3-2 いざ、海へ

いよいよ、海旅行当日。

現地の最寄り駅で待ち合わせて、そこから、凛君の叔父さんが迎えに来てくれることになっていた。僕は、同じ最寄り駅を利用する響君と優君と一緒に行くことになり、待ち合わせ場所は、この前のショッピングモールで優君と待ち合わせた大きな銅像の前にした。

着くと、グレーのベストと黒のストレッチパンツを着ている響君がすでにいた。僕は駆け寄り、声をかける。

「おはよう!早いねー」

「おはよー!思いのほか、早く着いたんだよー」

「その荷物、重そうだけど、大丈夫?」

響君は野菜が入っているカバンを持っていた。

「これでも凛君と半分にしてるんだよー愁君の方こそ、重そうに見えるけど、」

「へへへ、、、花火だよ。」

僕は、自慢して見せた。

「いいねー」

そんな話をしていると、優君が、この前と同じような恰好で走ってきた。相変わらずよく似合っている思う。

「ごめーんー待たせちゃったぁ?」

「大丈夫だよ。今来たところ。」

早速、三人で電車に乗り込む。

電車の中は、人もそんなに多くなく涼しくて快適だった。


「ところで、気になってたんだけど、優君と響君って知り合いだっけ?」

「ちゃんと話したのは、この前、愁君が退院して、初めて登校した日だったかなー」

優君が思い出しながら答える。

「そっかぁーじゃあ、ほとんど始めてなんだぁー紹介した方がいいのかなぁー」

「大丈夫だよ!元宮君のことは、愁君からよく聞いているから。ねっ!?」

響君が僕を見て微笑んだ。

「えっ、愁君、変なこと言ってないよねー」

優君は、じっと僕を見つめる。

「えっ、、変なこと言ってないよーー!ねっ、響君!?」

「どうだろーー。」

響君は、はぐらかす。

「ちょ、やめてよーー」

三人で笑う。

「一応、今更だけど音宮響です。よろしくね。」

響君が、改まって言う。

「よろしく、ブラスバンド部なんだよねーウチも、愁君から話をよく聞いてるよー」

響君が、じっと僕の顔を見つめる。

「ちょ、、優君までー」

また三人で笑う。


この感じがとても楽しくて幸せだった。

しばらく雑談していると、海が見えてきた。


「わぁ、海だぁー」


電車は進み、別荘の最寄り駅まで到着する。電車を終りると、潮の香りがして、海に来たという実感がする。

海風が心地よくふいていて、これからの旅を歓迎してくれているようだった。


駅の改札口に着くと、凛君が駆けてくる。

「おはよう!」

その姿は、スタイリッシュなスカートで上は、少し派手めな色のシャツだった。

「おはよう!」

みんなで言う。

「向こうに広い場所があって、そこで待ち合わせにしてるから!俺は、残りの勇たちを待つから、先に行っててー」

「わかったー」

僕らは、案内された場所へ向かう。

少し歩くと、待ち合わせに最適そうな広い場所があった。

その場所につくと、すでに藤澤君と東条君がいた。


久しぶりの藤澤君は、いつもと変わらずかっこいい、、


藤澤君は、黒の短パンと青いTシャツのシンプルな姿で、東条君は、赤い短パンとグラデーションのかかったTシャツだった。二人ともクーラーボックスを持っている。


「おはよう!」

僕たちは、二人に言った。

「おはようーーー!」

東条君が元気に言う。

「おはよう。」

藤澤君もいつもの感じで言った。

「えっと、響君は、二人とは、初めてだよねー」

「そうだねー」

「紹介するね。えっと、、、、藤澤君と東条君です。こっちが、音宮君です。」


紹介できるほど、二人とは仲良くないけれど、紹介できるのは、僕だけだと思った。


あぁ、、、緊張する、、


「よろしくね!音宮くん!!」

屈託のない笑顔で東条君が言う。

「よろしく。藤澤です。」

「音宮です。」

どこか響君の顔が冷たく感じた。


「おーーーい!」

凛君が、こちらに向かって手を振る。そこには、武藤君と重岡君がいた。

武藤君は、黒のタンクトップにこの前よりも薄いカーディガンを着ていて、黒の短パン姿だった。重岡君は、水色のチノパンと白のポロシャツ姿だった。

みんなと合流し、お互いに挨拶をした。


「よっ!」

武藤君が、僕の肩に手を回す。

「おはよう。今日は、よろしくね。」

響君は、僕と武藤君が普通に話しているのを見て、驚いているようだった。


しばらくすると白いワゴン車が見えてきた。

「来た、来たーー」

凛君が叔父さんに手を振る。車が止まり、凛君が言っていた叔父さんらしき人が降りてくる。アロハシャツを着て、ダンディな感じで優しそうな人だった。

「みんな、おはよう。今日は、楽しんでいってね。」

叔父さんは、物腰柔らかく言う。

僕らの荷物をトランクに入れてくれて、車に乗り込んだ。車に乗ること、10分ですぐに着いた。別荘は、海の目の前でとても綺麗な外観をしていて、三階建てだ。

「着いたよー」

叔父さんが僕らを中に案内してくれる。中は、広くて、一階には、調理台やソファ-などくつろぐスペースがある。驚いたことに、全面ガラス張りで海を見ることができる大きなお風呂があった。二階には、八人全員で寝ることができる広いスペースがあり、三階は、叔父さんの部屋があった。

