第六十六話 襲撃者

ソニックとググをいて、私はさとへと向かう。


今回は完全かんぜんに私の自分勝手じぶんかって行動こうどう……いや、いつものことか。


ソニックは今は朝だから助けてやらないって言っていたけれど。


男のくせに……ホントなさけないやつだ。


「ああッ! か弱い女の子が危険きけん場所ばしょに向かっているっていうのに、何もしないなんて最悪さいあくだよッ!」


私は走りながら大声で愚痴ぐちさけんだ。


それが自分勝手な言いぶんなのは十分わかっている。


だけど……なにかもっと言い方があるでしょ……。


あんな態度たいどとらなくったっていいじゃん……。


そう思うと、わがままだろうがなんだろうが、声に出して言わないとはらむしがおさまらなかった。


「ソニックのバカッ! なんで私を助けないんだよ、ダメ吸血鬼きゅうけつきめッ!」


私が里に辿たどり着くと、すべてふと大木たいぼくで作られたかべ――防護柵ぼうごさく半壊はんかいしていた。


だけど、もんや柵の内側うちがわから火がついているのを見て、どうも外からモンスターがおそってきた形跡けいせきがないことが不思議ふしぎだった。


思えばとスライムのとき――。


一体いったいどうやってこの強固きょうこな柵に、門番もんばんがいるところをえて侵入しんにゅうしてきたのか?


だけど、ここでいくら考えてもこたえはでない。


とりあえず私は、半壊している防護柵の隙間すきまから里の中へと入ると――。


「な、なによこれ……」


そこはまるで、大きな台風たいふうが通りぎた後のようだった。


里の人たちがんでいる木の家のほとんどがくずれてしまっている。


そして、それらをくすようにすべての家がえていて、文字通もじどおり火の海だ。


私は、こんなことをできるのはスライムじゃないと思うと、いそいでリムがいると思われる屋敷やしきのほうへと走った。


すれちがいで里の女性や子供たちをまとめている男性たちが見えたので、どうやらようやく避難ひなん行動が始まったみたい。


ケガ人は多そうだったけれど、まだ誰も死んだりはしていなさそうだったので、内心ないしんでホッとする。


「リムもエンさんもみんなも無事ぶじでいてくれたらいいんだけれど……」


私は、この悲惨ひさん状況じょうきょう恐怖きょうふ誤魔化ごまかそうとして、わざわざ言葉にしてしまっていた。


「……リム。大丈夫だいじょうぶだよね……?」


屋敷が近づくにつれ、男の声――おそらく武道家ぶどうかたちのさけび声が聞こえてきていた。


打撃だげきつうじないスライムが相手ならわかるのだけれど。


日々ひび鍛錬たんれんしている屈強くっきょうな男たちが、あれだけいてやられてしまうなんて、一体いったいどれだけ強いモンスターなんだ。


私が屋敷の前に着くと、突然はげしく火と風がれ、大きな体をした武道家たちが簡単かんたんに飛ばされてしまっていた。


そして、屋敷のまわりにはたおれて動けなくなった武道家たちが、ピクピクと体をふるえさせてうめいている。


「う、うそでしょ……? こ、こんな一瞬いっしゅんでみんなやられちゃうなんて……」


私はそばに倒れていた武道家に声をかけた。


その場にかがんで、そのきずついた体にれると――。


「お、おじょう……な、なぜ……?」


と、言いのこすと、すぐに気をうしなってしまった。


えっ……お嬢……って、もしかして……?


私は立ち上がって前を見てみると――。


「な、なんで……なんでよ……? リムがなんで……」


そこには、自分の父親であるエンさんを足蹴あしげにしているリムが、全身ぜんしんから魔力まりょくはなちながら立っていた。

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