4話 アンティークなトランクケースの中の部屋


「人は一霊四魂と言って、四つの魂を持っています。

気に入った魄を見つけたら、その一つをその魄に授けるんです。

するとその魄は忠実な式神になります」


碧依くんは、そう説明しが、シルスは、


「えっ自分の魂をあげて、わたしは大丈夫なの?」

「えーと、姫さまも大丈夫みたいだし、大丈夫じゃないですか」

「ええええええええ、死ぬかも知れないじゃないですか!」


すると碧依くんのポケットにいるはなもりが、

「式神文書に書かれた内容によると、大丈夫みたいですよ」

とフォローを入れたが、なぜかはなもりの目が迷っていた。

「ん?」と、シルスが視線を送ると、


「あの~まあ~その~なんでしょう」

「あの~まあ~その~なんでしょう?」

「えーとですね、式神文書は、古語が多すぎて、正確には解読は出来てないんです」

「・・・・」

「あっ違うんです!違うんです!

あたしは、任務を優先して、大丈夫って言ってるんじゃなくてですね。

メカニックとしての立場より、シルスちゃんの側の人間ですよ。

あたしは、シルスちゃんの側に居たいです!

ごめんなさい、任務の事を考えちゃってた」


そう言ってくれるはなもりの言葉は嬉しかった。


碧依くんのポケットから顔を出しているはなもりを、接続式神の手で撫でたくなったが、まだ慣れてないし、優しく撫でられる自信がなかったので、止めた。


それにしても、魂って何だろう?

今のわたしは、魂に近い状態らしいし。


考えても仕方ないか。


それからひたすら馬で、石畳を進んだ。

夜が来ると、碧依くんはテントを張って、シルスは接続式神から出て、馬車の中の組み立て式の小さな家に泊まることになった。


人と同じ大きさの碧依くんと違って、シルスとはなもりは妖精サイズなので、トランクケースサイズの家でも、快適な生活が出来るらしい。


馬車には、お洒落なアンティークのトランクケースが置いてあった。

見た目は完全に、ちょっと大きめの旅行用のトランクケースだが、妖精サイズのドアがついていた。


「ささ入りましょう♪あたしたちの家に♪」

ウキウキな声ではなもりが言った。


ドアを開けると、そこには豪華ホテルのような、部屋があった。

「うひゃー」

はなもりとシルスは、同時に声を上げた。

「姫さまようのお部屋だよ。きっと」

そうそんな雰囲気だ。


お風呂もあって、ベットもあって、小さいけどキッチンもあった。

思惟の旅館の一番豪華な部屋より豪華な作りだった。


「ひゃん♪」

はなもりとシルスは、同時にはしゃいだ。


シルスは、ふと質素な碧依くんのテントを思いだし、

「碧依くんはテント暮らしなのに、なんか悪いよね」

「碧依くんは男の子だし、最強式神だし、いいんじゃない」

「そうだね」

「ねえねえ、早速、一緒にお風呂に入らない?」

「えっそれは・・・」

「あたしたちは生死を伴にする仲間なのに、ちょっとグスンだよ」

「えーと・・・・うん、まあいいけど・・・」

「ラッキ♪言って見るもんだね♪」


湯船に二人で浸かるとはなもりは、

「さっきはホントにごめん、こんな世界に来て不安なはずのシルスちゃんの事を一番に考えて上げれてなくて、あたし心入れ替えるよ」

「うん、ありがと」



つづく




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