Who is the ’Chosen One’? 『狂乱天国』
1026. 事実上の決勝戦
【白熱の関東予選、いよいよクライマックス。全国への切符を掴むのは? 本命・町田南に意外な落とし穴も。山嵜旋風は決戦の地、名古屋へ届くのか】
『各地で熱戦が繰り広げられている、全国フットサル高校選手権ミックスディビジョンの予選大会。
サッカー界、フットサル界の逸材たちが男女入り乱れで全国の舞台を目指す、前例の無い戦いに世間の注目度は増す一方だ。
今回は大会屈指の注目株が顔を揃える関東ブロックに注目。週末の準決勝・決勝に向け是非チェックしていただきたい。
関東ブロックは準々決勝までを消化。決勝へ進んだ二校と、三位決定戦に勝利した一校、計三校が一先ず出場権を得る。
敗れた四位は先日開催要項が発表された、二日間にわたって開催されるトーナメント方式の全国プレーオフへ回る形だ。
とは言え全国大会への疲労度を考慮すれば、早々に出場を決めておきたいところだろう。ベスト4の顔ぶれと準決勝の組み合わせは以下の通り。
・川崎英稜(神奈川)×市原臨海高校(千葉)
・町田南高校(東京)×山嵜高校(神奈川)
どこも予選から圧倒的な実力を発揮し、ここまで勝ち上がって来た好チームだ。各対戦ごとに展望していく。
『川崎英稜(神奈川)×市原臨海高校(千葉)』
似たような経歴を持つ両者の対戦だ。
川崎英稜は女子フットサル部、市原臨海は女子サッカー部を母体としており、男性選手の登録は前者が二名、後者は僅か一名。粘り強い守備からのカウンターを持ち味としているのも共通項と言える。
勝負を分けるのは両校のエースか。川崎英稜は、栗宮胡桃を実姉に持つ栗宮弘毅(三年男子)がここまで8得点と、スターの姉に劣らぬ活躍。
準々決勝でも埼玉美園高校(埼玉)を終了間際の2ゴールで撃破。全国まで進めば、姉から主役の座を奪ったとて不思議ではない。
他にはテクニシャン土居(三年男子)と白石弥々(一年女子)が5得点と続く。だが、土居は開幕前から負傷を抱えている様子。
白石も波が激しい印象だ。緻密な守備組織を持つ相手に、エースへの依存をどこまで減らせるか。
市原臨海は更に得点源への依存度が高い。通称カーチャこと、エカチェリーナ・アリエフ(二年女子)が予選グループから活躍。
既に9ゴールと二桁の大台に乗りそうな一方、次点が各選手の1点ずつとバランスが悪い。
唯一の男性選手、内山(二年男子)はゴレイロ。チームを縁の下から支えているが、一試合通してのプレーが不可能。
いかにカーチャを自由にプレーさせ、早い時間帯にゴールを重ねられるかがカギとなるだろう。
戦力的にはほぼ五分五分か。ここまで準主役に甘んじている各選手たちの奮闘が勝敗を分ける可能性も高い。激戦は必至だ。
両校共に選手層の薄さは気になるところで、翌日に控える決勝まで持つかどうかもやや不安な要素。勝てば全国が待っている。どちらが決めるか。
『町田南高校(東京)×山嵜高校(神奈川)』
先の二校には申し訳ないが、事実上の決勝戦と見て良い。勝利したチームがそのまま、関東王者の称号を得る可能性は極めて高いだろう。
そう言い切れるほど、ここまでの戦い振りは充実している。とは言え、経験値の高さと個の強烈さでは町田南が上回るか。
なんと言ってもジュリアーノ・カトウ(三年男子)の大爆発だ。5試合で100近いゴールを重ねた超強力攻撃陣の中心で、うち半数は彼の得点。
男女関わらず、一瞬で相手を抜き去る高速ドリブルは、もはや高校生レベルではない。
カトウの影に隠れてはいるが、女子フットサル代表の砂川(三年女子)、来栖(三年女子)も好調をキープ。
男子代表の鳥居塚(三年男子)に支えられた圧巻のコンビネーションは誰が相手でも脅威となる。
