10話 威風堂々

結界の外側は、突然深い霧に覆われ初めた。

霧の中、敵の兵員輸送用車両の影があちこちに見えた。


カーフェリーサイズの大きさの緑の箱は、琥珀色の結界に、のめり込んでいた。


「これは・・・」


姫様は、1秒未満思考に耽った後、

「むつみ以外は結界内に戻れ!敵が結界内に侵入するかも!」

姫様がそう叫ぶと、黒と銀の有翼武者は上昇した。


「司令部!工兵隊爆破班すぐに出して!

場所は結界外北東微北(ほくとうびほく)

むつみは、虫けらどもを粉砕して、工兵隊の援護を!」


むつみは、腰に差していたガトリング砲をぶっ離した。

むつみが、緑の箱の周辺の敵兵を掃討すると、小さな妖精の工兵隊が、どこからともなく現れた。


神将級燎(かがりび)も、腰に差していた拳銃を抜いた。


むつみの弾幕を抜けた19世紀の兵隊ぽい敵兵が、神将級燎に、銃撃をくわえてきた。


「そんな小銃の弾丸が、神将級の装甲を打ちぬけるとでも?」


姫様は、得意げに言った。

神将級燎は、リボルバーの拳銃を突進してくる敵兵に発砲した。


コックピットの360度画面には、敵兵の姿が映っていた。

それはまるでゲームセンターのリアル版だった。


ただ・・・神将級燎は、発砲を続けるのだが、敵兵は怯(ひる)まず突進してきた。


・・・と言うより、弾丸が当たった気配がない。


「姫様?」


姫様は、焦りまくっていた。


「なかなか当たらない・・訓練では10000発1中だったのに・・・」

「1中って!」

「当たらないのは、きっと霧のせい・・・」


シルスの思考回路に、初めて神将級燎(かがりび)に、出会った日の事が映し出された。


・・・この姫様の戦闘力・・・最弱だったような・・・


リボルバーの5発の弾丸が切れたみたい。

なんで弱いのに、リボルバーを?

リボルバーって、こだわっている系の凄い人様じゃないの?


黄金の甲冑が、小銃の弾丸は跳ね返してはいたが、その振動はコックピット内に響いていた。


なのに姫様は、素早くしっとりクッキーを口に運んだ。


「この状況で!?」


神将級燎は、リボルバーの再装填より、刀を抜くことを選んだ。


「雑魚どもが・・・」


深い霧の中、刀が光った。

名刀のみが見せる美しく危険な輝きだ。


シルスは思った。多分、この神将級燎、超絶弱い!


しかし名刀の威光は凄かった。

幸運な事に、刀を抜くと敵兵たちは若干怯んだ。


そして、その式神が、黄金に輝く甲冑を纏った大将機だと気付いたらしい。


「虫けらども、死にたい奴から前に出ろ!」


姫様の透き通った声が深い霧の中に響いた。


その透き通った美しい声は、神将級燎が、ただの式神とは訳が違うと思わせるには、

十分な崇高さを備えていた。


神将級燎の神々しいその一喝に、敵兵は確実に恐れ慄いていた。


・・・こっちの戦闘力は最弱なのだが・・・



つづく 




いつも読んで頂き、ありがとございまする(≧∀≦)♪



シルス・・・12人の思惟の1人。思惟の中では地味な方。  

意都・・・妖精のお姫様。王位継承順位500位だった。



神将級式神・・・姫様の旗下の式神。

黄金の甲冑を着た燎(かがりび)姫様の乗る大将機。


青い甲冑を着た式神・・・むつみさん。

黒い甲冑を着た式神・・・危険な式神。

銀色の甲冑を着た式神・・・防御系の式神。

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