4話 女将修行手帳の行方

古い木の匂いが充満している物置部屋は、遠い昔の人々の思い出に守られているようで、とても安らいだ。


「確か、この辺にエレベーターのドアがあったはず」


とスポブラ思惟は言った・・・って、違う!


彼女は、いつの間にか高跳び様のスパッツに履き替えていた。


「いつのまに!」

思惟αβは、同時に声を上げた。


それにしても、出来る女は、何をやっても早い。

「せっかく【スポブラ】って名前をつけたのに」

思惟αは愚痴った。


陸上部のレギュラーのユニホーム。

栄光の中学陸上部時代の象徴。


1年から3年まで、高跳びのレギュラーだった栄光の時代。

高跳びをしたいと言う部員が、思惟しかいなかったから可能だったのだが(汗)

大会での成績も、あれだったが・・・


「私の栄光の時代」


ちょっと涙が零れそう。

そんな思惟αβの感慨をよそに、思惟女将は物置部屋の探索にあたっていた。


「何もそれらしい形跡は無いわね」

思惟・女将は、古い白壁を優しく撫でながら言った。

その大人びた雰囲気は、癒された。


「あの手で、なでなでされたいよね」


思惟βは、思惟αの気持ちを代弁してくれた。


他の思惟も薄々は気づいているのだが、女将の胸が、他の思惟より大きい。


浴衣の奥に何か入れているのだろうか?


「揉んでみようか?」


思惟βは大胆な事を思惟α言った。


「それは・・まだ知り合ったばかりだし」

「まあ人格としては知り合ったばかりだけど、ずっと一緒だったって存在でしょう。自分のおっぱいを揉んでいるようなもんだよ」

「でも女同士と言うか思惟同士な訳だから、確かめるチャンスは幾らでもあるんじゃない。自然な感じで揉める日を待とうよ」


「αちゃんは慎重なんだから」

「そう言えばスパッツさんの腹筋も何気に割れてる。

お尻もなんかぷりぷりしてるー」


「あっホントだ。さっきまで同じ思惟だったはずなのに!なぜ?

って言うか、スパッツさんって名は、ちょっとダサいかも。

もうちょっと考えましょ」


「じゃあ陸上部のリクくんで」

「男子見たい」


思惟αは、女将修行手帳を取り出して【凛琥】と書いて見せた。

【凛琥】好きな漫画の主人公の男子の名前だ。


「これでどう?」

「いいねぇ」


・・・って言うか、女将修行手帳、私が持ってるじゃん。

これは、思惟本体である可能性大だわ。


思惟αは1人、にやけていると、思惟βが


「凛琥くん、お尻に何かついてる。取って上げるね」

「うん、ありがと」

と凛琥くんのお尻を揉んだ。


明らかに何かを取っている揉み方ではないのだが、凛琥は気にしていない様だ。


さらに急に、凛琥くんと呼ばれた凛琥は、それ自体に何も疑問は持っていない様だ。

そこは思惟同士何か通じているのか、細かい事は気にしないタイプなのかも知れない。


思惟βは、思惟αの耳元で

「めっちゃぷりんぷりんだったよ」

と囁いた。



つづく


読んで頂き、ありがとうございます\(^▽^)/

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