3-3 ビーチドッチボール

水の掛け合いが、ひと段落すると、武藤君がビーチドッチボールをしようとボールを持ち出してきた。


運動、苦手だなぁ、、、


武藤君の気迫に押され、全員強制参加となった。グループ分けは、どこからか持ってきたあみだくじで決めた。くじの結果、僕と藤澤君と凛君と東条君、対、優君と重岡君と響君と武藤君となった。

早速始まる。

武藤君が、雄たけびと共に、藤澤君を狙う。藤澤君は、軽く受け止め投げ返す。僕は、それを横目で見ながら、すごいなと思った。凛君もボールを取り投げる。


みんな、運動神経いいな、、、


優君も、僕と同じように引き気味に見ていた。東条君が投げたボールが優君にぶつかりそうになる。とっさに優君は、手を顔にやると、前に重岡君が出て投げ返した。重岡君に守られた優君は、照れていた。

優君の方ばかり見ていたら、いつの間にか僕の目の前にボールが来ていた。


ああ、この感じ、、、前にもあった気がする。


突然、藤澤君が僕の前に出て、ボールを投げ返してくれる。

「ありがとう、、」

「気をつけろよ、危ないから。」

僕は、一人赤面した。藤澤君に守られていると勝手に感じてしまう。

有頂天になっているところ、優君が軽く投げたボールが僕の顔面にあたる。

僕は、そのまま倒れてしまった。


「愁君、、ごめーーーーん。大丈夫?」

優君が、心配そうな顔で僕を見る。

倒れた勢いで僕の上着は、はだけてしまった。

藤澤君がとっさに水着を着なおしてくれる。

「ははは、、、だいじょーぶ、、」

倒れたまま軽く手を振った。

突然、藤澤君が、僕をお姫様だっこして、叔父さんがいるパラソルのところへ連れて行く。

「だいじょうぶだよ、、」

「念のためだ。少し、日陰で休め。」

「、、、うん、、」

僕は、あまりの恥ずかしさで意識を手放した。


気がつくと、パラソルの下にいた。


「僕は、、、、えっと、、、」

「気づいたかい?ボールが当たって、藤澤君が運んでくれたんだよ。」

「あっ、、、」

思い出し、あまりの恥ずかしさで赤面してしまう。

「若いっていいねー」

叔父さんが、スイカ割りをしているみんなを静かに見ていた。


「愁くーん。起きた?ごめんねーー」

優君が僕に気づいて駆け寄ってくる。

「大丈夫?」

響君も心配している。

みんな、スイカ割りを一時中断し、僕の元に来てくれた。

「もう大丈夫だよーー心配かけてごめんねーー」

実際、気を失ったのは、恥ずかしさからでボールの影響なんてないんだけどね、、、

そんなことは決して言えなかった。

叔父さんは、そのことに気づいているようだった。


「それなら、あっちでスイカ割りしようぜ!」

武藤君が、僕の手を引っ張る。

「おい、勇!もっと優しく扱えよ!愁君は、お前より頑丈じゃないんだぞ!」

凛君が注意する。

「へいへいー」

武藤君が、僕の肩に手を回し、耳元で囁く。

「あんま、心配かけんなよ。心臓にわりぃーから。」

武藤君の顔は、真剣だった。

「ごめん、、」


スイカ割りを、楽しく終える。

ところで、このスイカは、どこから来たのかと聞くと、叔父さんが差し入れをしてくれたらしい。

本当に優しい叔父さんだった。


気づくと、海での楽しい時間もあっという間に終わってしまった。


僕らは、バーベキューのために別荘に戻ることにした。

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