6話 裸族の思惟は眠れない。
「わたしって、こんな匂いがするんだ」
裸で居たら浴衣を着た思惟に「いざって時に、困るから」と、旅館の浴衣を着せられてしまった裸族の思惟は、眠れなかった。
裸族の思惟の両隣には、同じ匂いのする思惟が、すでに深い眠りに入っていた。
自分の股には、コテカが塔の様に建っていた。
両隣を少女に挟まれての、この状態。
絵的には凄い状況だか、今、女将の間で、この状況にツッコミを入れてくれる人はいない。
眠れない裸族の思惟は、自身の股を見た。
コテカに詳しい訳じゃないけど、股にあるコテカは、普段着と言うより、儀式用の様な感じがする。
もしこれが股ではなく、地上に建っていたら、 古代遺跡の塔だと思うだろう。
眠れない裸族の思惟は、これをニューギニア島の近くの島から、持ち帰った曾おじいちゃんの事を思った。
【死んでも帰れぬニューギニア戦線】から、生きて帰った曾おじいちゃんが残してくれたもの。
そう思うと、股が・・・違う、胸が熱くなった。
曾おじいちゃんは、思惟が、小学校に上がる前に死んでしまった。
でも微かに面影は覚えている。
写真で見ると小柄な人だったが、幼い頃の思惟には、大きく偉大な人だった。
そして、心の中は冒険心に溢れていた。
曾おじいちゃんが、幼い思惟に話してくれたのは、ニューギニア島近くの島での話。
日本軍の基地があったその島のサンゴ礁の底で、見つけた秘密の古代神殿の話。
大昔に海に沈んだ大陸の話。
曾おじいちゃんはこのコテカが、沈んだ大陸の秘密を握ってると信じて疑わなかった。
「思惟、いいかい。本当の事はね、境目に隠してあるんだよ」
曾おじいちゃんは、幼い思惟にそういって優しく微笑んだ。
「境目に隠してある・・」
裸族の思惟は呟いた。そして、
「曾おじいちゃん、思惟は立派な裸族に成りました」
と報告したら、
「いい話風にするな!」
両隣の寝ているはずの思惟に、ツッコまれた。
両隣の思惟も眠れなかったらしい。
つづく
いつも読んで頂き、ありがとうございます(⁎˃ᴗ˂⁎)
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