7話 妖精の姫様の元に
妖精だからって、みんなが可愛いわけではないらしい。
シルスは、その事実にちょっとショックを受けた。
城内には、武骨な軍人気質の妖精や、官僚らしき妖精、技術者らしい妖精など、色んな妖精たちがいた。
シルスは、姫様の親衛隊のイケメン顔の少女に連れられて、姫様の寝所へ向かった。
城内に、それほど華やかさはなかった。
宮殿と言うより要塞なのだろう。
姫様の寝所の前には、親衛隊の少女が2人、警備をしていた。
2人のイケメン少女は、シルスに仰々しく敬礼をして、大きな扉を開けた。
奥には、お姫様らしい天蓋付きのベットがあった。
想像していたお姫様のベットにしては質素な印象を受けたが、造りこまれた上質なベットであることは、素人にも解った。
そして、ベットの上には、ものすごーく可愛い妖精のお姫様が眠っていた。
その姿は、メルヘン全快だった。
その可愛さに心臓は自然と高鳴った。
イケメン少女は、熟睡している姫様の耳元で何かを告げた。
姫様は、眠そうに目を開けて、シルスをチラッと見た。
その目は「まだ眠いの・・・寝かせて」と語っていた。
そして姫様の瞼は再び閉じられようとした、
その瞬間、城内に警報が鳴り響いた。
「姫様!」
イケメン少女は声を掛けた。
「う~ん、さっきやっつけたから・・・」
姫様が、寝言のように呟いた。
親衛隊とは違って優しげな顔立ちのお付の女官たちが、ベットに駆け寄り、姫様を抱きかかえた。
そして、ブラとパンツ姿の姫様に、青金石(せいきんせき)色の服を着せた。
「姫様、おはようございます。敵襲でございます。」
女官は、姫様の耳元で囁いた。
「おはようございます」と「敵襲でございます」
組み合わせとしては最悪だ。
青金石(せいきんせき)色の、姫様の体のラインがくっきり解る服を着終わると、おにぎりの載ったお皿が運ばれてきた。
女官が、一口サイズのおにぎりを、姫様の口に押し込んだ。
姫様は、成すがまま一口サイズのおにぎりを食べ終えると、
「・・・・ってっ、これエビマヨじゃない!」
「申し訳ありません。まだエビの補給が届かないもので」
「もう!やる気半減↓」
「怒った顔も可愛いよ」と、兄の狼図ならすぐに言いそうな表情だ。
その表情のまま姫様は、シルスを見つめた。
姫様の目から睡魔が去り、諸々の思考が巡っていた。
「思惟、来てくれたんだ」
姫様の笑顔が零れた。そして、
「思惟も来て」
とシルスの手を握った。
やばい・・・かなり・・・やばい、危険な事が始まる予感しかしない。
美しい妖精の姫様の握る手は、思っていた以上に強く、シルスに、それを振りほどくの勇気はなかった。
つづく
いつも読んで頂き、ありがとございまする(≧∀≦)♪
シルス・・・12人の思惟の1人。思惟の中では地味な方。
意都・・・妖精のお姫様。王位継承順位500位だった。
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