1-6 思いが募る
いつの間にか今日の授業が全て終わっていた。
一日中、化学準備室の出来事をずっと考えていた。隣にいる彼を見るたびに、身体が火照ってしまう。
「大丈夫?」
優ちゃんが、心配そうな顔をしている。
「化学からずっと上の空って感じだったけど、何かあったの?」
「えっ、そうかなぁ。何にもないよ、、、」
僕は、内心焦った。
「それならいいんだけど、嫌なことでもあったのかと思って心配してたよ、、」
「大丈夫だよ。心配かけてごめんね。」
慌てて平気を装った。
「愁君、部活行く?」
凛ちゃんが話しかけてくる。
「うん、行こう。優ちゃん、また明日ね。」
「部活、頑張ってね。」
「優ちゃんも、頑張って。」
音楽室に向かう途中、少し弱音を吐いた。
「この班でやっていけるかな、、」
「勇って、愁君にすごい絡んでるけど、知り合いだっけ?」
凛ちゃんが心配そうだ。僕は、あの応援演奏のことを話した。
「あー、あったね。あれ以来なんだ。ホント、しつこいね!」
「どうしたの?元気ないみたいだけど、」
ふいに響君が話しかけてくる。僕たちは、新しい班のことを説明した。彼の名前を出した時、響君の顔が一瞬だけ変わった気がした。
「藤澤君がいるんだ、、、」
「うん、知り合いなの?」
「別に、知り合いってわけではないよ。」
「そうなんだ、、、」
少しだけ沈黙が続いた。
「ところで、班決めした?」
僕は、話題を響君のクラスに移した。
「したよ、可もなく不可もなくって感じかな。」
「響君は、誰とでもうまくやれるもんね。」
凛ちゃんが明るく頷いている。
「そうだよね!」
僕は、凛ちゃんに同意した。
「僕だって、苦手な人ぐらいはいるよ。」
「えっー。」
僕と凛ちゃんの声が重なった。
響君の様子は、いつも通りに戻っていた。
僕たち3人は、いつものように仲良く部室に向かう。
向かう途中に校舎から目に入るサッカー部、そして黒のユニフォーム姿。
僕は、会話をしながらもサッカー部を意識していた。
あぁ、思いが募る、、、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます