12話 戦うお姫さまの好きな感触。

黄金の甲冑を纏った使鬼・燎(かがりび)は、地下基地のカタパルトを滑走した。

全身に、Gがかかり、恐怖と闘争心が入り混じった感情が、意都の心を満たした。


地下基地のトンネルを抜けると、夜空は、清々しく晴れ渡っていた。


ちょうど街の中心地点に到達すると、使鬼・燎(かがりび)は、羽を広げ羽ばたかせた。羽ばたいた時に感じる軽くとふっと浮く感触が、意都の体に伝わってきた。


好きな感触。


街を薄い琥珀色の幕が覆った。簡易結界だ。


東の夜空が、目映(まばゆ)く光った。

結界を突破するために放たれた敵の爆雷。


時間を重力波で僅かにゆがめて作られた山脈上に張られた結界。

その結界を、巡航ミサイルが突破するのに要する時間は5分。


残りの神将級使鬼3体がこの空域にいるはずだが、視認できるのは1体のみ。


それぞれの使鬼の五感が、身体に伝わってきた。

鬼の凶暴性を秘めた感覚が、心の闇を刺激した。


嫌いじゃない感覚。


意都はこの空域全体をイメージし、それぞれに作戦イメージを送った。

神将級使鬼に、言葉を使わず自分の意思が伝わる感覚は心地良い。

おしゃべり100時間分の快感と言っても良い。


結界を突破し音速に加速した巡航ミサイルに、各所の機関砲から琥珀色の弾丸が発射され、夜空に閃光と爆音が響いた。


そして、待ち構えていて巨大な蒼龍の放つ青い炎が、夜の街を青く照らした。


迷彩の為、飛翔する蒼龍そのものの姿は見えない。

それがいっそう街を、怪しく照らした。


飛翔する巨大な蒼龍の、その弾力のある尾が、ミサイルにぶち当たり、ミサイルを山脈の山肌に叩き付けた。


大きな衝撃音と震動に、目を覚ました街の各所で明かりが灯った。


「巡航ミサイル相手に、気合いれすぎ・・・」


意都は苦笑した。




つづく

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