第290話 10万ボルト
俺はなんとかライカの速さについていくのがやっとだった。
おそらく、ミラの『レディーム』の力があるからこそ、ようやく追いつくことができている状況だと思う。
「おらぁ!」
時折、ライカは俺に向けて拳の一撃を放ってくる。その拳はバチバチと電撃を纏っており、一撃でも喰らえば大ダメージは避けられないだろう。
それを俺はなんとか紙一重で避けているが……なんとなく、ミラがまだ本気を出していないのを感じてしまう。
それどころか、戦闘が長引くにつれて、段々と速さ、強さが増している……そんな感じがした。
「はぁ……はぁ……」
一通りのライカの攻撃が終わって、俺はまだなんとか一撃も食らっていなかった。
しかし、かなりの疲労がある。こんな感覚はアキヤの腕輪の力を借りていた時はまるで感じなかったことだった。
「ふぅ……中々避けるじゃねーか。お前、ただ、アキヤの器ってわけじゃなかったみたいだな」
ライカは感心したようにそう云うが……やはり、まるで本気ではないという感じだ。
「けどよぉ……正直、飽きてきたぜ。お前、避けるので精一杯だろ?」
痛いところを突かれるが、俺は無言で返事をする。すると、ライカは意味深にニヤリと微笑む。
「なぁ……お前だけ、ズルくないか?」
「……ズルい、ですか?」
「あぁ。優しくて自分を信じてくれる仲間……俺にはなかったぜ? それなのに、お前だけが持っている……そんなお前を見ているとよぉ……もし、お前の仲間の前で、お前が情けない姿を見せたら、アイツらどんな顔するのかなぁ、って……興味が出てきちまったんだ」
不気味な笑みを見せるライカ。俺は剣を強く握りしめる。
「だから……ちょっと本気出してやるよ」
そう言うと、ライカが一気に電撃を放出する。周辺にはバチバチと雷撃がほとばしる。
その瞬間、俺は理解した。今までのまるで本気ではなかった。それこそ、俺で遊んでいたのだ。
「……『ボルト10』」
ライカが小さくそうつぶやくと同時に、眩い閃光がほとばしり、思わず俺は目をつぶってしまった。
しまった、と思った次の瞬間には、ライカはそこにいなかった。
「え……ライカは……?」
「ここだよ」
声は……すぐ背後から聞こえた。いや、正確にはライカの手が……俺の肩に乗っているのを感じる。
俺は動くことができなかった。バチッという鋭い音がする。
「お前の情けない姿を見て、アイツらがどんな顔をするか……俺に見せてくれよ」
そう言うと同時にバチバチッと激しい雷撃が周囲にほとばしる。
当然、俺の身体にも、激しい電撃が駆け巡ったのだった。
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