第二百一話 女神を倒す作戦

そんな空気の中、女神がリョウタへひかりはなつ。


文字通もじどおり光のはやさで放たれたため、リム、リンリ、レビィも反応はんのうすることができなかった。


「リョウタッ!?」


レビィがリョウタの身をあんじてさけんだが、もう間に合わない。


このまま彼の身体をつらぬくと思われたが――。


「ファストドライブ!」


突然リョウタの目の前にあらわれた人物が、女神の放った光をはじき飛ばした。


そのコウモリのつばさを見れば誰だかすぐにわかる。


ソニック·ラヴブラッドだ。


リョウタをすくった彼を見た三人の顔がほころぶ。


それとは反対に、女神のほうはひどくつまらなそうな顔をしていた。


そのときの彼女は、まるで決めていた予定よていが思い通りにいかなかったことに不機嫌ふきげんになったどこぞの姫のようだ。


「来ると信じてましたよ、ソニック」


リムがソニックへそういうと、彼はくさいのか、顔をけた。


それを見たリンリがにやけながらソニックのかたたたき出す。


「なんだかよくわからないけど。吸血鬼きゅうけつきちゃんはツンデレなんだねぇ、このこのぉ~」


バシバシと大きな音がるほど強さのせいか、ソニックはいたそうにしながら彼女の手をはらった。


だが、リンリはそれでもソニックを叩き続ける。


「魔力をめて叩くなッ! ころす気かッ!」


リンリは聖騎士せいきしである。


だから彼女には、吸血鬼族が苦手にがて聖属性せいぞくせいの魔力がそなわっている。


どうやらリンリは無意識むいしきに聖なるちからでソニックを叩いていたようだ。


聖なる力が弱点じゃくてんであるソニックにとってはいのちかかわる。


「いや~ごめんごめん、ついやっちゃた。次からは気を付けるよ」


テヘッとしたを出してあやまるリンリ。


ソニックは冗談じょうだんでも二度とやるなと怒鳴どなっていた。


リョウタはそんな二人を見てあきれている。


「なあ、たしかソニックってリンリというか、あの聖騎士がかたきじゃなかったっけ?」


「リンリがあやつられていたことを知ったのだろう。うむ。前から度量どりょうひろやつだとは思っていたが、彼女のことをゆるしたのだな」


レビィにたずねると彼女は感心かんしんした様子ようすでコクコクとうなづいていた。


リョウタはそんなレビィにも呆れる。


それはレビィがソニックとはじめて会ったときに、彼が吸血鬼というだけでおそいかかったことがあったからだった。


そしてリョウタはふたたびソニックとリンリのほうを見る。


リンリは、またソニックの肩を叩いていて、謝りながらバシバシ音を鳴らしている。


ソニックはもうあきらめたのか、何も言わずに叩かれていた。


「また変なのがえたなぁ……」


リョウタはそうつぶやくと大きなためいきをつくのだった。


そんな彼にレヴィが声をかける。


「さてリョウタ。いつものように何か良い案があるのだろう? 早く指示しじをくれ」


「お前……なんで俺が考えているって思うんだよ」


き返されたレヴィは、甲冑かっちゅうの上から出もわかるゆたかなむねって言う。


「それは愚問ぐもんだぞ。これまでお前とともにいた私にはわかるのだ。お前はいつだって私の道しるべだった!」


められているはずなのだが。


何故かリョウタはぐったりと肩を落としていた。


神様を相手にたよられてもと思っているのかもしれない。


だが彼は、突然顔を上げて大声を出す。


「ああッもうッ、わかったよッ! やってやる! 女神だろうが火の鳥が相手だろうがやるしかねえッ!」


「うん? 火の鳥なんてどこにいるの?」


「たとえだよ、たとえッ! 気にすんなこのチート聖騎士ッ!」


その叫びに茶々ちゃちゃを入れたリンリに、リョウタはこれでもかとさらに声を張って怒鳴り散らした。


だが、リンリはただあっけらかんとしていて、自分が悪いことをしたと思ってはおらず、テヘッとまた舌を出した。


「かわいい顔してりゃ許されると思ってんじゃねえ! 俺はなぁ……。お前やビクニとちがってチートスキルもなく王宮おうきゅううまいものも食えずに……」


「まあまあリョウタ、その話は後にしてだな。今はすべての元凶げんきょうたおすためにお前の考えを聞かせてくれ」


「そうだ……もとはといえばあの駄女神だめがみがすべての元凶だった……。よし、みんな! 今から俺の言う通りにしてくれ!」


そしてレヴィに止められたリョウタは、まりに溜まった女神へのうらみを思い出し、みなへ自分が考えた作戦をつたえるのだった。

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