6話 地下世界へのドア
エレベーターは下降を止めた様だが、ドアが開く気配がない。
正確な時間は解らないけど、1時間は止まってそう。
チーム・南の島のシルスは、深刻な表情で、エレベーターの開かないドアを見つめた。
しかし、それを遮るように、シルスに抱きつく、裸族ではない思惟のどっちかが、甘い声で、
「ねえ、私の事好き?」
と聞いてきた。
訳の分からない状態で、エレベーターの密室に、閉じ込められていると言うのに、こんな甘い声で・・・
記憶にある限りでは、思惟はこんな甘い声を出したことがない。
いや、もしかすると恋人さんなんかが出来ちゃうと、こんな甘えた声を出しちゃうって事?
私が?
シルスは、顔を赤らめた。
「どうしたの?照れてんの?可愛い♪」
裸族ではない思惟のどっちかは、そう言うと、シルスの頭をなでなでした。
シルスは照れを隠すように
「ところで、皆さん、それぞれ思惟とは別の名前を付けません?
思惟だけじゃ不便だし・・・」
「思惟とは別の名前?」
裸族の思惟は反応した。
「前々から考えてあるです、私がシルスで、あなたがぽんぽんで、
あなたが汎都(ぱんと)さんと、舞夢(まいむ)さんってのは、どうでしょう?」
「私の・・・もしかして、すっぽんぽんのぽんぽん?」
裸族の思惟は聞いた。
「そうだけど・・・」
「あなたは私が好き好んで、自らの意思で裸になってると思ってるの?
それ、心外なんだけど」
「えっ?」
「私にとって服は、拘束具、私の力を抑制するもの」
どこかで聞いたことがあるような内容だが・・・
「みんなにとって私は気のエネルギー源。
私が服を着ればそれだけ、みんなへの気の供給量が減るの」
何言ってるんだろう、この裸族は?
シルスは思ったが口には出さなかった。
【気】とか言われても、確かめようはないのだが・・・・
「そう!みんなの為に私は、裸になるの!」
裸族の思惟は、そう言うと、浴衣をヒーローのマントのように靡(なび)かせた。
「いえーーーーい」
汎都ちゃんと舞夢ちゃんは、興奮した。
そこには、見慣れた自分の裸があるだけなのだが。
テンションの上がった裸族の思惟は、髙笑った。
こいつも私の可能性なの?
シルスは滝汗を流した。
「私の名は、ぽんぽーん♪」
「いえーーーい」
とりあえず名前は気にってくれた様だ。
シルスは、テンションマックスな、すっぽん&汎都ちゃん舞夢ちゃんを、デジカメで撮りまくった。
シルスが撮影に熱中していると、エレベーターのファンが、「うをーん」と音を立てながら回転をし始めた。
エレベーター内の空気の質が変わった気がした。
澄みきった空気が、肺を満たし、邪気が外に出ていく様な気がした。
チーム南の島のメンバー4人は、目を合わせ、ドアを見つめた。
妖精たちが住むであろう地下世界へのドアが開く瞬間。
裸族のぽんぽんちゃんは、コテカを強く握り、汎都ちゃん舞夢ちゃんは、ぽんぽんちゃんの、腕を掴んだ。
少し離れた所に立っていた不安げなシルスを見て、すっぽんちゃんは、手招きをした。シルスは、その気遣いにちょっと嬉しくなって、ぽんぽんちゃんの背中に走った。ぽんぽんちゃんの背中は自分と同じ匂いがして、落ち着いた。
ぽんぽんちゃんは、手に持っていたコテカを股に装着して、戦闘準備を整えた。
それは、無防備な4人が持てる唯一の武器と言っても良い。
股に装備して武器になるとは思えないが。
でもコテカを装備したぽんぽんちゃんは、威風堂々としていて、頼もしかった。
「コテカがこんなに頼もしくなるなんて」
シルスは呟いた。
エレベーターのドアは、音も立てずにゆっくりと開いた。
ドアが開くと、ドアの向こう側には、今にも消えそうな儚い美少女が立っていた。
「会璃(あいり)さん」
妖精の姫さまの使鬼だ。
その隣には、長い黒髪で、怨念を発してそうな少女が、思惟たちを見つめていた。
騰子さんだろう。
会璃さんは、ぽんぽんの股のコテカを見て、顔を赤らめた。そして、
「ごめんね、ほったらかしにして・・・・」
と天使の様な優しい声で言った。
その声に、思惟たちの心にあった色んな不安の塊が、砕け散って行くのを感じた。
つづく
いつも読んで頂き、ありがとうございます(⁎˃ᴗ˂⁎)
思惟たち ヽ(*'0'*)ツ
思惟オリジナル(15) 旅館の女将修行中
12人の思惟たち
【チーム・北の島】
α・・・ ちょっとアホっぽい。弄られキャラ。
β・・・ 賢そうな子。
璃琥(りく)・・・高跳び少女。
思惟・女将・・・大人びた出来る少女。
【チーム・南の島】
シルス・・・デジカメ少女。日記を記す。
裸族(ぽんぽんちゃん)・・・コテカを装着した少女。
汎都・・・パントマイムが得意
舞夢・・・パントマイムが得意
【チーム・西の島】
ちーず・・・兄の狼図を嫁にしたい少女。
φ・・・ 初恋の少年を忘れられない。人形使い。
Ψ・・・ 惣菜買い出し担当。お金の管理を担当。
Ω・・・すべてを知る思惟。
ν・・・?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます