第15話 マナ・マウントホークの打算的ダンジョン探索
父親であるユーリスが『狼王の平原』解放を行い、母ユーリカが去ってから数日。
彼女はついにダンジョン探索を解禁する。
狙うは『地獄の入口』でパーティは、マナをリーダーに春音と秋音姉妹の3人組。
8歳児をリーダーとする一見無謀なパーティは、周囲の不安とは裏腹に堅実な冒険をしていく。
その戦闘は春音が前に出て敵の動きを抑え、後方からマナと秋音が弓矢で狙撃し、必要に応じて魔術を使用すると言う節約重視の物で戦う。
しかもそれを護衛姉妹に徹底させて、どんな雑魚相手でも春音1人に任せるような真似をしない。
効率の悪そうな戦闘で実際1戦辺りの戦闘時間は長いのだが、役割を徹底することで精神的な消耗を出来る限り抑えるそれは、パーティに高い継戦能力を与えた。
ゲーム慣れしているマナは、目に見えるステータスより精神疲労のような目に見えない要素こそダンジョン攻略に重要だと考えたわけだが、それが消耗率を抑える要因となっていた。
ダンジョンで継戦能力が高いと言うことは、帰りの分の体力を温存しやすいと言うことであり、同時に短い休息で再チャレンジが出来ると言うことでもある。
頻繁に通うダンジョンは自分の庭のように最適なルートや敵の出現ポイントが分かるようになっていく。
もちろん調子に乗って能力以上に潜れば危険だが、マナにはそうするだけの理由がない。
この世界の多くの冒険者がダンジョンに生活の糧を求めるのに対して、マナがダンジョンに求めるのは冒険そのもの。
スリルを求める若者がジェットコースターやお化け屋敷を好きなのと大して変わらず、危険を犯す必要性がないのだ。
そんなマナにとってダンジョン攻略は、ゲームでハイスコアを取る感覚の延長線、マナ自身も無自覚だが、どちらかと言えば両親に反対されるダンジョン探索に挑むこと自体が彼女の本心とも言える。
そんな彼女達がダンジョンで成果を挙げられるのはひとえに能力値に依るところが大きい。
それぞれが10層のフロアボスを単独撃破出来るくらいの戦闘力を持っているのだから、本来なら10~14層をメインにすれば良いところを今年は10層までと定めている。
あまり深く潜れば、同じダンジョンに潜る『フォックステイル』が危険を感じて、両親に報告するかもしれないと言う危惧があるマナは、良い子であることをアピールする。
学園には冬季休暇があり、その間は帰省することになると言うし、そこでダンジョン探索の成果をみせつけて、より深い層への挑戦を容認させる作戦をたてていた。
なし崩し的にダンジョンへの挑戦権利を認めさせる作戦。
これなら10層までの探索は絶対止めれない。
自分の『責任』でその『責任』が持てる範囲の行動をしているのにそれを止めれば、ユーリスは自分の発言を否定することになる。
むしろ、
「姫様の安全のために優秀な人材を派遣して来ることでしょうな」
と言うのが、マナからダンジョン探索をしたいと言う相談を受けた賢寿の弁だった。
若い頃は『魔狐の森』を飛び出して人の町に住んだこともあるほど、やんちゃだった不良老人は、若者の冒険心をそっと後押しした。
なお、マナ達が持ち帰るアイテムは賢寿の店で独占的に売られて、そのマージンがマナ達に入るのは、今回の作戦と無関係であると言うことになっている。
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