第93話 偽りの笑みを浮かべて
隣のベッドに居た少年と別れの挨拶を済ませ、秋鷹は病院を後にする。
二週間は入院を余儀なくされたはずなのだが、秋鷹は驚異の回復力を見せ、なんと一週間で退院することに成功した。
医師はそれを、愛の力だと言っていた。
「それでも、まだ安心はできないんだからね? しばらくは、激しい運動は控えること!」
そう言って、隣を歩く千聖が腕を組んできた。
ガラガラと、キャリーケースを引く音が閑静な住宅街に響く。近くからは、児童公園で遊ぶ子供たちの燥ぎ声が聞こえていた。
「へいへい、えっちは控えること。しかと承りました」
秋鷹は投げやりに対応して、モッズコートのポケットに手を入れた。それに千聖が、しょげた態度で返答する。
「えっち、したくないの……?」
「したいよ。でも、激しい運動はしちゃだめなんだろ?」
「それは、そうだけど……優しい運動なら、しても大丈夫だと思う……」
「例えば?」
「あ、アタシが、上になるとか……?」
「ふうん……」
小さく唸り、秋鷹は千聖のホルスタイン騎乗位を頭の中で思い浮かべた。
「あっ……今一瞬、ものすごいドスケベなこと想像したでしょ!」
「まあ少し。千聖にホルスタインコス着せてみるのもいいかもな、って思っただけだよ」
「やっぱりっ……! あの布の面積極狭の売れないグラドルセット! 思い出しただけでムカムカしてくるわ!」
握りこぶしを作った千聖は、ふんす、と鼻息を荒げさせた。
「千聖、勘違いしてはいけない。売れないからと言って、グラドルもプロとしての誇りを捨てたわけではないんだ。皆、売れるために必死に努力してるんだよ」
「誰目線よ、アンタ……」
「だから、千聖も牛さんになって、もぉーもぉーって言いまくろう」
「とりあえず、あーくんが変態バカなすびの特殊性癖持ちだってことがわかったわ。天に召されて地に這いつくばりなさい!」
「せめて月に代わってお仕置きされたい」
そんな会話を住宅街で繰り広げながらも、やがて、千聖の家の玄関まで到着した。
千聖が鍵を取り出し、静かに玄関を開ける。秋鷹は前を行く千聖に付いて行った。
「キャリーケースは玄関に置いちゃって、一先ず着替えにいこっか」
肉を焼く前に乾杯でもしちゃおうというように綽々と千聖が言った。秋鷹は頷きを返し、靴を脱いだ。しかし、靴下で廊下を踏みしめたそのとき、背中にやわらかな感触を感じた。
「……どうした?」
秋鷹は、千聖によって腰回りを抱擁されていた。背中に押し付けられているのは、言わずもがな彼女の胸の膨らみ。
「今日は泊ってくれるよね?」
そう千聖が訊いてきたため、秋鷹はもちろんと答えた。数秒の沈黙の後、嬉しそうな声が後ろから聞こえてくる。
「ありがとう、あーくん。アタシと一緒にいてくれて」
腰に回されていた千聖の腕に、ぎゅっと力が込められた。
「……好き」
「うん」
明かりのない家の廊下に、一筋の光が玄関から差し込んだ。それはまるで、無言の二人を祝福しているようにも見えた。
※ ※ ※ ※
翌日、秋鷹と千聖は二人で一緒に登校した。
久しぶりの学校であるため、通学路を歩くときは僅かながらに緊張した。千聖はそう思っていなかったみたいだが。
「んぅ~! 肌がつやつやぁ」
馬の尻尾みたいな髪を二本揺らし、千聖はふんふんと鼻歌を歌いながら自身の頬を撫でる。昨晩の性行為が、非常にお気に召したらしい。
「ほら、学校ついたよ」
「ほんとだね。見てください、あそこに聳え立つのは、アタシたちが通う花生高等学校であります! 右に体育棟、左に芸術棟。ここに宮本あーくんっ!」
