1-13 『願いの木』という絵
病み上がり後の授業は、無事に終わった。放課後、凜ちゃんがいつものように部活に行こうと誘ってくれる。優ちゃんから貸してもらったノートがあと少しで写し終わるところだったので、先に行ってもらった。
少しだけ教室に残り、ノートを書き写す。
外からは運動部の声が聞こえ始めた。
ふぅ、、これで全部、写した。
優ちゃんがいる美術室にノートを返しに行く。久々の美術室のため、少しだけテンションが上がっていた。高校生になって美術の授業は選択授業になってしまい、いつも音楽を選択した結果、美術室とは縁がなかった。一度だけ優ちゃんの絵を見せてもらうきっかけがあり、その時に美術室に来て以来、1年以上の時が経っていた。
「失礼します。」
ゆっくりと美術室の扉を開ける。
「優ちゃん、いる?」
誰もいなかった。静かに教室の中を見て回ると、一番隅にひっそりと布がかかっている大きそうな絵があった。興味本位で、その布を少し取ってみた。
わぁ、、きれい、、、、、
その一枚の綺麗な絵に驚いた。
「愁君?」
優ちゃんが美術室の奥の扉から出てきた。
「あっ、ごめん、勝手に。借りたノートを返そうと思って。」
「いつでもよかったのに。ありがとね!その絵、綺麗だよねー
その絵に描かれている木のことを『願いの木』って言うんだって。」
「そう、なんだ。すごく綺麗。誰が描いたの?」
「わからないんだって。美術部に入ってからずっとあって、先輩に聞いたら、描いた人は、誰も知らないみたい、、」
「へぇ、、、不思議ー」
「それとね、、その木を見た人は、願いが叶うんだって。だから、『願いの木』って言うみたいだよ。」
「ますます不思議だね。『願いの木』って本当にあるの?」
「わかんない。先輩も先輩の先輩に教えてもらったって言ってたから、実際、誰も本当のことは知らないみたいだよー」
「そっか、、、『願いの木』、あったらいいね。」
「何か願い事あるの?」
「いや、、そういうわけではないんだけどね、、」
僕は、苦笑いをした。
「あっ部活行かなきゃ!また明日学校でね!」
「うん、病み上がりだから無理しないでね!」
美術室を後にする。
いつの間にか夕日が校舎に差し込んでいた。
廊下を歩きながら、自分の願いについてふと考えてみた。
サッカー部の声が聞こえる。
願い事かぁ、、、、
付き合えなくてもいいから、みんなと同じように普通に恋愛がしたいな、、
サッカー部を見ながらそう思った。
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