みんな、それぞれに驚いていた。


僕は、案内されながら、凛君にそっと囁いた。

「凛君の叔父さんって、お金持ちなの?」

「あまり詳しいことは知らないけど、いくつか経営してるって言ってたかなー何を経営しているかは、わかんねぇーけどな!」

そう言うと、笑っていた。

「そっか。すごいなぁー」

こんなすごいところに、泊まっていいのだろうか。

僕らは、それぞれの荷物を二階に置いた。


「さてと。荷物も片付いたね。カレーを作っておいたけど、昼ご飯に食べるかい?」

叔父さんが提案する。

「食べる―」

東条君と武藤君がお構いなく言った。

「瞬、少しは、遠慮しろよ。」

藤澤君が、耳打ちしている。

「こんな良い場所に、無料で泊めていただくのに、カレーまでごちそうになっていいのですか?」

重岡君が、叔父さんに尋ねた。

「なーに、君たちが気にすることではないよ。遠慮しなくていいからね。」

叔父さんが、優しく答える。

「そうですか。」

重岡君もその顔に安心したのか、僕らは好意に甘えることにした。

カレーは、美味しくて、スパイスがよく効いていた。

武藤君と東条君と凛君は、率先してお代わりをする。

「どんどん、食べなさいー」

叔父さんは、優しく微笑んでいる。

藤澤君も慣れたのか、お代わりをしている。僕には、1杯で十分な量だった。

「みんな、よく食べるねー。」

隣に座っていた優君と話す。優君も1杯だった。

「お前らが、食わなすぎなんだよ!」

もう何杯食べているのかわからない武藤君が笑いながら言った。

重岡君が食べすぎですよと注意していた。


食べ終えると、別荘からすぐ見える海に行くことになった。

さっそく水着に着替えることになり、二階に上がり、着替える準備をする。

この間、買ったばかりの水着を出し、服を脱いで着替えようとすると、

「愁君、待った!何してんの?一階に更衣室あるから!!」

凛君が慌てて止める。

「そっか、、ごめーん、、」

優君が、夏休み前にあった体育の着替えのことを話題にする。

「もう、愁君、気を付けてよー家じゃないんだから、、」

優君は、少し怒っていた。

「ごめんね、、」


一人ずつ、一階の更衣室で着替える。

武藤君と重岡君は、黒色で、藤澤君は青と黒が混ざっているサーフィンタイプの水着だった。凛君は、薄い黄色で、響君は、白色で、東条君は、青と緑色が混ざっているパーカータイプの水着だった。

優君と僕は、この間買った水着を着た。


僕は、藤澤君の水着姿を見て、ひとり赤面した。


「さっ、行くぞ!」

武藤君が元気よく、遊び道具を持って走り出す。

「オイラも!」

東条君も走り出す。

「俺も!」

凛君も続く。それを追いかける重岡君。

藤澤君は、一人ゆっくりと歩き出す。

「ウチらも行こう!」

優君に誘われ、僕と響君も歩き出す。


太陽が照り付け、波の音が静かに聞こえる。

とても穏やかで絶好の海水浴の日だった。

武藤君と東条君と凛君は、早くも海に入っている。どこで膨らましたのかわからないけれど、浮き輪がたくさんあった。

藤澤君は、穏やかな海を見つめ、静かに入ろうとしている。

東条君が、藤澤君に水をかける。藤澤君は、仕返しに水をかける。

その水が、武藤君にかかり、武藤君がどこからともなく取り出した水鉄砲で反撃している。


「あの中は、無理かなぁ、、、」

優君が苦笑いして言った。

「僕も、ちょっと、、、ね、、」

僕たちは、浜辺で砂遊びをすることにした。


砂のお城がちょうど出来上がった頃、

「そこで何やってんだよ!せっかくの海だろ!」

武藤君が僕の手を引っ張り海に引き込む。

「ちょっ、、、」

凛君が僕に水をかける。海の水は、ひんやりしていて、気持ちよかった。

とっさに返した水が藤澤君にかかる。

「やったなー」

藤澤君が、水をかけてくる。

「ごめーん、、わざとじゃないよぉーー」

その水が、東条君に当たり、また水をかけてくる。


海は、混戦状態となった。


――――――――――――――――――――――――

「あーあ。愁君、巻き込まれちゃったね。」

優君が響君に微笑みながら言う。

「そうだねー」

「音宮君は、行かないの?」

「僕は、いいかなー」

響君は、遠目で、はしゃぐみんなを見つめていた。

重岡君が二人の方へ向かい、優君を誘う。

「海に入りませんか?」

「えっと、、、あの海に入るのは、、ちょっと、、」

優君が、少しうつむきながら言う。

「一緒に行きましょうよー」

「えっ、、ちょっとーーーー」

優君がじれている。

「音宮君も、行きましょう。」

響君も誘われ、三人で海に向かう。

―――――――――――――――――――――――――


「おっ!やっと来たな!」

凛君が、水鉄砲で早速かける。

「凛君ーやめてよーー」

優君が、笑っている。

優君の顔に軽く重岡君が水をかける。

「ちょっ、重岡君までー怒るよ!」

優君が、参戦する。

僕は、こっそり響君に水をかける。

「うわ!やったな。愁君!」

響君も参戦する。

海は、ますます混戦状態となったけれど、みんな笑顔だった。



照りつける太陽、そして、きらめく海面、どれも美しくて、最高だ。



遠くを見つめると、叔父さんが、どこからか持ち出したパラソルの下で僕たちを眺めていた。


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