5話 窓の外には、赤い火星が見えた。
女将の間にある、榧(かや)風呂の古さに、この旅館の長い時間の流れを感じさせた。
榧風呂の湯船は、1人が入るにはちょっと広めで、ゆったりとしていた。
チーム・西の島の4人の思惟は、何となくの流れで、一緒にお風呂に入ることになった。
「この世で一番可愛いのだ誰だ?」
「それは思惟ちゃんだよ♪」
「えーマジですか~」
鏡に映る自分が味方なら、自分に対してどう接してくれるだろうか?
「思惟ちゃん可愛い」
「思惟ちゃんも可愛いよ」
「えーーーマジですか~」
「うんおっぱいは小さいけど、綺麗な形してるし」
「思惟ちゃんのおっぱいも綺麗だよ」
心の底に潜む不安を、紛らわすための自画自賛だけど、それを言い合える存在は、味方なのか?
少なくとも、12人に分かれた思惟たちは、味方な気がする。
そして、私自身も決して裏切る事のない味方でいたい。
ふと窓の外を見ると、赤い火星が見えた。
「私はもうちょっと入ってる」
「あんまり長く入っていると、のぼせるよ」
そう言うと、チーム西の島の3人の思惟は、内湯を出て行った。
同じ過去。同じ記憶。同じ声。同じ顔。同じ身体。
チーム西の島の思惟の4人目・思惟Ωは、3人の思惟の同じ形をしたお尻を、見送った。
チーム・西の島の思惟たちは、まるで無二の親友同士の様に楽しげにしていた。
他人ではない自分。
何を考えているのか解らない他人とは違い、思惟たちと一緒にいる時間は、ホントに落ち着いて癒された。
思惟Ωは、乳白色のお湯を顔に掛けると、溜息をついた。
そして、落ち着いて癒されてばかりは、いられない現実の事を考えた。
思惟Ω、彼女は覚えていた。
あの妖精の住む地下で、何があって、何をされたかを・・・
妖精たちは、使鬼を作ろうとしていた。
あの妖精の姫さまに仕えていた使鬼たちの様な使鬼を。
兵器としての使鬼だ。神将級の使鬼は、簡単に弾道ミサイルを叩き落とせる能力を持っていた。
姫さまのあの神将級使鬼は、60%が姫さまの魂の分霊で、あとの40%はあやかしだ。
だからこそ、声も顔も身体も違っていた。
それが、思惟の場合は、思惟の分霊率が、限りなく100%に近い使鬼が出来てしまった。
それは、妖精たちの技術では、理論上ありえないらしい。
使鬼使いとしての能力が強すぎた結果らしい・・・
それが、地下の妖精たちにとって、どういう意味を持つのかは解らない。
他の11人の思惟が、どれだけ使鬼の要素があるのかは解らない。
間違いなく11人の思惟は、100%の人間ではない。
99、9999999999999999999999999・・・・%と、
100%の違いが、どう出るのかは不明だ。
思惟Ωは、自分がオリジナルではない事を知っていた。
あの時の事は、【生まれた】と言う表現より、【存在が始まった】と言った方が、正しいかもしれない。
思惟Ωは、物質として自分の存在が始まった瞬間を、覚えている。
気体から物質化し、思惟Ωの存在は始まった。
少しづつ形成していく自意識と自分。
それはとても心地良い感触だった。
思惟と言う優しい少女の感覚は、とても心地よかった。
そして、自分と言う物質が、この世界に存在している充実感。
乳白色のお湯の中で、思惟Ωは、拳を強く握り、この物質世界の自分を強く意識した。
つづく
思惟たちヽ(*'0'*)ツ
思惟オリジナル(15) 旅館の女将修行中
【チーム・北の島】
α・・・ちょっとアホっぽい。弄られ少女。
β・・・ 賢者な少女。
璃琥(りく)・・・高跳び少女。美少女戦士。
思惟・女将・・・大人びた少女。
【チーム・南の島】
シルス・ ・・ デジカメ少女。日記を記す。
裸族・・・ コテカを装着した少女。
パンちゃん・・・ シルスと裸族が大好きな少女。
マイちゃん・ ・・キャラはパンちゃんと同じ。
【チーム・西の島】
ちーず・・・兄の狼図を嫁にしたい少女。
φ・・・ 初恋の少年を忘れられない。人形使い。
Ψ・・・ 惣菜買い出し担当。お金の管理を担当。
Ω・・・地下での記憶を持つ。
ν ・・・?
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