300. ノートルダムさんのセンパイ観察日記
おはようございます!!!!
市川ノノです!!!!
今日も元気にやぽぽぽーーい!!!!
…………いや、そんなテンション高くないです。はい。朝は普通に低血圧なんで。これくらい上げてかないと、ノノはノノになれないのです。まぁそんなことはどうでもいいですね。
つうわけで今日も見た目元気に登校しているわけなんですけれども。電車を降りてスクールバスに並んでいると、朝から面白いものを発見してしまいました。
「今日は寒いねえ。手袋して来ちゃった」
「またデケえの付けてんな」
「そういうデザインなのっ。デリカシー無いなぁ」
「えぇ。そう言われても」
陽翔センパイが珍しく並んでいたので声を掛けようとしたら、お隣に比奈センパイが! 確か、琴音センパイとお家がすぐ近くだと言っていましたが、今日はいらっしゃらないのでしょうか。
あぁでも、寝起きめちゃくちゃ悪いって噂ですもんねえ……置いてきちゃったのでしょうか。
「陽翔くんも付けてみる?」
「ええって、そんな寒くねえし」
「むうー。鈍いんだから、もうっ」
「ちょっ……おま、えぇ」
「わたしは一個だけで十分だもんねっ」
なんとっ!! 手袋を片方センパイに渡して、手を繋いでいますっ!! アツい、アツすぎる! いやもう通り越して暑苦しいっっ!! あの空間だけ焚火やってる勢いなんですけど!!
朝っぱらから比奈センパイがフルスロットルなのです……元々陽翔センパイと一緒に居る回数は多い方な気がしますが、いよいよ好意を微塵も隠しませんねえ。ノノが言えた口じゃないんですけど。
それでいて、陽翔センパイも満更でもなさそうなのが……やはり同じクラスの同級生となると、お二人にしか分かり得ない信頼のようなものがあるのでしょうか?
羨ましい……ノノもセンパイと……っ!!
* * * *
さてさて、お二人の仲に負けず劣らずの暑苦しいスクールバスを耐え切って、学校へとやって来ました。
この時間に人が集まるの分かってるのに、なんで本数増えないんでしょうか。ノノは不服ですっ。てゆーか、降りた瞬間寒いっ! もう冬かこんちくしょうっ!
「あれえ? 琴音ちゃん、先に来てたの?」
「おはようございます。ご一緒だったんですね」
「珍しいこともあるんやな」
「わっ、私が早起きしてなにが悪いんですかっ」
とかなんとか言っていたら、下駄箱のところで琴音センパイと合流した模様です。ノノも挨拶しちゃおっかなー。
「おっす倉畑ー。ちょっといいかー?」
「あ、峯岸先生だ。はーい、行きまーす」
「朝から働いているとは、珍しい光景ですね」
「どうせロクでもねえ用だろ」
「先生相手に酷いなぁ……またあとでねっ」
峯岸先生に呼ばれた比奈センパイが立ち去り、お二人が残されます。これはこれで、ちょっと声を掛けにくい雰囲気です。どうしましょう。
いや、だって琴音センパイ、陽翔センパイと二人きりになると、急に顔がふにゃふにゃし始めて面白いんですもん。あんなにだらしない顔出来るんだってノノびっくりしたんですから。
「……お急ぎですか?」
「いや、別に」
「なら、おしるこを買いに行きましょう。すぐそこですから」
「ホンマ好きよな。毎朝買っとるやん」
「美味しいじゃないですか。それに、今朝は冷えますし。なにかご不満でも?」
「はいはい、お望み通りに」
なんて言いながら、陽翔センパイにぴったり身体をくっつけています。ノノには分かります。あれは一緒に居たい口実を作っているだけだと!
ドゲザねこじゃないですけど、本当に猫みたいですね琴音センパイ……飼い主にペタペタくっ付いて甘えているみたいです。どちらかというと、犬かも分かりませんね。
で、やっぱり満更でもない陽翔センパイ。ホント妬いちゃいます。なにニヤニヤしてるんですか、隠せてませんよ!
