第6話 ハーミットクラブ
教師達が恥を晒した実習から数日。
第2学園の中央校舎にあるハーミットクラブの本部ではマナをどうやって入会させるかで連日の話し合いが行われていた。
彼女が公開実習で見せつけた実力は明らかに大国の宮廷魔術師クラス以上。
そんなマナを引き込みたいと考える組織が出るのは当たり前で、彼女の周囲は毎日のようにの勧誘合戦が行われているのだ。
その最有力がミネット王女に率いられた令嬢達の集まり。
ミネット王女がトップなので当然ファーラシア貴族のそれも女性陣で構成されている。
そこに彼女が属せば、マナが持つ魔術の知識や技術はファーラシアに独占されてしまう。
それを怖れて彼女を排除しようとする組織も現れかねない。
…最有力が仮想敵国のアガーム王国だが、他の国も油断は出来ないだろう。
何せ、マナの身分は平民階級なのだ。
多少強引な手段に出ても誤魔化しがきく。
実際の戦力として考えれば不可能だ。
春音、秋音姉妹の突破には数十人からなる精鋭がいるだろうし、マナ自身も現時点では勇者より上の戦闘力があるが、学生の彼らにはわからない話。
故に技術の共有と彼女の安全の2重の意味でハーミットクラブへの入会を勧めたいが、立ちはだかるのはファーラシア王女でありそれも難しい。
「いっそ、ミネット王女ごと入会を勧めてはいかがですか?」
「昔、1度断られているらしいが?」
「当時とは状況が違います。
あの頃はロランド王子とレンター王子が王位を争っており、ミネット王女がハーミットクラブに入会すれば、レンター王子への後押しとなった。
それがファーラシア内乱の切っ掛けになったかもと危惧がありましたが、今は既に内乱が始まっている」
「それもそうだが…」
「実際ユーリス・マウントホーク殿は援軍を求めるレンター王子の護衛ですよ?
ハーミットクラブへの入会を勧める好機です」
熱弁を振るう者に懐疑的な者もやや感化される。
ハーミットクラブは学園都市に置ける学生の互助組織にすぎないが、卒業後も多少なりとも付き合いが残る。
それは卒業生と在校生の間でも同じであり、ハーミットクラブ入会は、ファーラシア内乱終結への手助けになるだろう。
残念ながら大貴族の当主は少ない。
…大貴族の跡取りで学園に入学する者が少ないから。
だが、各国の重鎮や小貴族にはかなりのコネを持つのがこの組織だ。
「…そうだな。
入会を条件にして、先輩達へ手紙を書くと伝えよう」
「ええ。特にトランタウ教国のエリンク司祭様を紹介すると言うのは良いんじゃないかしら?」
「良いな。それでミネット王女の交渉役だが…」
「クチダーケ様にお願いします」
「「「「賛成」」」」
数の暴力により、クチダーケの受難が決まったが、ミネットやマナはアッサリと入会した。
教師の暴走に対する防波堤の必要性はミネットの中にもあったのだ。
なお、ユーリス達はエリンク司祭より遥か上の教皇達と縁を繋いだので交渉材料にならなかったと追記する。
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