第4話 お荷物
彼女を紐でグルグルと縛り付ける。
彼女は抵抗するも、怪我をしていて動きが悪い。
勿論今まで人間を縛った事はないが、色んな形、大きさの武器を縛って運ぶのはお手の物。
僕は彼女を武器の様に縛り上げた。
「いやああ、こんな所で! 変態!」
こんな所でって……どこなら良いんだよと突っ込んでる余裕は無い。
彼女をさらにバックパックの上に縛り付ける。
「な、なに? なに?」
グルグル巻きにされ空を見上げる彼女、僕は縛った彼女ごと、バックパックを背負った。
「うわ、やっぱり重いな……ベルトが切れそう……」
彼女と荷物の重さにギシギシとバックパックが軋む。
「だ、誰が重いのよ! ってかなに? これ? 私! 荷物?」
そうだよ、お荷物だよ……と言いたいけど、僕はその言葉を寸前で堪えそこから走り出した。
結局僕は、リスクを負ってまで彼女を救った。
でも、ここで彼女を見捨てたら……僕は僕を追放したパーティーの奴ら以下だと思ったから……。
最低限の食料と荷物は置いて行ってくれた元仲間……。
最悪のパーティーだったけど……人間だけは止めて無かった。
「ちょっと、もっとゆっくり、揺れる、ゆーーーれーーーーるーーーー」
一度餌を与えると匂いを辿り追いかけてくるゲジゲジ。
相当の距離、奴らの巣から離れなければならない。
僕はリスク覚悟で走り始める。
何故走る事がリスクになるかと言うと、僕の魔法、重力魔法……と言っても0重力にする程僕の魔法は強力ではない。
荷物は通常の3割程度の重さとして背負っている。
そして魔法により重さの軽減は出来るが、それは重さであって、荷物自体の質量は変わっていない。
難しい話なのだが、要するに走ってしまうと急には止まれない、方向転換も簡単には出来ないという事になる。
そこで僕は手を使う、森を疾走しるには、両手が必要になる。
止まる時、走る方向を変える時は木を利用している。
止まる時は木を掴み力を逃がす。
方向転換の時は木を持ち、遠心力を使って方向を変えたりする。
しかもそんな事をして激しく荷物が動けば衝撃がバックパックと僕の背中を襲う事になる。
簡単に言うと、大きな荷物を背負って早く動けばそれだけ色々なリスクが発生するのだ。
つまり、もしバックパックが破けたら、僕の身体にダメージが加わり動けなくなってしまったら、それは死を意味する。
でも、今はこの場を早々に後にしなければならない。
僕はお金と一緒に肌身離さずに持っていたマジックポーションを一口飲んだ。
普段以上の負担、魔法の力が切れてもそれで一貫の終わる。
全てのリスクと金髪の美少女を背負い、日が傾きかける頃まで疾走した僕は、安全地帯で一度止まって休憩をする。
「大丈夫?」
バックパックを降ろして彼女を確認すと色白の顔がすっかり青ざめていた。
「うえ……うええ」
「あああ、ま、待って! 待って!」
そう言って口を押えて呻き出す金髪美少女を見て、僕は慌ててロープを外すと彼女は……すぐにその場に崩れ落ちそして……。
「う、うええぇぇぇぇ」
僕の目の前に這いつくばって嘔吐してしまった。
「あ、ご、ごめん……」
仕方なかったとはいえ、こんなお嬢様にそんな目にあわせてしまった事に僕は深く……謝罪した。
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