第283話 何故此処に?
「じゃあ……とりあえず、無事だったことに……乾杯しましょうか?」
俺たちは町に戻ってきていた。そして、とりあえず、なぜか全員酒場にいた。
「……確かに無事だったのはいいけど……何か言うこと、あるんじゃないの? ミラ」
そう言って少し怒り気味なのはメルだった。しかし、ミラはキョトンとした顔で俺たちのことを見る。
「ん? 何か言うことって……何かある?」
「アンタねぇ……もし、アストがあの大岩を両断できなかったから今こうやって酒場で呑気に過ごすこともできないのよ!?」
そう言ってミラのことを指差すメル。リアとサキは気不味そうに苦笑いしている。
すると、ミラはそんなことか、と言わんばかりの表情でメルのことを見る。
「ウチは、できると思ってたよ。アスト君なら」
そう言ってミラは俺のことを見てウィンクする。なんというか……ミラは本当にズルい性格をしている。
「それとも……メルは、アスト君のこと、信じてなかったの?」
「え……な、なんで、そういうことになるのよ……!」
恨めしげになぜか俺のことを見るメル。なんで俺がそんな目で見られなければならないのか……。
「しかし……これで、準備は整った、ということか」
と、ポツリとそう言ったのは、リアだった。
「え……準備、ですか?」
「……魔王の城に行く準備だ。無論、どうやって城に行けばいいのかはまだわからないが……」
リアに言われて、その時ようやく思い出した。
この一件で大分慌ただしくなってしまったが、そもそも、俺たちは魔王の城に行く方法を探していたのであった。
しかし、リアの言う通り、魔王の城への行き方は未だにわかっていない……準備ができたとはいえ、これからどうすればいいのだろうか。
「行き方なら、知っているぜ」
……聞き覚えのある声が、俺の背後から聞こえてきた。
金色に輝く短髪、そして、高い背丈の女性が、そこにいた。
「よぉ。久しぶりだな。お前ら」
豪快に笑うその人物を見て、俺たちは思わず唖然としてしまった。
「ラ、ライカ……?」
俺が名前を呼ぶと、ライカはチラリと俺の右腕を見た。
そして、そこに腕輪がないことを確認する。
「……なるほど。アキヤとは決別したってわけか」
そう言うと、ライカは俺の肩をバンバンと力強く叩く。
「……俺としては残念だが、お前の判断は正しいよ、アスト」
「え……はぁ、どうも……」
意味もわからず俺が対応していると、ライカはなぜかまた豪快に笑う。
「で、お前ら、魔王の城への行き方を探しているんだろ?」
「え……えぇ。そうですけど……」
「俺が案内人になってやる。明日の朝、町の外れまで来いよ。遅刻厳禁、だからな!」
そう言ってまたしても豪快に笑いながら、ライカは出ていってしまった。
「……あの人、なんでこの町にいるの?」
ミラの言葉で俺たちは我に返る。
どちらにせよ、予想外の人物と、俺たちは再会したのであった。
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