第二百八話 最初で最後の本音
「ソニックもググも……死んじゃイヤだぁぁぁッ!」
その場にいるすべての者が動き出していたとき――。
ビクニはググの体を
ソニックは
だが魔力が
もう夜だというのに、ソニックの身体は穴だらけのままだった。
「ビクニ……」
ソニックがか
そんな彼の目は
ビクニは顔をあげてソニックの顔に
今すぐ誰か呼んでくる。
だからそれまで死なないで――と、泣きながら返事をした。
だが、ソニックはそんなことを
彼はビクニへ
「わかるか、ビクニ。まだ
されるがままだったビクニは、彼の言葉を
「俺の話を聞けよ……。お前は……そういうとこは最初にあったときから変わらねぇな……」
ソニックが彼女の
その力は
だが、ビクニは振り払わずにソニックの顔を見つめた。
ソニックはそれでいいと言うと、話を始めた。
今の女神はたしかに
レヴィとリョウタの攻撃が
だからあともう一撃ぶちかましてやれば倒せると、血を
「だけど……そんな力……もう誰も
ビクニの言う通りだった。
すでに、リム、リンリは力を使い果たし、レヴィもリョウタも同じだ。
ググはビクニを
ルバートやラヴィ――。
エンや
ライト王が
あともう一撃ぶちかますにしても、すでに戦える者がいないのだ。
「だから……
ビクニはソニックの腕にしがみついてそう言った。
もう
これ以上は何もできない。
何よりもソニックがググのように動かなくなったら
「
ソニックはそんな彼女の顔を
そして、笑みを浮かべる。
「女神にぶちかませる一撃はここにある」
ソニックは言葉を続ける。
今のビクニは完全な吸血鬼だ。
しかも吸血鬼族の王――ラヴブラッドの
ビクニには彼が何を言いたいかわからなかった。
先ほど女神の動きを
いくら自分が吸血鬼だからって、そんな一撃を放つほどの力はもう残っていない。
「ああ、だけどな……。あるんだよ……
ソニックは
「お前が俺の血を
すでに完全な吸血鬼であるビクニなら、魔王の血を
彼はビクニへそう言うのだった。
「吸血鬼族にとって血の
「で、でも……そんなことしたらソニックが……」
ビクニは思う。
たしかにこれまでの
だから今吸血鬼化した自分が彼の血を吸えば、女神を倒せるかもしれない。
だが、瀕死の状態のソニックの血を吸ってしまったら――。
その
「やっぱりダメ……ダメだよッ! ソニックが死んじゃったら……私……私……」
「ググだけじゃ
「だけどッ!」
涙が止まらないビクニの
涙ぐんだ両目を開く彼女へソニックが言う。
「お前は騎士だろ? やるべきことをやれよ……」
その言葉の後――。
ビクニは
泣きながら歯を立てて、
血を吸われながら、ソニックは昔話をし出した。
ライト王国で初めてビクニ出会ったときのこと――。
森でソリテールと三人で過ごしたこと――。
武道家の里でリムの家でごちそうを食べたこと――。
海の国の
これまでの
「俺さ……。女神とやりあうって決めて……」
もうソニックの声は、
ビクニは彼の血を吸い続けながら、
もう聞けないかもしれないソニックの声を――。
二度と聞けない彼の言葉を――。
忘れないように、いつまでも覚えているようにと泣きながら耳を
「とっくに死ぬ
ビクニは自分の体が
それは、自分の涙ではなくソニックの血でもなく、彼の流す涙だった。
「でも……お前の顔を見ていたらさ……。情けねえけど……。やっぱ、死にたくねえわ……」
まだお前といたい――。
これからもずっと旅を続けていたい――。
それがソニックの
彼にとってビクニは、出会った
「ビクニ……楽しかったぜ……。ありがとな……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます