6話 式神起動スイッチ

翡翠の式神碧依と、その胸ポケットに入っているはなもりは、冒険モードでウキウキしていた。


シルスは、そんな2人の雰囲気に、


「あのお楽しみのところ、申し訳ないんですが・・・・」

「どうしましたかっか?」

「行くのは良いのですが、この式神、動かないんです」


コックピット内でシルスは言った。


翡翠の式神碧依が、美少女な式神を見た。

仮面の奥の目は、完全に恋する少年の目だ。


シルスには関係のない事だけれども、美少女な式神を操縦する者として、見逃せない目だ。


碧依が、にやりと微笑んだかどうかは、解らない。

でもそんな雰囲気だ。


「えーマジですか?あれじゃないですか?」


はなもりは、ポケットの中から翡翠の仮面を見上げた。


「あれって?」

「スイッチっすよ」

「式神にスイッチなんてあるんですか~」

「うちのボスの貴人型は、ボスが乗った後、会璃(あいり)が、いつもスイッチを押してるぜ」


シルスは、スイッチらしいのを探したが、スイッチらしきものは沢山あり過ぎて、どれを押して良いのか・・・


「どれを押せばいいのか、解らないんですが・・・」


「閣下さあ、コックピット内じゃなくてさ、外側にあるんだぜ。俺も正確な位置は解らないけど、会璃は貴人型のお尻らへんを、押してたな」


「碧依さま、いやらしい!美少女な式神を触りたいだけでしょう!

動けない貴人型に、嫌らしい事したら、姫様に言いつけるからね!」


「ホントだって!ボスに聞いてみれば・・・」


「姫様の睡眠は邪魔しないの!」


「じゃあ会璃に・・・」


碧依は、心の奥で会璃と繋がった。


シルスとはなもりは、翡翠の仮面を見つめた。

深い青色の翡翠の仮面は、神秘的で美しかった。


「解った・・・尾てい骨の先にあるらしい」


翡翠の仮面の奥にあるであろう目が、シルスの乗る式神を見つめた。


「尾てい骨の先ですか?ほぼお尻じゃないですか」


シルスの身体ではないけど、めっちゃ恥ずかしい。


「閣下、押してみますか?」


碧依は言った。


でも、スイッチが入らない事には、動けないし・・・


シルスは、美少女な式神の意思を確認しようと、心を静かにして、美少女な式神の意思を探った。


「スイッチ入れても良い?」


シルスは、コックピットを覆う白磁の様な壁を、じっと見つめた。


それは気のせいかも知れないが、恥じらいを感じた。

その恥じらいは、シルスの心にある恥じらいと同じ種類の恥じらいだった。


それは、音としての言葉ではなかったし、シルスが勝手にイメージしたものだったのかも知れない。

だとしてもそれは、「でも」に近い意味だと感じた。


「でも?」


シルスが聞き返しても、返答はなかった。

シルスは操縦桿を握った。そして


「押してください」


「了解しました!閣下の命令は絶対!それでは押します」


「ええええ碧依さま、かなりいやらしい・・・」


碧依は、シルスの乗る美少女な式神の背後に回った。


「わたしじゃないけど、なんかドキドキします。変な意味で・・・」

「かっか!安心してください!はなもりが厳重に監視してますから!」

「ありがと」


シルスはコックピット内で式神スイッチが入るのを、じっと待った。


コックピット内でも、美少女な式神の背後の碧依の気配を感じた。


「これかな?」


碧依の声がして、シルスの身体に、目に見えないミストの様な物が降り注いだ。

ミストは魂だけの思惟に染み込んだ。そして、目に見えないミストを通じて、シルスは美少女な式神と繋がった。


心地の良い一体感に、魂は躍った。


「かっか~動けます?」

「うん、大丈夫のような気がします」


シルスは、目を閉じて、操縦桿を握った。

式神が見ているであろう視覚が、まるで自分の物の様に見えた。


「武器庫に行く」


シルスが意識を送ると、美少女な式神は、最初の足は一歩を踏み込んだ。


「おおおお!」


はなもりと碧依の歓声が聞こえた。


初めての共同作業によって、美少女な式神の意思が、シルスの意識に流れ込み、シルスの意思も美少女な式神の意識に流れ込んでいった。


美少女な式神の意思の清らかさに、シルスは涙が出そうになった。



つづく


いつも読んで頂き、ありがとうございまする\(^▽^)/



シルス・・・12人の思惟の1人。思惟の中では地味な方。 

はなもり・・思惟専用式神のメカニック。


美少女な式神・シルスの接続式神


碧依・・・意都の式神

意都・・・妖精のお姫様。王位継承順位500位だった。貧乏貴族出身。




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