8話 数十秒だけのAカップ同盟

姫様の寝室には、姫様専用のエレベーターが着いていた。


その前には、明らかに、明るくて可愛い容姿で選ばれたであろう、

ピンクの制服を着たエレベーターガールが立っていた。


「このエレベーターはカタパルトデッキに向かいます」

と丁寧に説明した。


この緊迫した状況で・・・


姫様に手を引かれて、シルスはそのエレベータに乗った。


それは、多分1人用の小さなエレベーターなのにも関わらず、

エレベータガールも一緒に乗ってきやがった・・・


ドアの向こう側では、直立不動の親衛隊が、「ご武運を」とキリリと敬礼をしていた。


その横で姫様の女官たちが、娘を見送る母親のように、心配そうに姫様に視線を送っていた。


姫様は彼女たちに向かって、軽く敬礼して見せた。


彼女たちの表情は見えなかったが、姫様と彼女たちの強い絆を感じた。


狭い個室で、シルスの前に姫様、後ろにはエレベーターガールで、

ほぼ抱き合う姿勢のまま、エレベーターはどこかに向かって動き出した。



・・・姫様のAカップの胸と、

エレベーターガールのAカップの胸、

そして、わたしのAカップの胸、

世界の平和を守るため結成されたAカップ同盟・・・



「本日はご利用ありがとうございます」


エレベーターガールの上品な言葉遣いと対照的に、エレベーターは猛スピードで、動いていた。


その間も姫様は目をつぶって眠っていた。

そうとう眠いのだろう。


数十秒後、

「お待たせ致しました、到着でございます」

エレベーターのドアが開くと、

「姫様到着、神将級燎(かがりび)発射準備完了!」

と拡声器の声が耳に入った。


背後でエレベーターガールが

「ご武運をお祈りしております」

と声を掛けた。


その声は、エレベーターガールの、明るく可愛い容姿とは対照的に、悲壮感を感じさせた。


・・・また組もうね。Aカップ同盟・・・


エレベーターのドアのすぐ前には、見たことある黄金の甲冑の式神がいた。

主の帰りを待っているかのように、その胸部コックピットは、開けられていた。


考える間のなく、姫様に掴まれたまま、シルスはコックピットに飛び乗った。


コックピット内には、ちょうど良い湯加減のお湯が、ちゃぷちゃぷ言ってた。


そうだ!お風呂好きの姫様の為に、コックピットが温泉仕様になっていたんだった。


コックピットのドアが閉まると、

「神将級燎(かがりび)、射出します!」

と、神将級燎(かがりび)は、地上に向かって突き進んだ。

ふっとドンネルを抜けると、夜空が見えた。


「あっ街だ。」


見覚えのある街の風景があった。

上空から見るのは初めてだ。


神将級燎(かがりび)が羽を広げると、軽くふっと浮いた感じがした。


街全体を覆う琥珀色の結界が見えた。


結界の向こう側には、巨大な何かが浮遊しているのが見えた。

姫様は、良い湯加減なのか幸せそうな表情をしていた。


この状況でその表情・・・・


兄の嫁候補に入れて置こう。



つづく 


いつも読んで頂き、ありがとございまする(≧∀≦)♪


シルス・・・12人の思惟の1人。思惟の中では地味な方。  

意都・・・妖精のお姫様。王位継承順位500位だった。

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