未だ無失点をキープする守備陣の強固さも見逃せない。兵藤(三年男子)がセカンドセットを巧みに纏め上げれば、絶対的守護神の横村(二年女子)が偶のピンチを悉く阻止。隙が無い。
気になるのは今大会最大の注目株、栗宮胡桃(三年女子)がここまで僅か2ゴールと沈黙気味なこと。尤も、出場機会そのものをセーブしている節はあり、名将・相模監督の思惑が気になる。
普段は自ら赴くインタビューも、今大会はすべてシャットアウト。
負傷やメンタル面の問題を抱えているとすれば見逃せない懸念材料であり、絶対王者唯一の死角となり得るかもしれない。
ただ、栗宮抜きでも一試合平均二桁ゴールを優に超える彼らが、準決勝に限り沈黙するとは考えにくいか。不動の大本命であることに変わりは無い。
この絶対王者と戦うのが、関東ブロックで旋風を巻き起こしている山嵜高校だ。ヤマサキと読む。これを機に是非覚えていただきたい。
本記事で触れるまでも無いだろう。和製ロベルト・バッジョ、廣瀬陽翔(三年男子)が突然の復活。サッカー界隈は彼の話題で持ち切りである。
準々決勝では、サッカーU-18代表の松永ヂエゴ、藤村俊介(西ヶ丘)を攻守に渡り圧倒。黄金の左脚が錆び付いていないことを証明した。
セレゾン時代は見られなかった高い守備意識も好印象。進路はまだ未定とのことで、大会後の去就も注目が集まる。筆者の個人的願望で言えば、同郷の内海功治(セレゾン大阪)らとの再演が是非見てみたいところだが……。
話を戻し今大会の山嵜。彼頼みのチームかと言えば、とんでもない。女性陣もポテンシャルの塊だ。9番を背負うエースの長瀬愛莉(三年女子)は類稀なストライカーとしての資質を兼ね備える正統派ピヴォ。
ここぞという場面でゴールを奪う勝負強さが特に光る。5試合で10得点。カーチャを凌ぐ勢いで、女子の得点王まっしぐらだ。
7番のアラ、金澤(三年女子)はアーティスティックなプレーで度々会場を沸かせ、準々決勝の西ヶ丘(東京)戦では見事に流れを引き寄せた。
同じくドリブラーである栗宮三姉弟の末っ子、未来(一年女子)と、横浜ブランコス現監督トラショーラス氏の愛娘、シルヴィア(二年女子)もジョーカーとして活躍。名前負けしない存在感がある。
そんな彼女らの自由奔放なプレーを整理するのが、パスセンスに優れる倉畑(三年女子)とリベロタイプの長瀬真琴(一年女子)。
誰が出ても質の高いパスワークとトランジションを披露しており、町田南と言えど簡単な相手ではないだろう。
不安要素は守備力。予選グループ最終節、東雲学園戦と準々決勝で計3失点と少ないが、試合を重ねるに連れ綻びも見えてきた印象だ。
ゴレイロの楠美(三年女子)は十分な実力者と見て良いが、如何せん守備の時間帯が少なく、真価が問われていない状況。シュートの雨嵐を前に、小柄な守護神がどこまで持ち堪えられるか。
準決勝は町田南が長時間ボールを握ると予想される。ここまで経験の浅い『耐える守備』が決壊すれば、早々に試合が終わる可能性もあるだろう。
だが、こんな状況だからこそ期待してしまうのが廣瀬陽翔の魅力であり、今大会の山嵜高校と言えるかもしれない。
名古屋で行われる全国大会で更なる旋風を巻き起こしたとて、なんら不思議ではないだろう。
新たなキングの誕生か。
女王が強固な守備網を打ち破るのか。
ジャイアントキリングか。
絶対王者が威厳を見せつけるのか。
全国の頂へ、一秒も目を離せない激戦が期待される。準決勝は今週土曜、決勝と三位決定戦は翌日日曜の開催。会場は横浜元町アリーナ』
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