第65話 楽しい夏休みの予定


「え、新しい料理を作ったのか? オレの分は……?」

「「「ごめんなさい……」」」

「そんな……」


 ハワードさんの牧場で作っているモッツァレラチーズを、このお店の新食材として使用する事が決まった。

 ハワードさんは毎日定期的にチーズが売れるし、オリビアさんは新メニューの美味しさに絶対に売れると自信を持っている。

 さっきまで、皆が幸せなはずだったのに……。


 トーマスさんはハルトとユウマのお守をして今日も裏庭で遊んでいたらしく、この試食に間に合わず。

 いま現在、ハルトとユウマにげんきだしてぇー、と慰められている。


「ごめんなさい、トーマスさん……。残しておけばよかったですね……」

「いや、いいんだ……。またメニューになるんだろう? その時に食べるよ」

「申し訳ない、トーマスさん。美味しくてつい……。また明日持ってくるから……」


 ハワードさんも申し訳なさそうに眉を下げている。

 お客様たちも試食のつもりが好評で、結構食べてたからすぐ無くなるのは仕方ないです……。

 トーマスさんも気にしないでくれ、と笑ってる。


「あぁ、そうだ。ハワードに頼みたい事があったんだよ」

「私に? どうしたんだい、急に?」


 頼みたい事と言われて、ハワードさんは首を傾げている。

 僕もオリビアさんも何だろう? と見当がつかない。


「前に仔牛が産まれたと言ってただろう? 乳やりをこの子たちに体験させてやれないかと思ってね」


 最近のトーマスさんは、ハルトとユウマと如何に楽しく過ごせるかに賭けている気がする。


「あぁ、それなら大丈夫だよ。明日以降なら、ハルトくんとユウマくんの牧場用の服も用意できるから。そうだなぁ~、三時課9時の鐘が鳴った後に来てくれたらちょうどいいんじゃないかな?」


 ハワードさんの言葉を聞いた途端、トーマスさんの表情が明るくなった。


「本当か! ありがとう! ハルト、ユウマ、仔牛に会えるよ」

「こうしさん?」

「ハルトくん、ユウマくん。おじさんの牧場に来たら、お馬さんや羊さんにも会えるからね」

「ほんとぅ~? ゆぅくんいきちゃい!」

「ぼくも、おうまさん、みたい、です!」


 ハルトとユウマは、いまからワクワクしているみたい。

 なんだか夏休みみたいでいいなぁ。


「あ、そうだ! それなら、ユイトくんも一緒に連れて行ってあげてほしいの!」

「えっ!?」


 オリビアさんが急にそんな事を言い出した。

 僕、そんなに羨ましそうな顔してたかな……?


「さすがに毎日お店を開けてたら、ユイトくんとこの子たちの過ごす時間がないじゃない? だから、お店の定休日を作ろうかと思ってたのよね~」

「そうだな……。ユイトは頑張ってメニューも考えてくれているし、いい考えだな!」

「そうでしょ~?」


 そんな事を考えてくれていたのか、オリビアさん……。すごく嬉しい……。


「それでね、開店して直ぐにはお店も休めないでしょ? 四日後が休みだと、ちょうどいいんだけど……」

「オレは問題ないが、ハワードはどうだ? 四日後にお邪魔してもいいだろうか?」


 ハワードさんはいつの間にかユウマと手を繋ぎ、ぶらぶらと腕を揺らされ遊ばれている。ユウマはハワードさん好きだからね。また会えてよかったね。


「私の所は何も問題ないよ。四日後でいいかい?」

「あぁ、ありがとう。お願いするよ」

「ありがとう、ハワードさん! よかったわね、ハルトちゃん、ユウマちゃん。ユイトくんと一緒に牧場に遊びに行けるわよ!」

「えー! おにぃちゃん、いっしょ? とっても、うれしいです!」

「ほんちょ? にぃにもいっちょ? ゆぅくんうれちぃ!」


 二人は嬉しいのか、すごく興奮しているみたい。そんなに喜んでもらえると僕も嬉しくなってしまう。

 ちなみにハワードさんは、興奮するユウマに腕をブンブン揺らされても笑ってる。

 すごくいい人だ……。


「ハワードさん、僕もお邪魔するので、よろしくお願いします」

「ハハ! そんなにかしこまらなくても大丈夫だよ。じゃあ四日後だね、待ってるよ」

「はい、ありがとうございます!」


 ちょっと夏休みみたいでいいな、と思ったら僕も参加できる事になって、正直すごく嬉しい! 今から楽しみだな。


「あ、そうだ! ユイトくん、その休みの前日なんだけど」


 ん? 何だろう? ちょっと嫌な予感がする……?



「イドリスたちの予約があるから、一緒に頑張りましょうね!」



 あぁ~~~、忘れてた……! イドリスさんだ……!

 でも楽しみが出来たから問題ないもんね……! 僕、頑張ります……!

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