1-12 心配してくれたのかな

6月の終わり頃。2日間珍しく風邪で学校を休んでいた。というのも、僕は、今まで学校を休んだことがないのだ。

無遅刻無欠席を貫いていたのに、風邪で休むとは、、

原因はわかっている。夏姉が、3日前までひどい風邪を引いていて、その風邪がうつったんだと思う。

夏姉はというと、元気になって大学に行ってしまった。


はぁ、まったく、、辛い、、、


「具合どう?」

お母さんが部屋に入ってくる。

「うん、、、、なんとか、、、、」

「おかゆ、ここに置いとくから、少しだけでも食べてね。」

「ありがと、、、ケホ、、ケホ、、」

お母さんは出ていった。僕は、おかゆを少しだけ食べて、眠りについた。

気づくと夜になり、リンク(通信アプリ)には、優ちゃんと響君と凜ちゃんからメッセージが届いていた。みんな心配してくれていて、素直に嬉しかった。それぞれに返信をし終わる。


藤澤君は、僕のことを心配してくれているのだろうか、、、


ぼんやりと天井を眺めていると、翌朝になっていた。熱は引き、具合はよくなり、今日から学校に行けそうだ。

「もう学校行っても大丈夫なの?」

お母さんが心配そうに尋ねる。

「うん、もう熱も下がったし、調子いい感じだよ。」

「よかった。けど、また具合が悪くなったら、無理せず早退するのよ。」

「わかったよ。」

お母さんは、心配性なところがある。

僕は、学校へ向かう。

久しぶりの外は、夏の訪れを待っているようで、少しだけ暑かった。

深呼吸を一つする。すがすがしい気分だ。

学校までもう少しで着くところで、後ろから、響君に話しかけられた。

「おはよう。もういいの?」

「うん、すっかりよくなったよ。」

「珍しいね。愁君が学校休むなんて。」

「夏姉のひどい風邪をうつされたんだよ。」

「それは、大変だったね。」

「本人は、すっかり元気になってたよ。」

僕は苦笑いをする。

「愁君がよくなってよかったよ。ずっと心配してたから」

響君は、心配そうな顔をしている。

「ごめんね。心配かけて。」

いつの間にか学校に着いていた。響君と別れ、自分の教室に向かう。


優ちゃんが話しかけてくる。

「大丈夫?」

「うん、心配かけてごめんね。もうすっかりよくなったよ。」

「それなら安心したよ。愁君、いなくて寂しかったぁー」

優ちゃんが照れながら言った。

「ごめんね。」

「あっそうそう、これ休んだ時の授業のノート。返すのはいつでもいいからね!」

「ありがとう!なるべく早めに返すね。」

僕は、ノートを受け取った。優ちゃんに迷惑がかかるから今日中に書き写そうと思った。自分の席に着くと、凜ちゃんが話しかけてくる。

「大丈夫?」

「うん、もう大丈夫。」

「ならよかった!これ、休んでいた時のプリント。」

「わぁ、ありがとう!」


武藤君が教室に入ってきて、話かけてくる。

「風邪だったのか?」

「うん。もうよくなったよ。」

「からかう奴いなくてつまんなかったわー」

武藤君の表情を見ていると、きっと心配してくれていたんだと思う。

「心配してくれてありがとう。」

僕は、嫌みっぽく言ってみた。

「誰がだよー」

武藤君は、慌てていて、その顔が面白かった。


しばらくすると藤澤君が教室に入ってくる。

「もう平気なのか?」

少しぶっきらぼうだけど、心配そうな顔で聞いてくれた。

「うん。もう大丈夫。」

僕は、笑顔で答える。

「そっか。よかった。」

そう言うと、いつものけだるそうな顔に戻っていた。


藤澤君も心配してくれていたのかな、、、、


素直に嬉しかった。



風邪を引くのも悪くないかな、、、、

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