3話 24個のカニクリームコロッケ

 何の明かりもない夜の細い路地は、慣れてない人には、不安感を感じさせるかも。

しかし、子どもの頃から慣れ親しんだ思惟Ψ(さい)は、迷いなく細い路地を自転車で走り抜けた。


車の来ない細い路地は、街の子どもたちにとって、絶好の遊び場だった。


夜の暗闇の中を自転車で走っていると、思い出の詰まったこの場の素粒子と、自分の身体を構成している素粒子が、触れ合っている気分になった。


つま先から、髪の先まで、素粒子レベルで、懐かしく楽しい思い出に包まれた。


素粒子までを実感できるようになったのは、12人になってからだ。何か能力が覚醒したのだろうか?


細い路地を抜け、明るい大通りに出ると、その感覚は、ふっと消えた。


思惟Ψは、軽く微笑むと、気分を入れ替えた。


まだチーム・北の島の思惟女将が、旅館で働いているから、旅館の関係者と、会うのは避けたい。


思惟Ψは、裏道を駆使して、旅館から一番遠くの小さな惣菜屋にたどり着いた。


思惟ΨのΨは、惣菜のΨ(さい)


さっきチーム・北の島のちょっとアホっぽい子につけられた名前だ。

なんで同じ思惟なのに、彼女だけアホぽいのかは不明だ。


そのアホな子に「惣菜のΨ(さい)って!何よ!」と抗議はしたが、Ψのギリシャ文字がカッコ良かったので、一応認めることにした。


惣菜屋に入ると、タイムセールで半額になったカニクリームコロッケを24個買った。1人で食べるには多すぎる数だ。


少しの事でも、出来るだけ、怪しまれる行動は避けたいが・・・


でも、あいつら(思惟たち)が、せつに、「カニクリームコロッケ食べたいよ~」

とコールをするものだから、仕方なく。


みんな見えないところで、ストレスが貯まっているから、それくらいは、してあげたい。


閉店前の店内では、パートのおばさんが、レジ打ちをしていた。

温泉や結婚式や宴会で、旅館を利用したことがある街の人は多い。


思惟は、小さい頃から看板娘扱いだったし、そこでちょこちょこ働く少女は、やはり目立つ。結果、普通の女子高生よりは、知名度は高い。


だとしても女子高生が、カニクリームコロッケを24個買ったからと言って、普通は何も怪しいとは思わない。


まさか11人の分身がいるとは、想像も着かない。

ただ知り合いだと「誰と食べるんだろう?」とかは、思うかも知れない。


24個は多すぎたかな?

12個のしとくべきだった?


でも、一個ずつだったら、あいつら(思惟たち)

かなり切なそうな顔をする。それは見ていてツラい。


思惟オリジナルの頃から、カニクリームコロッケは大好きだった。

ホントは3個づつ、36個買いたかったのだが、それはさすがに・・・拙い。


「ありがとうございます」


レジ打ちのおばさんの声を背に思惟Ψは店の外に出た。

その声から、何かを怪しむ要素は感じられない。


自転車に乗ると、同じクラスのめぐみが声を掛けて来た。


「思惟、今日はごめんね。私、驚いちゃって・・・」


何の事やら(滝汗)

今日学校に行ったのは、北の島のアホな思惟だ。

情報の共有は、夜遅くに行う予定。


「いいよ。全然、大丈夫だから」

と、無難な返事をした。


「良かった」


何が良かったの?まったく見当も着かん(滝汗)


「でもあの人、あれはないよね」


あの人って誰やー!あれってなんやー!

心の中の叫びに反して、

「あれは、ないよね・・・」

と無難な返事をした。


「めぐみ、お待たせ」

惣菜屋の方から声がした。

さっきのパートのおばさんの声だ。


「じゃあ思惟、またね、バイバイ」

「バイバイ」


惣菜屋の方から

「同じクラスの里山旅館の子だよ」

と声が聞こえた。


あのパートのおばさんは、めぐみのママだったのか。

あまり深い付き合いはしたくないのだが(泣)


「狭い街はこれだから、でもとりあえずミッションコンプリートだ」




つづく



いつも読んで頂き、ありがとうございます(⁎˃ᴗ˂⁎)



思惟たちヽ(*'0'*)ツ


思惟オリジナル(15)  旅館の女将修行中



【チーム・北の島】


α・・・ちょっとアホっぽい。弄られ少女。

β・・・ 賢者な少女。

璃琥(りく)・・・高跳び少女。美少女戦士。

思惟・女将・・・大人びた少女。


【チーム・南の島】


シルス・ ・・ デジカメ少女。日記を記す。

裸族・・・ コテカを装着した少女。

パンちゃん・・・ シルスと裸族が大好きな少女。

マイちゃん・ ・・キャラはパンちゃんと同じ。


【チーム・西の島】


ちーず・・・兄の狼図を嫁にしたい少女。

φ・・・ 初恋の少年を忘れられない。人形使い。

Ψ・・・ 惣菜買い出し担当。お金の管理を担当。

ν ・・・?

〇・・・?



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