第245話 動力源
「……で、どうするんですか?」
俺の隣にやってきたキリが不安気な顔でそう言う。どうすると言われても……俺にもまるで検討がつかない。
確かにネクロマンサーとは戦ったことがあるが、そもそも、不死身のモンスターとは戦ったことはない。アキヤはどうか知らないが、少なくとも、俺は戦ったことがない。
「なるほどね」
と、いきなり背後から声が聞こえてきて俺とキリは思わず振り返る。
「あ……姉様……!?」
「やぁ、キリちゃん、無事だったみたいだね」
いつもの調子でキリにそう話しかけるミラ。見ると、傍らにはメルとサキ、そして、先程、ドラゴンにふっ飛ばされたリアも立っていた。
「……え? というか、そもそも、皆さんなんでここにいるんです?」
「え……あー……それは……」
「転移の穴……キリちゃんと同じ目的だよ」
俺が答えに困っている矢先に、ミラが即座に返答する。それを聞いて、キリはなるほどと納得した顔をする。
「……ホリアとメディですか。まったく……アッシュは私が連れて帰ると言ったんですけどね」
「え~、でも、キリちゃん、今あのドラゴンゴーレムに潰されそうになってなかった?」
馬鹿にした調子でそういうミラ。ムッとするキリだが、今回はおとなしく小さく頷いた。
「……えぇ。みなさんが来ないと危ないところでした。その点には感謝します。ですが……あれ、皆さんはどうやって倒します?」
そう言ってキリがドラゴンを指差すと、またしても低い唸り声が聞こえてきた。おそらく、またしても重い一撃を放とうとしているのだろう。
「あぁ、それなら簡単だよ。アイツ、弱点わかったしね」
「……本当ですか? ミラ」
思わず俺は驚いてミラに聞いてしまう。なんのことはないと言う感じでミラは頷く。
「ドラゴン……といっても、アイツはゴーレムだからね。正確にはドラゴンの形をしたゴーレムなんだよ。ゴーレムっていうのは、基本的には身体のどこかに動力源があるモンスターでね。それを壊せば簡単に倒せるんだ」
「……姉様。それは私もわかっています。ですが、その動力源がどこにも見当たらないんですよ」
キリがそう言うと、ヤレヤレと言った感じで首をすくめるミラ。キリは明らかに苛ついた様子だったが、俺はまぁまぁと宥めておいた。
「キリちゃん、まだ観察が甘いよ。ほら、あれを見てごらん」
そう言ってミラが指をさす先……またしても、ドラゴンが低い咆哮を上げる。
と、その巨大な口を開けた瞬間、その奥にキラリと光る何かが見えた。
「あれは……」
「さっき、アスト君とリアが囮になっていた時、『ステルス』でじっくり観察してわかったよ。あの口の奥の光る物体……あれこそがこのドラゴンゴーレムの動力源だよ」
ミラがさらっと簡単にそう言った瞬間に、またしてもドラゴンの低い唸り声が聞こえてくる。俺たちはそれに怯みながらもなんとか今一度ドラゴンの方を見る。
「……ね? 簡単でしょ?」
ミラは至極真面目な顔でそう言った。
なるほど……確かに簡単過ぎて泣きたくなるくらいだ。
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