どーせおっぱい当たって嬉しいとか考えてるんでしょッ! クッ、ノノだって琴音センパイほどじゃなくともそれなりに……!!
* * * *
そんでもってお昼休みです。
朝からセンパイたちのイチャイチャを見せつけられ中々に不機嫌だったノノは、己の煩悩を掻き消すが如く授業に打ち込むのでありました。珍しく先生からも授業態度を褒められます。普通に嬉しい。
ここ最近のノノは、クラスでもちゃんと人気者をやっています。文化祭前までの人望の無さが嘘のようです。今日も女の子たちにお昼ご飯に誘われちゃいました。
けど、それはお断りします。一応ノノはクラスのなかじゃ「陽翔センパイと付き合ってる」ってことになってるので、それをなんとなく伝えると気を遣ってくれました。マジ感謝。
特に用事が無ければ、センパイは今日も中庭のベンチでご飯を食べているはずです。今度こそセンパイとお喋りを……!
「うへっ……まっず……」
「なにアンタ、梅干し食べられないの?」
「むりっ……めっちゃつら……」
「ちょ、そんな泣くこと無いじゃないの……!」
ああああああしまったああああ!!!!
お昼は愛莉センパイの独壇場だった!!
当たり前のように狭いベンチで肩を並べてご飯を食べています。傍から見るとカップルそのものです。これを愛莉センパイに言うと顔真っ赤にして全力否定して来るんですから笑えます。
梅干しが苦手な陽翔センパイは、柄でもなく小粒の涙を垂らしながら項垂れています。ハンカチで涙を掬う愛莉センパイは、この場に限ればどっちかというとお母さんっぽかったり。
「ごめん……次からは入れないようにするから」
「いや、ええて……俺が言わへんのが悪いし……」
「……なーんて、嘘。次も入れるから。ざまあ」
「はっ!? おまっ、ふざけんなっ!」
「作って貰ってる分際で我が儘言わないのっ!」
うわわっ……めっちゃナチュラルにあーんしてますよあの人……センパイはセンパイでボロボロですけど、あれ気付いてないのかなあ。だとしたら重罪ですねえ。
フットサル部では一歩引いた立ち位置にいることが多い愛莉センパイですが、ああやって二人きりになると一気に距離を詰めて来ます。普段のストレスを発散しているのでしょうか。
何だかんだで陽翔センパイと一番距離が近いのは愛莉センパイだと思います。フットサル部の初期メンバーだということですし、やはり目には見えない絆みたいなものがあるんですかねえ。
陽翔センパイも気が抜け過ぎです。いくら胃袋掴まれてるからって、デレデレ甘えちゃって。
それこそあんな風に泣いちゃうなんて、琴音センパイとかの前では絶対にしないですもんね。
はぁー……ノノも料理、勉強しようかな……。
* * * *
放課後です。
我先に着替えを終え、足早に談話スペースへと向かいます。陽翔センパイは今日も五限をサボったらしいので、きっともうソファーに座ってみんなを待っているはず。
そこへノノが颯爽と現れて、一刀両断!
え、なにをって?
そりゃあもう、今日の出来事について色々と、です!
見境なく部員の皆さんとイチャイチャして、説教してやるんですから! さーて、陽翔センパイはぁーっと……。
「ねーねー見してよーねーねー!」
「うっせえな……いい加減離れろよ」
「やだーっ! 写真見してー!」
「嫌だっつってんだろ!」
(オゥマイガァァァァーーーーッッ!!)
しまった! してやられました!
サボり癖は瑞希センパイもだった!!
座り心地はおろか寝心地まで良い談話スペースのソファーを勝手に動かして広い寝床を作り、ごろんと寝っ転がる陽翔センパイ。
その上に瑞希センパイが思いっきり乗り掛かって、何やら文句を垂れています。
いやっ、なにやってんすかお二人とも!!
休日に家でくつろぐカップルか!!
甘すぎるッ! 反吐が出るわ!!
「いいじゃんさぁー、ゆっきーには謝るからー」
「また雑なあだ名を……勘弁してえや」
「なにさなにさっ! あたしには見せられないほどエロいんかっ! このロリコンめっ! 控えめなボディーアタックを喰らえっ!!」
「なんちゅう高度な自虐……ぐへぇっ」
「やーい、あたしの勝ちぃー!」
馬乗りになって陽翔センパイの腰回りをゆっさゆっさと揺らしています……男女逆転寝○ックとでも言いましょうか。
パッと見かなり不健全な光景ですが、瑞希センパイが子どもっぽ過ぎてギリギリ許されている感も。
どうやら陽翔センパイのスマホの写真を見ようと躍起になっているようです。こないだ部活体験会に来たマコちんの同級生の有希ちゃんですね。で、センパイのお知り合いだとか。
ノノの知らないところにライバルいっぱいです。なんなんすかあの人は本当に。ぼっちとか嘘も良いところですねマジで。
「にゅっふふー。何が当たってるか知りたい?」
「…………いや、分からん。壁?」
「おっぱいに決まってんだろーがッ! 殺すぞッ!」
「揺~ら~す~な~~」
なんだこのバカップル……これで付き合ってないとか、意味分かんないですよぉ……。
うぅ……ノノももうちょっとハッちゃければあれくらい。でもっ、あの距離感は流石に……むむむむむむ……っ!
* * * *
結局、今日の練習はビミョーな感じでした。
色々と引き摺り過ぎです。
でも、ノノだけが悪いわけじゃないはずです。センパイは色んな人にデレデレしてるし、センパイたちは隙を見つけては甘えているし、ノノの割って入る余地が無いんですよ!
別に疎外感ってほどでもないですけど……やっぱり、ノノには色々と足りないものが多いようです。これからもこんな姿を見せつけられると思うと、気が滅入っちゃいますよぉ……。
「ノノ。そろそろ帰るぞ」
「……ふぇ。あ、センパイ。皆さんは?」
「先に帰らせた。ノノと用があるからって」
「……なにかお約束してましたっけ?」
すっ呆けるも何も、ノノは暫くセンパイと二人きりになる時間も無ければ、これといってデートの取り決めもしていなかった筈……いや、ノノが誘わない限りデートなんてありえませんけど。
「別になんも。なら、今から約束でもええし」
「……は、はぁ……急にどうしたんですか?」
「今日一日、俺に張り付いてたろ。用事でもあんの?」
げぇェェェ!!
めちゃくちゃ気付かれてた!?
「んだよ。なんもねえのか? なら帰っぞ」
「あっ、いや、ありますっ! センパイに用事ありますっ! スパイク履き潰しちゃいそうなんで、新しいの買いに行こうと思って!」
「……他の奴らも誘えばええやんけ」
「センパイとっ! 二人きりが良いんですっ!」
ちょっと面食らったように居心地悪そうなセンパイ。とか言っておいて、ノノも困惑しています。
スパイクが壊れそうなのは本当のことですけど、全然、センパイだけ誘うつもりなんて無かったんです。でも、咄嗟に出て来た言い訳が、これだったんです。
……あながち嘘ってわけでもないんですけど。
二人きりになれるなら。
理由なんて、何でも良かったり。
「……先に連絡してくれよ。予定立てにくいやろ」
「はっ、はい! じゃあ、ノノのお家の近くにお店があるんで、そっちに行きましょうっ! あとウェアも新しいの見に行きたいですっ!」
「はいはいっ……おい、くっ付き過ぎやろ」
「えへへっ♪ セーンパイっ♪」
これくらい、許してくださいっ!
今日ずーっと我慢してたんですから、ねっ!
これからも、我慢する気は無いですけどっ!!
以上、本日のノノでしたっ!!
デート行ってきます! やぽぽぽーい!!!!
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