第3話 草民 司馬懿

「草民司馬懿が、尚書令に拝謁いたします」と男は荀彧にも挨拶するとずっと土下座状態で動かないので、

「あなたが司馬懿 仲達殿ですか?頭をお上げくださいそれではお話ができません苦笑」というがすぐさま

「いえそれでは無礼に当たります」

と拒否する司馬懿

「私は、外様ですし荀彧殿も無礼な態度を取らない限りは問題ありません、おあげ下さい、命令と取っていただいてもかまいません」

「八雲殿の申す通りだ、司馬懿頭をあげよ」と荀彧の推しの一言で司馬懿は頭を上げた

「初めまして司馬懿殿、私は右将軍の八雲と申します、今日はあなたとお話がしたくてここまできました。」

「私ですか?」

「はい、あなたの兄君や弟君は城でも会えますがあなたはそうは行かない」

「私など一介の草民でしかありません」

「そうでもないでしょう、あなたは機転を生かし都尉殿の命を救っているし、身も心も立場も救い主簿殿の計略も見事に叩き潰した、少なくとも只者ではない」

というと、荀彧は少し意外そうな顔でこちらを見て、都尉は警戒をあらわにするような態度を見せ始めた。

しかし、司馬懿は表情を変えずにただ目の鋭さを深めただけであった。

「荀彧様や若様のおかげであります」

「あなたが体を張らなければ、郭嘉殿が目をかけていたとはいえ荀彧殿や曹丕殿は手を差し伸べなかった、少なくともそこはあなたの功績だ」

というと司馬懿は、「ありがとうございます」といい続いて何か言おうとした時

荀彧が突然「八雲殿なぜ郭嘉殿をご存知なので?」と少々困惑が過ぎた表情で問いかけて来たので、

「丞相との旅の最中にお伺いしました」というと少し納得がいかない表情ではあったが荀彧は

「そうでしたか、丞相にしては珍しい」というと再びお茶を啜り始めた。

「さて司馬懿殿今日来たのは、あなたに私の屋敷での私的な先生になっていただきたかったのでこちらまでお願いに参りました」

「先生ですか?それは荀彧様や徐庶殿がなさるのでは?」

「荀彧殿は丞相の側近であり、帝のお世話がありますから常に居られるわけでもないし、徐庶殿も仕事があるしかし司馬懿殿はまだお時間がお有りなはずだからお伺いに参った次第です、どうか私の先生になってほしい」と頭を下げた。

すると困惑した司馬懿は「将軍は試合をなさると我が父より聞きおよんでいます、その後に返事させていただくことは叶いませんでしょうか?」

司馬懿は妥協案を提示して来たので

「それでかまいませんよろしくお願いいたします」というと司馬懿は

「かしこまりました」と平伏した。

「都尉殿は、このお話は問題ありませんでしょうか?」

「私はかまいません、ただ丞相の御許可を取られた方がよろしいかと」

「無論そのつもりです、今日はあらかじめ大丈夫かどうか確認のためにお伺いさせていただきましただけですので」

「それでしたら異論はございません、生意気な倅ですがどうぞよろしくお願いいたします」

「こちらこそ、都尉殿のおかげでうまく運びました長くお邪魔いたしましたし本日はこれで」というと都尉は

「司馬孚と司馬朗にはお会いせなんでよろしいでしょうか?」

「お二人には、機を見て私からお声がけさせていただきますのでご安心ください」というと都尉は安心したのか、「わかりました」とだけいい荀彧と私を先導するかのように立ったので荀彧殿とともに門に歩き始める。

「では司馬都尉本日はこれにて」

「都尉殿今日は助かりましたではまた」

と2人で挨拶すると

「もったいないお言葉、気をつけてお帰りください」と司馬都尉がいうと、馬車が動き始めた。


馬車に乗ってしばらくすると荀彧が、「なぜあのようなお願いを司馬懿にしたのですか?」

「単純です、司馬懿を丞相にお仕えさせるきっかけを作りたかっただけです」

「それも丞相の発案ですか?」

「いえ、丞相のお話を聞いてそれなら私の先生にすれば、丞相も気兼ねなく引き抜けますし、変な抵抗を司馬懿殿にさせる心配もないし丞相との信頼関係構築のためそして面倒を見てくださっているお礼として今回司馬懿殿とお会いした次第です」

「そうですか、割と司馬家には長くいましたが、午後からの予定はどうしますかな?」

「昼食を交えながら、予定より要約する形で内政等について学ばせていただけますか?」というと荀彧は笑顔で

「わかりました」とだけ答え、しばらく外を見始めた。


屋敷に戻ると、荀彧と私は昼食を食べ始め

食べながらではあるが、細かな社会情勢・内政についてについて教えてもらい学んだ。


夕刻

「今日はご指導いただきありがとうございました」

「なかなか長くなってしまいましたが、八雲殿の物覚えの良さはなかなかですな、私が死んだ後も安心です」と皮肉混じりの冗談をいいながら

馬車で帰っていった。


丞相府

「本日は八雲殿の願いで司馬都尉の息子司馬懿との面会を仲介してまいりました」

「司馬懿?奉孝が言っておったやつか?」

「はい丞相」

「何のために会いにいきおった?」

「八雲殿の私的な先生として司馬懿を迎え後々は丞相の側近にするためとか、丞相へのお礼も兼ねているとおっしゃっていました」

「そうか‥、なかなか面白いことを考えよるな」

「はい」

「まあ良い、明日あやつが丞相府に来た時にでも聞いてみるとしよう」

「わかりました」と荀彧が返事をすると

「はっはっは」と胡散臭い高笑いをかましながら曹操はお酒を口にしたのだった。


後書き

司馬懿との対談そして司馬懿を家庭教師にするという八雲の願い

なかなか?となったかもしれませんが、これは実は後々の大きな伏線の一つとなっていて、意外と驚くかもしれません。ヒントとしては神の医者と呼ばれた華佗と大きく結びついたものとなっているのでお楽しみに、また今後の展開ですがまだしばらくは都を中心とした活動が少なくとも続く予定です。

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