12話 神将級燎、最終奥義
「工兵隊総員退去完了!」
コックピット内に、姫様のお気に入りの少年の声が響いた。
姫様は、やはりにやけた。
にやけたまま姫様は、
「見てて思惟ちゃん、あたしの戦いを!」
神将級式神の燎は、刀を威勢よく振り回した。
しかし、式神・燎は神将級を名乗っているにも関わらず、身体は怖気づいていた。
じりじりと後ずさりする神将級燎に、
「実は、こいつ弱いんじゃない?」と、疑念を持ち始めた敵兵の雰囲気が伝わった。
対神将級の斧を持った敵兵ニヤリとした後、突っ込んできた。
「ひぃぃぃぃぃ」
姫様は可愛い悲鳴を上げながらも、神将級式神の燎は、刀で防いだ・・・様に見えたが、コックピットが衝撃で揺れた。
コックピットの画面が映らなくなった。
もろに頭部に直撃を受けたっぽい。
多分、メインカメラが破壊されたのだろう。
「このー!この子はお前らと違って、繊細な子なんじゃー」
目に怒りを込めた姫様が深く呼吸をした後、
「お前ら絶対許さない・・神将級燎、最終奥義・・・発動」
「最終奥義?」
「そう最終奥義!他力本願!」
姫様が叫ぶと、コックピット内は、眩い閃光と大きな爆発音に満たされた。
機体に何かがぶつかり、衝撃が走った。
コックピット内の温泉のお湯が、嵐のように波打った。
怯えるシルスは、姫様にしがみついた。
「大丈夫。あの対神将級兵器以外で、この燎は傷つかない」
シルスが、しがみつく姫様の身体は、潤いに満ちていた。
優しい少女だと言う事は隠しきれないらしい。
数秒、爆発は続いた。
爆音が静まると神将級燎は、仰向けに空を眺めていた。
周りには、爆風にやられた敵兵の屍が転がっていた。
「工兵隊が緻密に仕掛けた浮遊機雷と地雷が一斉に爆発したの、あたしたちは、浮遊機雷が確実な場所に、静かに移動するまでの時間稼ぎをしただけよ」
姫様は説明した。
上空に、爆発寸前に退避していた有翼武者姿のむつみが、天使のように舞い降りてくるのが見えた。
「他力本願・・・ですか」
シルスの呟きに、姫様は、
「神輿に担がれた者はね、神輿の上で楽しげに騒いでいればいいの。
それ以上の事は、あたしには出来ないし、する気もない」
つづく
いつも読んで頂き、ありがとございまする(≧∀≦)♪
シルス・・・12人の思惟の1人。思惟の中では地味な方。
意都・・・妖精のお姫様。王位継承順位500位だった。
神将級式神・・・姫様の旗下の式神。
黄金の甲冑を着た燎(かがりび)姫様の乗る大将機。
青い甲冑を着た式神・・・むつみさん。
黒い甲冑を着た式神・・・危険な式神。
銀色の甲冑を着た式神・・・防御系の式神。
姫様のお気に入りの少年・・・姫様専属の通信士。
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