第11話 ダンジョン探索

 レンター軍がラーセンエトル砦まで進軍していると言う情報が伝わってから数日。

 マナは冒険者パーティの『フォックステイル』、春音秋音姉妹を引き連れて、ダンジョン探索に来ていた。

 学園では常に人垣を連れて移動状態で、最近は学園都市内でも同じような状況が続くので一週間くらいダンジョンに籠ることにしたのだ。

 対象ダンジョンは『緑の楽園』。

 魔物が弱く、採取物の多い楽園系ダンジョンである。

 とは言え、10層を越えれば強敵が出てくるので、それなりのストレス解消になるだろうと考えたわけだが。


「ファイヤーボール」


 ブモーっと突撃してくる猪型魔物を焼き尽くす。

 高い突進力で中堅冒険者でも不意をうたれれば死の可能性がある危険な魔物は断末魔ごと焼き尽くされる。


「つまらない!」


 挙げ句に手応えのない相手に地団駄を踏むマナ。


「まあまあ」

「…雑魚ばかりだししょうがない」


 姉妹が宥めに回り、


「いや、あれの突進って俺らでも直撃したら骨が逝くから…。

 ウチのお嬢も十分強者の領域に足を踏み入れてるよな…」

「まあ、主様のご息女だし。

 …お、魔石と牙が出た!

 マナ様! ドロップ品ですよ!」


 狩牙と裁牙が死骸のあった場所を漁りながら、苦笑いを浮かべる。


「ブドウの群生を見付けました。

 今日はこれを収穫して帰りましょう」

「中々美味しいブドウですよ!」

「お嬢様もどうぞ!」


 賢印と春風、春雨姉妹が連れ立って戻ってきて、1房のブドウを差し出すが、


「お嬢様を差し置いて、味見?

 良いご身分ね?」


 春音が嫌みを言うと、


「あら! 毒見よ?

 ダンジョン産の採取物がいきなり問題なく食べれるとは限らないでしょ?」

「全くよ! これだから脳筋は!」


 それに返す春風姉妹。

 元々、近習の地位に選ばれた春音達への嫉妬心を持っている上に、マナのダンジョン探索にまで付いてきたことでテリトリーを侵されたようなモヤモヤを抱えていたのだ。


「脳筋はあなた達でしょ!」

「…5人も居て魔術師1名だけ」


 対する春音姉妹も負けていない。

 2人で十分な探索に付いてきたお邪魔虫へと舌戦を仕掛ける。


「…良いわよ!

 いい加減決着を付けましょうか!」

「そうね。

 あなた達姉妹とは決着を付ける必要があると思っていたの」

「ちょっと待てや!

 姉貴達も春音姉妹も下手な争いは…」


 ヒットアップする女性陣に対して、裁牙が止めに入る。


「…そうね」

「…確かに」


 最年少に止められて、ムスッとしながら矛を納める姉妹達だったが、


「春音達と春風達でチームを組んでよりたくさんのアイテムを回収してきた方が勝ち」

「はい?」


 想定外のところから勝負の提案が出る。

 他ならない主君筋であるマナの提案だった。

 それに疑問符を投げ掛ける裁牙だったが、


「この手の不満は溜めとくと後で爆発するの!

 冒険者らしい勝負で決着着けた方がいいと思うんだよね」

「なるほど、さすがは姫君」


 マナの提案に一理を感じた賢印が褒め称えるが、


「姫君はやめて欲しいけど、ローラッドがやっていたの!

 気にいらないライバルとドロップ品バトルで仲良くなる回があったってだけだし」


 と謙遜する。

 むしろ、良くある漫画の演出が現実になったことにご満悦になるマナだった。

 しかし、その結果は漫画のようなドラマティックに終わらない可能性が高いものだった。

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