第247話 駆け上がった先に

 かくして、囮及び撃破作戦は開始された。


「おーい! こっちだよー!」


 ミラがいきなり、ドラゴンの目の前に立ち止まって大声を出す。ドラゴンは最初は興味を示していないようだったが、やがてゆっくりとミラの方を見ているようだった。


「ほら! こっちだって!」


 ドラゴンがミラに興味を示し始めた……その時だった。いきなりミラの後方から、火球が飛んでくる。


 ミラの後方には「ステルス」を使用したキリが待機している。


 しかし、ドラゴンはあまり頭は良くないのか、何が起こったのか理解できていないようだった。火球はドラゴンの顔面にクリーンヒットする。


『グゴゴゴゴ……』


 ドラゴンは低い唸り声をあげる。しかし、先程と同様に、火球が当たった部分はまるで傷がない状態だった。


『グオォォォォォ……!』


 先程よりも怒りに満ちたような唸り声を上げるドラゴン。実際、その太い腕をゆっくりと振り上げている。


 その瞬間、ミラが俺とリアに目配せをする。


「……リア。行きますよ」


「あ、あぁ……だが、アスト、一つ聞いていいか?」


「はい? なんです?」


「その……私は、重くないか?」


 リアは少し恥ずかしそうに俺に聞いてくる。俺はリアを背中に背負っていた。撃破組である俺とリアは、確実にドラゴンの口の中に侵入し、動力源を破壊する必要がある。


 そうなると、一人より二人の方が良い……ということで、俺がリアを背負って、そのままドラゴンの口の中に侵入することになったのである。


「えぇ、大丈夫です。全然重くないですよ」


「そ、そうか……それなら、いいのだが……」


「それより、リアこそ……くれぐれも、しっかり掴まっていてくださいよ」


 俺がそう言うと、リアは俺の肩をガシッと掴む。それと同時に、ドラゴンの一撃が先程と同様に、地面に振り下ろされる。


 それと同時に凄まじい衝撃波と砂埃が巻き上がる。


「くっ……み、ミラは大丈夫なのか?」


 リアが心配そうな声を出すが……俺たちにその余裕はない。


 ドラゴンの腕は振り下ろされた……そうなると、撃破組の行動も開始である。


「行きますよ! リア!」


 俺はリアを背負ったままで走り出す。振り下ろされたドラゴンの腕を駆け上り、そのまま顔面の方まで一気に駆け上がっていく。


 リアを振り落とさないように気をつけているが……かといって、早くしなければドラゴンの口内に侵入するチャンスを失ってしまう。


 そして――


「おりゃぁぁぁぁぁ!」


 ドラゴンの肩の辺りからジャンプし、そのまま……ドラゴンの口内の中に飛び込んだのだった。

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