第4部 追放者達の決戦
第260話 別世界
「……えっと。これってどこまで続いているんです?」
思わず俺は落ちている最中にミラとメルに訊ねてしまった。
「さぁ? ウチも初めて落ちるし」
「……アンタねぇ。っていうか、リアのこと、ちゃんと背負ってる?」
「えぇ。大丈夫です……逆にサキはその……大丈夫ですか?」
俺が見た限り、サキは完全に気絶しているようであった。
「……まぁ、大丈夫じゃない? この穴は別の世界につながっているんでしょ? まぁ、それが本当なら、だけど」
メルにそう言われると少し不安になるが……なんとなく、大丈夫だと思ってしまった。
この穴はどこか別の場所につながっている……このまま落ち続ければ、どこかにたどり着くことが出来る……俺にはそんな直感があった。
それに……なぜか、俺はこの感じに似た感じを記憶していた。
はるか昔……俺の記憶じゃない……もっと、昔……もしかすると、アキヤの記憶かもしれない。
とにかく、俺はこの穴を落ちるような感覚を味わったことがあるような……そんな感じがしたのである。
「そうね。でも、メルが言った不安は杞憂みたいだね~」
と、ミラがそう言ったその時だった。俺は落ちていく先……穴の底の方になんとか視線を向ける。
そこには穴の底がある……はずであった。しかし、そこに底はなかった。
真っ暗だった穴は、いきなり真っ白に変わったのだ。そして、そのままさらに俺たちは落ちていく。
「この感じ……転移魔法に似ているね」
ミラの言葉の通り、たしかに転移魔法を使用する際に包まれる光のような感覚があった。
実際、そのまま俺たちは白い空間の中で段々と光に包まれていき……視界は完全にホワイトアウトした。
「……んっ……ん?」
それからどれくらい時間が経っただろうか。俺は……穴を落ちていなかった。
「ここは……地面?」
俺が横になっていたのは……地面だった。どうやらどこかに飛び出したようである。
「おや、アスト君、無事だったみたいだね」
ミラが俺に声をかけてくる。周りを見ると、たしかにメル、リア、サキも意識は失ってはいるが、全員無事のようだった。
「しかし、ここが魔界? っていうのかね? なんだか私達の世界と大して変らないね」
ミラの言う通り、そこは地面があり、空があり、緑があり……本当に穴を通って別の世界に来たのかも疑ってしまうくらいだった。
「でも……間違いなく、魔界とやらには来たみたいだね」
そう言って、ミラが指をさす先には……大きな城があった。元いた世界では見たことのない……なんだか禍々しい建築物だ。
「あれが……魔王の城」
どうやら、俺達の別世界への転移は成功したようであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます