第5話 可愛いは、薬であり、デザートでもあり。

「東京から来ました。波賀野未来です。」

彼女は突然やって来た。

「未来ちゃんめっちゃ可愛い~!」

「やばっ。波賀野って、めっちゃタイプだわ。」

彼女は、可愛いかった。私よりも。

「ちょっとむずいけど、この問題分かるやついないか!じゃあ、渡辺。」

はぁ!?分かんないよ。どうしよ…

「先生!私この問題分かります。」 

波賀野さん。

「おっ。波賀野お前!正解だ。」

「え~!すごい!波賀野さんって、勉強もできるんだ!」

「波賀野って、前テニスの大会で優勝したらしいぜ。」

「え~!まさに文武両道だね!完璧じゃん。」

勉強も、運動も、顔も、私が1番だと思ってた。でも、彼女は、紛れもない天才だった。「なあ、さとね。今日どっか行くか?」

「ごめん、佐藤。今日はちょっと用事あるから、1人で帰りたい。」

本当は、用事なんてないけど、早く家帰って勉強がしたかったし、何より、佐藤と会うのが気まずかったから。どうせ、佐藤も私より波賀野さんの方が、可愛いって思ってるんだろうし。

ー2位。全部90点台だし、数学と英語は今までで最高点だったし、どうして。

「え~!すごい!未来ちゃん1位じゃん!転校してきたばっかなのに。」

「お前、大丈夫か?顔色悪ぃぞ。」

…佐藤。ーそう言いながら佐藤は、私のほっぺたにソーダを押しつけた。

「ほら、これでも飲め。頑張るのもいいけど、お前は頑張りすぎなんだよ。」

何で佐藤は、そうやって、私が辛いときそばにいて、私を助けてくれようとするの?

「だって!頑張りすぎって言ったって、頑張んないと勝てないじゃん!私は。」

何だよ。ほんとに、何で。佐藤は優しいのに。何で佐藤にあたってるんだろ。私。

「ごめん…。」

「別に今更何言ってんだ。お前には散々ひどいこと言われてきたし、それが本心じゃないってことも知ってる。お前が人一倍負けず嫌いで、その分影でめちゃくちゃ頑張ってるのも知ってる。」

佐藤は、そうやっていつも、いつも、私を助けてくれる。

本当に私は、こいつが、佐藤が

「んな事もわかんねえから、お前はばかなんだよ。ば~か!」

大っ嫌い。いじわるで、最低で。そのくせ人が困ってるときには、必ず笑顔をくれて。

最初からそうだった。

いつも、最後にはいやみをつけて、でもそれも、私を笑顔にするためで。ほんとに、

「あんたこそ、どんだけ私のこと好きなんだよ!ば~か!」

波賀野未来。負けないよ、私は。今はまだあんたに勝てないかもしれないけど、でも、私は絶対負けないから!なぜなら、私は一人じゃないから。佐藤がいるから。

どれだけ辛くても、うまくいかなくても、佐藤がいれば、最高の笑顔でいられるから。

「なんか、波賀野さんも可愛いけど、最近さとねめっちゃ可愛くなったと思わない?」

「分かる!何か変わったよね!うちらを見下してるような感じもなくなったし、笑顔とか、めっちゃ可愛いしね。でもこれも、

ー佐藤と付き合ってからだよね。」


ーあっ。佐藤だ。

「佐…」

あれ?隣にいるのは、…波賀野さん?

「佐藤くん、お願いです。私と付き合ってください。」




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