4話 旅人の少年と旅館の娘
チーム・西の島の思惟。
彼女は、旧館の一室にある錻力(ぶりき)の間、別名ぶりき博物館で、寝ころび静かに目を閉じた。
子ども部屋を思わせる作りの、錻力の間は、子ども心を呼び起こさせた。
この部屋は昔から、誰も居ないのに音がする!と噂されてた錻力(ぶりき)の間だ。
「ぶりきのロボットが勝手に動いているんじゃないか」
とか
「江戸時代の仲居さんの幽霊が憑りついている」
とか噂されていたが、もし妖精がいるとすれば、それらの原因は妖精の可能性がある。
彼女が作った妖精捕獲器は、何も捕獲することはなかった。
こうなると意地でも捕まえたくなった。
錻力の間の各所に、隠しカメラ&センサーを着けようと思ったが止めた。
相手は、3センチくらいの小さき存在。
大きな人間には見えないところまで、見えるはず。
例えば、物を動かした後の埃。
大きいと気づかない些細な異変にも気づくはず。
そこまで気を使う事など不可能に近い。
すでに妖精捕獲器を各所に、設置したことは知っているはずだし、かなり警戒しているはずだ。
彼女は、耳を澄ました。
平日の昼間の旧館は、何の音もしなかった。
こんなに静かなんだ・・・
お昼寝にはちょうどいい感じだが、寝る訳には行かない。
何気に来ているTシャツを触ってみた。
良い生地を使っている事が、すぐに解る質感。
異質感がゼロで、肌に合う感じが気持ちいい、オーガニックコットン100%だ。
Tシャツには「φ」と書かれいた。
3年前、旅館に長期宿泊していた少年から贈られたTシャツだ。
親の仕事の都合で夏休みの1か月少年は、この錻力(ぶりき)の間に泊っていた。
錻力(ぶりき)博物館と言っても、ほとんど誰も来ないし、少年の希望を、誰も止める人はいなかった。
兄の狼図は、「弟が出来たみたい♪」と、喜んでいたし、少年は、旅館にとって特別な客になっていた。
そして、思惟が初めて恋を意識した相手だ。
年齢は、思惟と同じだった。
「これは、ギリシャ文字のファイ?」
と聞く思惟に、少年は言った。
「ギリシャ文字じゃないよ」
「何?」
「いつか教えてあげるよ」
「えー」
思惟は、兄の狼図は別にして、同世代の男子と積極的に話す事はなかったが、その少年とは、不思議と上手く話せた。
旅人の少年と旅館の娘と言う関係性があったからかも知れない。
「いつか教えてあげるよ」と、
でも結局、3年たっても、何の連絡もなかった。
空を駆ける風にとって、地上で暮らす人なんて、一瞬だけ相まみえるだけの存在なのかも知れない。
そんな相手のプレゼントのTシャツを着続けるなんて・・・
未練がましい・・・
他の思惟が、あの旅人の少年の事を、あまり気にかけていない事が意外だった。
φのTシャツを見ても、対して反応はしなかったし・・・
でも・・・・もし旅人の少年への想いが、より濃くなって具現化したのが、私ならば・・・
そんな思考に耽っていると、
錻力(ぶりき)の間に、何か小さな気配を感じた。
いる・・・
思惟φは、頬を微かににやけた。
つづく
いつも読んで頂き、ありがとうございます(⁎˃ᴗ˂⁎)
思惟たちヽ(*'0'*)ツ
思惟オリジナル(15) 旅館の女将修行中
【チーム・北の島】
α・・・ちょっとアホっぽい。弄られ少女。
β・・・ 賢者な少女。
璃琥(りく)・・・高跳び少女。美少女戦士。
思惟・女将・・・大人びた少女。
【チーム・南の島】
シルス・ ・・ デジカメ少女。日記を記す。
裸族・・・ コテカを装着した少女。
パンちゃん・・・ シルスと裸族が大好きな少女。
マイちゃん・ ・・キャラはパンちゃんと同じ。
【チーム・西の島】
ちーず・・・兄の狼図を嫁にしたい少女。
φ・・・ 初恋の少年を忘れられない。人形使い。
Ψ・・・ 惣菜買い出し担当。お金の管理を担当。
ν ・・・?
〇・・・?
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