「朝っぱらからテンションたけぇな……」
「あーくんの顔が青虫みたいに真っ青だから、わざとやってるんでしょ? 感謝しなさいよ、すかぽんたん」
「青虫の青は緑だ……」
げんなりと秋鷹は唸り声を上げた。
千聖は秋鷹との関係が学校中に知れ渡ってしまったことから、もはや何もかも吹っ切れたらしい。前は『冷やかされるのが……』とかなんとかもじもじしていたのに。
校門付近や下駄箱では、至る所から好奇の視線が送られてきた。そにに悪感情といったものはなく、あったのは興味と羨望、そして祝福の声。
時折り、揶揄い上手な男子たちが口笛を吹いていた。他にも噂好きの女子たちが黄色い声援を送る。それによって、ぼふっと千聖の顔が真っ赤に染まるのだった。
「……ん?」
そんなこんなで四階までつくと、廊下の奥から猛スピードでこちらにやって来る人影が見えた。
不気味に思った秋鷹は、確認の意図も込めて何度か目を擦る。あれは――尋常じゃない速さで早歩きをしている
「――宮本ぉおおおッ! 大丈夫なのか!?」
「うぇっ、え?」
勢いよく壁に押しやられ、秋鷹は壁ドンされた。
鋭い眼光でこちらを見つめる紅葉の顔が、眼前にまで迫っていた。ただ、身長差があるため、ちょっとだけ紅葉が見上げる形になっていた。
「リハビリはもう済んだのか?」
「するほど大した怪我じゃなかった」
「そうか……」安心したように胸を撫でおろすと、紅葉は優し気に微笑んだ。「なら今度、
「生憎だが、その必要はないよ」
「なぜだ?」
「これでも俺は、毎日筋トレを欠かして無いんだ。……あと、俺の体が、宍粟に対して拒否反応を起こしている」
「フッ、遠慮するな。筋トレでは鍛えられない部分もたくさんあるだろう。私がお前のために特別メニューを考えてやる。まずは走り込みに軽いストレッチ、それから腕立て伏せ1000回を行ったのちに股関節を鍛えるためにスクワット5000回。これだけではまだまだ足りないだろうから、私の右ストレートを10回お腹で受けてもらおう。その上でまだ立てるようなら、連続ストレートを100回みぞおちにキメてやるからな。なんとか耐えるんだぞ」
「お前は俺を殺したいのか……?」
秋鷹が入院中、長文の心配メッセージを送ってきたあのときの紅葉とは別人のように思えた。その返信をしなかった腹いせか何かだろうか。
「あっ、すまない……少し近づきすぎた」
すると、紅葉が一歩後ろに下がって、申し訳なさそうに視線を横に向けた。
「お前たちは、付き合っているんだったな」
さっきとは違った紅葉の静かな態度を受けて、傍観者に徹していた千聖がハッとする。
「いや、うん……改めて言われると、やっぱり照れるなぁ」
「初々しいな。お前を見ていると、中学時代の私を思い出す」
「中学生のときの、宍粟さん……?」
「ああ。とはいっても、私なんかよりずっと、日暮は楽しそうだ」
紅葉はくすっと一笑すると、秋鷹と千聖を交互に見やった。
「……どうせなら、お前たち二人で道場に来ないか? 歓迎するぞ」
「気が向いたらな」と秋鷹が言った。
「それでも構わない」
そう返して、紅葉は腕時計に視線を移す。しかし、それが本当に時間を確認するための行為だったかはわからない。癖なのかもしれなかった。
「……ではな。遅刻はするなよ」
沈黙が訪れる前に紅葉が身を翻す。がやがやと騒がしい廊下で、秋鷹は千聖と一緒に彼女の背中を見送った。
そして、自分たちも教室に向かう。隣り合わせで臆することなく廊下を歩いた。手は繋がっていなかったが、心は繋がっていたように思う。なにせ、教室の扉を開けたその瞬間、秋鷹と千聖は同じような表情で驚きを露にしたのだから――。
「来たっ! 来た来た来たーっ! 秋鷹、お前の席はここだ!」
「……は?」
秋鷹は突如として現れた興奮気味の友人、敦に、廊下側の一番後ろの席へと座らされた。
「ちさちーはここね!」
「えっ、なに……!?」
金髪ウェーブを揺らしながら向かってきた春奈に、千聖は未だ困惑状態。そして秋鷹の隣に用意された椅子へ、強制的に座らされる。そのとき、秋鷹の肩に千聖の肩が軽くぶつかった。
「よし、準備は整ったな」
前の席で敦が言った。その隣の席で、春奈が「にしし」とギャルっぽく笑う。
「なんだよーぅ。付き合ってるなら隠すことないじゃーん」
「そうだぞ。お前らが密かに愛を育んでいたなんて……くぅ、なんだか泣けてくるぜっ……」
「あー……あっつーが泣いてると、あーしまで泣けてきちゃう。しくしく、わんわん。ほんと、成長したよ、ちさちー……」
「目頭があちー、目頭が熱すぎるぜまったくよお。なあ? お前らもそう思うだろ?」
敦が周囲に同調を求めると、集まっていた野次馬が腕を組んでうんうんと頷く。男子は悔し涙を噛み締めていたが、女子はキャーキャーと騒がしかった。しかし、それをぶち壊すかの如く、人混みから割って入ってきたのは狂乱したエリカだった。
「――あきだかぁぁああああああああっ!!」
涙と鼻水でくしゃくしゃに顔を歪め、髪を振り乱しながら秋鷹の机に突っ伏するエリカ。そのまま上半身を机に乗っけた状態で、秋鷹の方に鼻水まみれの顔を向ける。
「あきたかぁ、ボクのせい? ボクのせいだよね? うわぁあ゛ぁああっ……」
「えっと、腹を刺されたことを言ってるのか? それなら、別に悪いのはエリカじゃないよ」
「ボクのせいなのぉ……! ボクがあきたかを関わらせたからぁあ゛ぁあっ。けほっ、けほっ……」
噎せ返ってもなお、エリカは大声で泣き叫ぶ。秋鷹はより一層困り果てた。
「切腹すゆ……切腹すゆぅ……!」
「大丈夫だってエリカ。あーくんは怒ってないから」
「……あー、くん?」
「あ、うん……あーくん。そう呼んでるんだけど、変、かな……?」
「――うわぁああああああああんっ!」
「なんでそこで大泣き!?」
びっくりして身を引くものの、千聖は「ほら、エリカ」とハンカチをエリカの顔に添えた。すると、そのハンカチでエリカが「チーン!」と鼻をかむ。
うっわぁ……。と周囲からドン引きの声が上がった。無論、ハンカチは鼻水でどろどろだった。
「ほらほらエリカ。秋鷹に迷惑かけない。まだ怪我治ったばかりなんだから、揶揄うくらいにしとかないとね」
「うぅ……」
秋鷹の机から引きはがされ、エリカは春奈の膝の上に座らされた。子供か、と秋鷹は心の中でツッコんだ。
とはいえ、エリカを心配させてしまったことを秋鷹も少しだけ反省している。お見舞いも断っていたため、一週間ぶりに顔を合わせることが出来て感情を爆発させてしまったのだろう。それだけ想われているということを、秋鷹は嬉しく思った。
周りの反応もエリカに対して同情的だった。秋鷹が千聖と交際しているのと同じに、エリカの元彼氏が強姦事件の犯人という事実は学校中に知れ渡っている。しかし、その詳細を知っている者は少なく、エリカの気持ちを汲み取れないほどの薄情者も、この教室にはいなかった。
もちろん、この事件に結衣が関わっているというのは、ここでは秋鷹と千聖、そしてエリカの他に誰も知らない。
そこでふと、秋鷹は結衣のことを思い出した。彼女とも、電話はしたが顔を合わせていない。
