2話 12人の思惟

本体・・・


元々の思惟の心を宿した存在が、まだ存在しているのかは解らない。


でも、希望的観測として「多分、私が本体」と、全員が思っているに違いない。


女将の間には、12人の思惟がひしめき合っていた。


1人で生活するには無駄に広いと思っていたが、12人もいると、狭く感じる。


「ねえ、誰か私の服調達してきてよ」


服を着ていない思惟が、5人いた。


「服を着ていない子は、本体の可能性は低いかも」と、

思惟αは思った。(ベットに寝ていた思惟を仮に思惟αとする)


ちなみに思惟αは、お気に入りのシルクのパジャマを着ている。

本体で有ることを示す、かなり有力なアイテムだ。


そして、思惟αと抱きしめあった思惟βは、短パンとTシャツ。

部屋で一人でいる時の格好だ。


慣れ親しんだ自分の服を、自分以外の自分が着ているのって、なんか不思議な気分がした。


思惟βは、抱き合った後の流れで、思惟αの隣に座って12人の思惟の様子を眺めていた。思惟αは思惟βにちょっと親近感を感じた。


「私が取って来てあげるよ。足りないのは何人?」


12人も思惟がいると、それぞれにキャラが違ってくるのか?

世話好きな思惟が、足りない思惟の数を数え始めた。

同じ姿である事をのぞけば、まるで修学旅行だ。


「そこ!ちょっと待って!

2人同時に外に出るのは、止めた方が良いよ!」


部屋の外に出て行くのを止めたのは、白いパンツと白いスポーツブラを着た思惟だった。


このスポーツブラの思惟は、めっちゃ張り切っている時の思惟に似ている。

中学の時、陸上部で高跳びをしていた時の思惟だ。


「こんなに沢山の私を仲居さんたちが見たら、ビックリするでしょう。

とりあえず服着たら、今後の事話し合いましょう」


スポブラ思惟の、その立ち姿は凛々しく美しかった。


「こんなに凛々しかったんだ私って・・・」


思惟αは、スポブラ思惟を見てちょっと感動し自惚れた。


「私たち、これからどうなると思う?」


思惟αは、思惟βに聞いてみた。


「あのスポブラの私が何とかしてくれそう。多分出来る子だよあの思惟は」

「そうだね、私って意外とやれば出来る子だしね」



つづく


いつも読んで頂き、ありがとうございます\(^▽^)/

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