第九話 引きこもりの外出
周りの人々は笑顔で
そして、空にはそんな笑顔の人たちを
ほら、よく見ると野良猫や野良犬も悪させずに人に懐いているし、みんなそれを嫌がらず、餌をやったり、出店の中で寝かせてやっていたりしている。
……そして、そんなふうに感じてしまう自分のことがいやになる。
そんな私を見た野良たちが集まってきて、あっという間に猫や犬に囲まれてしまった。
……どうも私は猫屋敷に住んでいたせいなのか、はたまた動物好きのお
そういえば、元の世界でも気がつくと犬猫以外にも鳥とか、どこから逃げてきたのか仔馬とかが集まってきたときがあった。
そんな私を見た人たちが大声で『まるでブレーメンの音楽隊だ』なんて言っていたっけ。
いっそのことこの異世界で、楽器でも覚えて動物音楽劇団でも組もうかな。
なんて……ふざけたことを考えてしまっていた。
「ごめんね。今はかまってあげれるほど元気がないんだ」
私が野良たちにそう言うと、思いが通じたのか、一斉にまた出店や路地裏、家の屋根へと戻っていった。
「色々すごいな……。ここの野良たち……」
何故
「ビクニ、さすがにライト王も心配してるみたいっすよ」
「大丈夫だよ、ラビィ姉。もう世界は平和になったんだから、心配することなんか何もないよ」
「うちが言ったこと聞いていたっすか? ライト王が心配してるのは、世界のことじゃないっす。異世界から来た引きこもり少女――つまりビクニのことっす」
……というわけで。
私はライト王の心配をなくすために
ライト王には異世界に来てからお世話になりっぱなしだし、まるで本当の家族みたいに
「おお、ビクニちゃん。
「ビクニちゃん、その服似合っているね」
「ビクニお姉ちゃん
城下町を散歩すると聞いたライト王が、お
さすがに私もスエットで外に出るのは嫌だったので、これまたしょうがなくドレスを着て出かけた。
そのせいか、いろんな
そりゃそうだ、こんな派手な服、いやでも目立っちゃう。
まったく、街中をドレスで歩くなんておかしいのに……。
……でも、わざわざ私のためにオーダーメイドで作ってくれたのは
そんなことを思いながら歩いていると、前に人だかりが見えた。
私は何事かな? とちょいと
「やっと
そこでは私と変わらないくらいの少年が、
その
まあ、私には関係ないし、どうでもいい話だ。
さっさとその場から
さっきは私のことをお姫様みたいと言ってくれた
「ねえねえビクニお姉ちゃん。さっき聞き忘れたんだけど、リンリお姉ちゃんはいつ帰ってくるの?」
リンリ……。
そうだよ……世界はもう平和になったのに、リンリとメンヘルはまだ帰って来ていない。
リンリ……なんで帰って来ないんだろう……。
そのとき、私の頭の中にリンリの笑顔が
もし、リンリがこの場にいたら……。
あの吸血鬼の少年を
リンリは周りの状況なんか考えずに、勝手に人助けする娘だったよね……。
私はその少女に「リンリはもうすぐ帰ってくるよ」と言って別れた。
そして、内心で思う。
……私も頑張らなきゃ!
せっかく異世界に来て騎士に選ばれたんだから、世界は救えなかったけれども、男の子一人くらい助けなきゃね。
そう思った私は、顔を両手で叩いて自分に気合を入れた。
そして、人混みをかき分けながら、吸血鬼の少年を押さえ付けている大人たちのところへ向かった。
「あ、あの……すみません……ちょっといいですか……」
思うように声が出ない。
人が大勢いるところも苦手だし、ましてやそこに口を挟むなんて、これまで生きてきてしたことがない。
でも、やらなきゃ。
私は声を
屈強な大人たちは、少し
さすがに
それから住民のみんなは、「じゃあ、後はビクニちゃんに任すよ」と言って、その場を去っていった。
私は、残された少年に何て声をかければいいかわからなかったけど、考えに考えた末に言葉を絞り出す。
「よ、よかったねぇ。な、な、なにか
私は引きつった顔で、
……何こいつ。
せっかく頑張って助けてあげたのに。
その態度はないんじゃないの。
だけど私は、別に
「うるさい! お前なんかに何がわかるんだよ!」
そう言った少年は、いきなり私へ飛びかかって来た。
ああ、やっぱり
「隙あり!」
「あっ! それは!?」
「へへ、こいつは
そして少年は、あの何をしても
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