第246話 囮と撃破
「……えっと、それで……どうしたらいいですかね?」
ドラゴンゴーレムの動力源が口の中にある……それがわかったのはいいのだが、それをどうやって破壊するのかである。
今の所、ドラゴンはこちらの出方を伺っているようで不気味に佇んでいるだけであるが……動き出せばまた強力な一撃がやってくるわけである。
「そりゃあ、口の中に入って動力源を破壊するしかないでしょ」
ミラは当たり前のことをさらっと言う。それが難しいから俺は聞いているのだが……。
「……とりあえず、囮組と撃破組に分かれるのはどうですか?」
と、そんな折にそんなことを言ってきたのはキリだった。
「囮と……撃破、ですか?」
「えぇ。ドラゴンゴーレムの耐性から考えても今回は姉様の状態異常魔法はあまり効果がありません。短い時間の足止めにしかならないでしょう」
「あはは~、手厳しいなぁ、キリちゃん」
苦笑いするミラを他所に、キリは先を続ける。
「ですから、あくまで私や姉様は足止め……本命はアストさん、アナタに任せます」
……なるほど。確かに囮に対して攻撃しようとすれば、自然とあの大きな口が開く。その間に俺がその奥にある動力源を破壊する、というわけか。
「で、回復組はどうすればいいわけ?」
と、メルとサキがそう訊ねると、キリは首を横にふる。
「申し訳ありませんが、今回回復薬の人にはまるで出番がありません。隠れてもらっているしかありません」
キリは遠慮することなく、はっきりとそう言った。メルは最初無反応でキリを見ていたが、やがて小さく頷いた。
「そこまではっきり言ってもらうと清々しいね。わかったわ。サキ、隠れるわよ」
「え……あ……み、皆さん! くれぐれも気をつけてくださいね!
そう言って、メルとサキはそのまま岩陰に歩いていってしまった。
「へぇ~……キリちゃん、意外とはっきり言うねぇ」
ミラがからかうようにそういうと少し恥ずかしそうにしながらキリはミラを睨む。
「……別に。アッシュさんはいつもこんな感じですから」
……確かにアッシュは役に立たない……というより、その役職が不利な場面でははっきりというタイプだった。キリもそれを見習っているということか……
「……わかりました。では……隠れている二人の分まで存分に暴れますか!」
俺は皆を元気づけるつもりでそう言った。しかし……なぜかミラとキリはポカーンとしていた。
「……よ、よし! 私も暴れるぞ!」
リアだけが、俺のやる気に答えてくれたのだった。とにかく……俺たちは今から、岩山のように聳え立っているモンスターを倒さなければならないのであった。
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