1-11 雨なんか嫌いだ
凜ちゃんの告白を聞いてから、凜ちゃんの行動が気になるようになった。教室の中では、たくさんの人と話をしていて、本当に社交的な性格なんだと思った。機会があれば、藤澤君にもよく話かけていて、話しかけられたことに関して、藤澤君は、いつものようにけだるそうに答えていた。
あんな社交的な性格だったら、僕も藤澤君ともっと仲良くなれるのだろうか。
まぁ、仲良くなっても告白なんかできないんだけど、、、
それでも仲良くなりたかった。
そんな悶々とした感情を抱きつつ日常が過ぎ去っていった。
6月に入り、季節は、梅雨シーズンへと変わり、雨の降る日が多くなった。ブラスバンド部は、屋内での活動だから雨でも影響はなかった。運動部は、体育館を交互に使用したり、校舎の中で活動している部もあった。
サッカー部も校舎で活動している時があり、そんな時は、いつも気が散って練習に身が入らない。今日もサッカー部は、校舎で活動していて、練習の声が聞こえている。
「また雨だね。」
僕は、休憩中に校庭を見ながら言った。
「ここまで降るとさすがに嫌になるね。」
響君が言う。
「アタシは、雨好きだけどな、、、」
凜ちゃんが、呟いた。
藤澤君が近くにいるから、雨が好きなのかなと柄にもなく勘ぐってしまう、、
「まぁ、雨もいい時はあるよねー」
響君が思わせぶりな発言をした。
部活が終わると、珍しく凜ちゃんが居残り練習をすると言っていた。
凜ちゃんに別れを告げて、響君と一緒に帰る。
いつもの帰り道。シトシトと雨が傘を打ちつける。
「雨、やまないね。いつまで降るのかな、、」
「来週から晴れるみたいだよ。」
「来週か、、、、あっ!」
「どうしたの?」
「お弁当箱、教室に置いたままだった。」
「取りに行く?」
「明日困るから、取りに行こうかな、、」
「一緒に行くよ。」
「ありがとう。」
響君は、嫌な顔をすることなく、僕と一緒に学校まで戻ってくれた。
学校に着くと、音楽室の灯りは、すでに消えていた。さすがに凜ちゃんも帰ったみたいだ。響君には、下駄箱で待ってもらい急いで教室に戻り、弁当箱を回収した。
「あったよ。ごめんね。」
「よかった。行こうか。」
「うん。」
僕たちは歩き出す。
ふとサッカー部の部室に目をやると、相合傘をしている藤澤君と凜ちゃんを見つけた。
あっ、、、、、
僕は、とっさに呟いた。見たくない光景を見てしまった。
「早く帰ろう。」
僕は、歩くスピードを上げる。
響君は、きっと気づいているはずなのに何も言わずに、同じスピードで歩いてくれた。
雨が激しくなり、突風が吹く。
わぁ、、、、、、
僕の傘は、その風により壊れてしまった。
響君が、何も言わずにすぐに自分の傘の中に入れてくれた。
「ありがとう。」
僕が雨に濡れないようにそっと引き寄せてくれる。
僕は、あの二人の光景が、いつまでも目から離れなかった。
雨なんか、嫌いだ、、、
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