第6話 押してだめなら推してみろ!

「佐藤くん、お願いです。私と付き合ってください。」

いやいやいや…それはないよ。嘘でしょ?

いや、あの佐藤だよ?あの波賀野さんだよ?

私が言うのもなんだけど、つり合うわけない

よ。

「それ、本気?」

「ええ。もちろん。私はこの学校に、佐藤くんに会うために来たんだから。」

佐藤に会うため?じゃあ、波賀野さんと佐藤は、前にも会ったことがあるってこと?

「返事はまだいいわ。いつまでも待ってるから。」

…。

「ねぇ。佐藤…」

「はぁ!お、お前いたのかよ…」

「別に、いいよ。付き合っても。今なら私より、波賀野さんと付き合った方があんたの地位、上がると思うよ。」

そうだよ。好きでも何でもない私なんかより、可愛くて何でもできる波賀野さんの方が、絶対いいじゃん。

「は?お前ほんと、何言ってんだよ。地位?何じゃそりゃ。」

「あんたが最初に言ったんじゃん。私と付き合えば地位が上がるからって。」

「あー…そういえばそんなことも…。でもそれは!」

「もういいよ。言い訳は。いいじゃん、波賀野さん。私なんかより、よっぽどいいよ。」

「ああ!そうだな!波賀野は、お前なんかよりよっぽど優しいし、よっぽどいい女だ。」

いんだよ。これで。別に私、佐藤が好きだった訳じゃないし、いいんだ。

ー「何か最近、さとね機嫌悪くない?佐藤とも最近一緒にいないし…」

「だよね。喧嘩でもしたのかな?」

はぁ。何で私のことばっか言うのさ。

そんなに噂話が好きなら、佐藤と波賀野さんとの噂でもすればいいのに。

「ねぇ!さっき波賀野さんと佐藤が一緒にいたんだけど!」

ーほら、やっぱり佐藤も、波賀野さんみたいな人がよかったんだ。

「佐藤が、波賀野さんのこと振ってた!」

「はぁ!?」

私は思わず声を上げてしまった。

「さとね…。あ、そうだよ。佐藤にはさとねがいるもんね。やっぱり、さっき言ってたのはさとねの事だよね。」

私の事?何それ?

「ごめん。付き合えない。俺には世話の焼ける面倒くさい彼女がいるから。って。」

…ほんと、何それ。

気がつくと、私は教室を飛び出し、佐藤のもとへと向かっていた。

「佐藤!どうして?」

「…お前も、そうだったじゃねーか。假屋んとき。」

「えっ!知ってたの?」

「あぁ。それに、地位なんてもう、関係ねぇよ。俺がお前捨てたら、どうせお前はまた悲しい顔するんだろ?」

ーほんと、ほんと…何それ。

「告白ですか?」

「ちげーよ。ばーか。」

佐藤は、ぶっきらぼうにそう言った。

「お前こそ、俺がいねーとだめだろ?」

ほんとまた!そうやって!

「ふん!そんなことないもん。あんたなんかいなくたって、私は可愛いし、モテモテだもん!」

「はははっ。やっといつものさとねに戻ったな。」

「…強いて言うなら、あんたがいなくなると、アイスが食べられなくなるから。あとちょっとは、一緒にいてあげてもいいよ。」

「ふっ。何じゃそりゃ。アイスくらい、自分で買えよ。」

「じゃあ今日は、仕方ないから私が奢ってあげる。」

「おっ。まじか?じゃあ、しゃーねぇ。俺もこうゆうときのために、もうちょっとだけ一緒にいてやるか。」

こいつといるのは、アイスのため。だから。

別に好きとかそんなんじゃ、ないから。

だから、こき使うのにちょうどいいし。だから…だからだよ!

ーこれからも一緒にいたい。って。



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可愛いものすべてがさとねとは限らない 駒込ピペット @yonnsenndo

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