭などイベントごとには無我夢中で興奮したものだ。


いや、これに関しては経験値云々ではなく、

俺個人としての性質の問題だろう。


そもそもイベントごとで興奮するのは育ち的に順調とさえ感じる。

イベントごと以外でも夢中になったことはなくはなかったが、

公表するほどのものでもないと判断し、結果公表はしない。

ただ自信を持って言えることは

勉強には夢中になれなかったと言うことだ。


なぜ自信を持って言えるかって?



それはほとんどの者が

そうであったからであると

俺の狭い交友関係のデータが示しているからである。

そして勉強以外に夢中になったこととなると

習い事や部活動のことだと思うだろうが、俺に限ってはそのイコールではない。



ちなみに断じて恋沙汰でもない。



恋沙汰でもな・・・

かった気がするようなどうなような。

まぁ、

義務教育年月九年間もあれば、

誰にでもそれなりのことはあるものなのだろう。

そんなこんなで改めて、高校生になる瞬間がくるとは

我ながら本当に大きくなったものだ。



俺はしばし

校門の前で飛行機雲が描かいていく青空を見上げていた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る