1-7 体育は苦手

今日は、朝から憂鬱だった。というのも3年最初の体育が一時間目にあるからだ。僕は、体育が苦手だ。


班行動だったら本当に困るなぁ、、


同じ班の彼と武藤君は、運動が得意な人なので絶対に足を引っ張ると思った。


はぁ、、、不安だ、、


「今日はいつにもなく元気ないけど、大丈夫?」

優ちゃんが話しかけてくる。

「だって、、体育だよ、、はぁ、、やりたくない、、」

「愁君、体育苦手だもんね、そういうウチも苦手だけど、、」

「班行動だったら、どうしよう、、」

「朝から元気ないね!」

凜ちゃんが話かけてくる。

「体育がね、、、」

「何とかなるでしょ!」

凛ちゃんが笑顔で答えた。優ちゃんと凛ちゃんに愚痴っていたら、ホームルームの時間になった。ホームルームが終わり、とうとう体育の授業になる。体操服に着替える時、隣の彼を意識してしまい、一人で照れていた。着替え終わると、校庭へ向かう。

体育の岡崎(おかざき)先生が、すでに待ち構えていた。岡崎先生は、野球部の顧問で少しだけ怖い。


「おはよう。今日は、最初の授業なんで、とりあえずドッジボールをやる。チームは班ごとでな。ストレッチはしろよ。以上」


えっ、、、、、、、


説明がかなり雑だった。初回だから班で集まって、あとは適当にストレッチしてドッジボールをしろと、それだけだった。しかも班ごとで、男子の人数が違うから、適当に5人ぐらいになるように調整しろと言った。


班かぁ、、、、


とりあえず班で集まると、武藤君が仕切りだす。

「俺らの班は、3人だから、あと2人はいるな。とりあえず玄と瞬を呼ぶか。」

そういうと、重岡君と彼と仲がよい男性が来た。

「東条瞬(とうじょう しゅん)です。よろしくね。」

「よろしくお願いします。」


この時、初めて彼と親しげに話している男性と話した。人数も集まり僕たちは、武藤君の掛け声に合わせてストレッチをした。二人でやるストレッチは、僕だけなぜか武藤君と彼とで交互にやることになった。背中をくっつけてやるストレッチの時、武藤君は、僕の身体を無理矢理伸ばして、笑っていた。


「あっ、ちょ、、っと、、やめ、、、」


はぁ、大変だ、、、


一方、前屈のストレッチの時、彼が優しく押してくれた。彼の手が僕の背中に熱をもたらし、またしても身体が火照ってしまう。


はぁ、、、


ストレッチが、やっと終わりドッジボールが始まった。チームは、5つに分かれ、いかにも強そうな班があった。僕たちは、その強そうな班と試合をすることになり、5対5のドッジボール戦が始まる。


「おらー」

っと本気で敵チームの人が投げてくる。ものすごい速さでボールが向かってくる。

「しゃあー。」

武藤君がそれを簡単に受け取り、即座に投げ返す。すごいなと思ったけれど、そのボールもすぐに投げ返された。試合は、ずっとこんな雄叫び合いが続き、僕が、入ることなど到底できなった。体育の終了時刻も迫ってきて、敵チームが弱そうな僕を一斉に狙い始める。獲物を狩るような目で僕を見つめ、僕に向かって剛速球でボールを投げてきた。


あぁ、当たるなぁ、、、、

当たったら痛いんだろうな、、、、


と半ば諦めていた時、目の前に彼が飛び出して、そのボールを一瞬で投げ返すと敵チームに当たった。


ほんの一瞬の出来事だった。


チャイムが鳴り、僕らの勝利となった。

「藤澤すげー」

周りの人が誉める。

「さすが、恭くん。」

東条君が笑顔でねぎらっている。

「かっこつけやがって。」

武藤君は、少しいら立っていて、それを重岡君がなだめていた。


「藤澤君、、あ、ありがとう、、、」


「別に、」


初めて藤澤君と会話をした。けだるそうに答えた藤澤君は、やっぱりかっこよかった。



こうして初めての体育が終わった。

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