秋鷹の視線が野次馬の向こう側に移される。しばらく彼女を探していると、自然と目が合った。
濡れた瞳。引き結ばれた唇。そして、祈るように絡められたその両手。結衣は秋鷹と目が合っていることに気づくと、一瞬だけ肩を震わせるも気丈に笑顔を作り、ピースサインを送ってきた。秋鷹も微笑みとピースを返す。
「どしたん秋鷹ー? 写真撮ってほしーの? いいよいいよ」
「おっ、ならおれも」
なにやら勘違いを起こした春奈と敦が、自分の携帯を取り出してこちらにカメラを向けて来た。それに釣られて、周りにいたクラスメイトも携帯を取り出す。
「うわっ、おい……フラッシュ焚くな! ここは記者会見場かっ……! チッ、誰だよ、本格的なカメラ持ってきてるやつ……っ」
――帝だった。
「楽しんでんな……こいつら……」
と、朝のホームルーム前だというのに、異様な盛り上がりを見せる2年A組教室。もしかしたら、彼らは殺人未遂や強姦といった暗い話題から秋鷹たちを遠ざけ、元気づけようとしてくれているのかもしれなかった。
一度は死にかけたのだ。一歩間違えれば、こんなふざけた言動は取れなくなっていただろう。それ故に、秋鷹はこの茶番にどこか温かみを感じていた。
しかし、そう思ったのも束の間、春奈の「あっ……」という声と共に教室内がしんと静まり返る。
秋鷹の背後に視線が集中していた。振り向けば、そこには教室に入ってきたばかりの杏樹がいた。
彼女は秋鷹の顔を見て一瞬だけ表情を変えるが、すぐに何事もなかったかのように自分の席へ向かう。それを皮切りに、教室内が少しだけざわついた。
「……どうしたんだ?」
気になって、秋鷹が敦に声をかけた。
「秋鷹が入院したちょっとあとのことなんだけどよお」敦は秋鷹を引き寄せると、周りに聞こえないような声で言った。「来栖のやつ、突然学校を休み始めたんだ。数日前に。……そんで今日、久しぶりに登校してきたってわけ」
「来栖さんが? 休んでた……?」
「ああ。これは噂なんだが――」
そこで言葉を区切り、敦は改めて秋鷹の目を見る。ごくりと、喉がった。
「あいつ、児童養護施設に入れられたらしい」
予想外の言葉に、秋鷹は声を失った。
※ ※ ※ ※
クラスメイトの質問攻めはとどまるところを知らなかった。
昼休みに入ると、秋鷹と千聖は二人で教室を抜け出した。昼食を取る場所はいつもと変わらない、体育館裏だ。ここでなら邪魔は入らない。
そうして昼食を取り終わった後のことだ。秋鷹たちは教室に戻るため、渡り廊下を経由して校舎に入ろうとしていた。
冬の寒さに身を縮めながら、緑一色の中庭の芝生を視界に収める。そしてその向こうに、ベンチに座る髪の長い女子生徒を捉えた。
「千聖、少しいいか」
「……来栖さんのこと?」
足を止めた秋鷹に、千聖は察したように返答した。
「ああ。色々と話したいことがあるんだ」
「わかった。じゃあ、アタシは先行くね?」
「ついてこなくていいのか?」
「大丈夫。あーくんのこと、ちゃんと信じてるから」
秋鷹は困った顔になった。そこまで信頼されるほど、自分は出来た人間じゃない。
「なら、要件を済ませたら、早めに戻ることにするよ」
「次の授業、遅れちゃダメだよ?」
「だから、早めに戻るって言ってるだろ?」
と秋鷹は千聖のほっぺたをぷにぷにとつついた。千聖がふんっと子供のように鼻を鳴らし、足を弾ませながら去って行く。
中庭には相変わらず人の姿はなく、澄んだ風だけが枯れ木の間をくぐり抜けていた。ガラス戸に囲まれたこの場所は、緑の葉っぱがないと丸裸にされているようで落ち着かなかった。春が恋しい。
