16話 命の火が灯る瞬間。
「この黄金の甲冑を脱いだらどうなるの?」
シルスは、メカニックに聞いた。
「えーと、それは、確か軍事機密なので、私の口からはお伝え出来なさそうです」
「そう・・・私、部外者だもんね・・」
シルスは、哀しげに式神を見上げてみた。
さらに、
「私、少将なのに・・・所詮、お飾りなのね。地上の人だし・・」
その言葉に、メカニックの少女は、「はっ」となって、
格納庫の備え付けの古めかしい電話で、どこかに問い合わせた。
長いやり取りの後、
「はなもり!あたしは眠いの!
思惟ちゃんが見たいって言うんだから、
見せてあげれ良いでしょう!」
眠りを妨げられた姫様の声が、電話から漏れてきた。
「姫様!・・・・了解しました。」
はなもりと呼ばれた少女は電話をきると、
一気に打ち解けた表情になった。
「あはっ♪思惟少将閣下♪全然ОKです♪」
「ありがと」
シルスは、少しだけ少将風な口調で答えた。
「それでは、鎧を外します」
はなもりが、オカリナの様な物を操作すると、
格納庫内にモーター音が鳴り響き、産業用ロボットアームが動き出した。
「絶望的に人手不足なので、鎧を外すのは、全自動なんです。」
はなもりは自慢げに言った。
人間が来ている鎧と違い、幾つものボルトやナットで固定されていた。
一番外側の装甲は黄金で、まさにインゴットの金塊だった。
「うっわー」シルスは心の奥で叫んだ。
欲しい!経営難の旅館の為にも欲しい!
外側の黄金の甲冑が脱がされると、その奥には、鋼の様な装甲が現れ、刀のような光を反射していた。
産業用ロボットアームが、幾つかのボルトとナットを外し、足の具足を外した。
そこには、人の肌があった。
多分、女子の足だ。思惟の足より綺麗な足だ(滝汗)
この足から想像するに、めっちゃ美少女に違いない。
ちょっとドキドキした。
産業用ロボットアームによって、鋼の様な装甲が脱がされていく。
「全裸じゃん!」
「全裸ですね」
めっちゃ美少女が、全裸で立っていた。美少女の式神。
人ではないんだろうけど、人との区別はまず着かなかった。
「この式神、生きてるの?」
「死んでる訳では、ありませんが、生きてる訳でもありません。
ただ少将閣下が入ると、命の火が灯ります。入ってみます?」
「私が命の火・・・」
自分が命の火だと想像した事はない。
でも命が燃える為・・・生命として活動するには、火が必要なのだろう。
甲冑を着ていると、巨大な機械に乗っている様な感じがしたが、人と区別がつかない姿の式神の中に入るのは、ちょっと抵抗があった。
「でも・・・もう後には引けないだろうし・・・」
デッキリフトで、美少女の胸の前に来ると、
「胸に触れると、少将閣下を自然と受け入れてくれるはずです」
はなもりに言われて、シルスは美少女の式神の胸に触れた。
手が触れると、引き込まれるように、式神の内部に誘われた。
全身が柔らかい感触に包まれた。
「しあわせかも・・・」
シルスは呟いた。
つづく
シルス・・・12人の思惟の1人。思惟の中では地味な方。
はなもり・・思惟専用式神のメカニック。
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