「隣、いいかな?」
「……ええ」
返事を待ってから、秋鷹はゆっくりとベンチに座った、ベンチの端と端に座ったような状態のため、傍からは仲が悪そうに見えることだろう。
「今日は弁当じゃないんだな」
杏樹の手元を見て、秋鷹が言った。いつもなら弁当が置かれているはずの膝上には、今は何も置かれていない。代わりに、杏樹は焼きそばパンの袋を綺麗に折りたたんでいた。まるで折り紙でも折るかのように。
「作る暇がなかったの」
「施設に入れられたからか?」
「――――っ」
秋鷹のストレートな物言いに、しかし杏樹は驚くことはしなかった。得心が言ったように、言葉を紡ぐ。
「噂になっているのね」
「ああ、それほど大きな話題にはなっていないけど」
「……事実よ」
「そうか」
秋鷹は杏樹の方には顔を向けず、ずっと前だけを見据えていた。ポケットに手を入れて、日が沈んでもいないのに黄昏たような面持ちでいた。
「ごめん、俺が警察に住所を教えたからだよな」
「関係ないわ。遅かれ早かれ、こうなっていたはずよ」
「でも、俺が巻き込んだ。俺が来栖さんと一緒に帰っていなければ、そんなことにはならなかったはずだ」
「それは違うわ。全部、私が悪いの。住所を誤魔化して、自分を偽って、大人を騙していたんだから」と杏樹は俯きながら言った。「咎められないのが、不思議なくらい」
「咎められなかった。それが答えだよ」
「成績優秀者だったから、注意に収まっただけ。もし私がこの学校の問題児であれば、否応なく退学にさせられていたわ」
「ひねくれた考え方だ」
卑屈になった杏樹の言葉を、秋鷹は呆れ交じりに笑い飛ばした。
「けれど、施設に入れられて、よかったとは思う。これで、あの子たちに迷惑をかけなくて済むから」
「レン君と、リンちゃん?」
「ええ。施設では、意外にも有意義な生活ができるの。私が想像していたよりも遥かに魅力的で、平凡な生活を」
「平凡が、魅力的……?」
「あなたは何をもって幸せを謳うのかしら? 普通の家庭のように、あるいはそれ以上の優遇をされて。食事は三食きちんと出されて、服も靴もピカピカで、お小遣いがもらえる上に多少の自由も利く。朝がだるいなら学校も休めるし、熱が出れば病院にだって行ける。贅沢なんて必要ない。ただ不自由なく暮らせるだけで、私は充分」
杏樹は手に持った焼きそばパンの袋と一緒に、拳を握りしめた。くしゃ、と袋が潰される音がした。
「一番大切にしていた家族とも、離れ離れになることはなかった。今の生活が税金で賄われているということにさえ目を瞑れば、不満も何もない。強いて不満を上げるとするなら、バイトの掛け持ちができなくなったことくらいかしら」
「驚いた。俺よりもリッチな暮らしが出来てるじゃないか」
「ええ、だからあなたが気に病むことはないの。むしろ、私はあなたに感謝してる」
そう言って、杏樹がベンチに座った体勢のままこちらに体を向けた。秋鷹は顔だけを彼女に向ける。
「改めて言うわ」背筋をピンと伸ばして、杏樹は頭を下げた。「この前は、私を助けてくれて、庇ってくれて、ありがとう」
「やめろよ恥ずかしい。それにあれは、俺が原因だって何回言えば……」
「本当に感謝してるの。宮本君は私の、恩人よ」
頭を上げた杏樹は、秋鷹と目を合わすと、ふっと微笑むのだった。そしてありがとうと、またつぶやく。
ただ、そんな悲しそうな顔で言われても、嬉しさはこれっぽっちも湧き上がらなかった。
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