第240話 人か、魔物か

「えっと……なんで、俺だけなんです?」


 と、メルの家に引き返す途中、俺は思わず聞いてしまった。


 これから魔物の王である魔王を倒すという度に、果たしてサキュバスであるサキを連れて行くのか……それは大きな問題であった。


 その真意を確かめたいと言い出したのが、メルなわけであったが……メルはなぜかサキの真意を確かめるために家に戻るのに、なぜか俺と二人で行きたいと言い出した。


「……別にいいでしょ。大勢で行ったらあの子も自分の気持ちを言い出しにくいでしょ」


 ぶっきらぼうにそういうメル。まぁ、それもそうかもしれない。大勢で行くと仮にサキが断りたい場合、そんな選択肢を奪ってしまうことになる。


 俺は納得し、メルと一緒にサキがいるであろう。メルの家に戻っていった。


「サキ! いるんでしょ!?」


 と、家に戻ると同時に、メルは大きな声で叫ぶ。と、慌てた様子でサキが玄関の方にやってくる。


「あれ? メルさん、もう戻ってきたんですか? っていうか、アストさんもどうしたんです?」


「あ、あはは……えっと、サキ、その――」


「これから魔王を倒しに行くのよ」


 と、メルがストレートにそう言った。思わず俺もサキも唖然としてメルを見てしまう。


「え……えっと……あ、あぁ! 前に言っていた話ですね! あ、あはは……そうですか、すごいなぁ、えっと……それで、私はどうすればいいですかね?」


 苦笑いしながらそういうサキ。まぁ、魔物としてはこれから魔王を倒しに行くって、言われたら、そういう反応になるよなぁ……


「アンタはどうしたいの?」


 メルは毅然とした態度でそう言う。サキはその態度に戸惑ってしまう。


「……え、えっと……アストさんやメルさんにはお世話になってしますし……でも、私は魔物で――」


 と、サキがそう言ったその時、メルがいきなり杖をサキに向けて突きつける。


「え……メルさん……?」


 驚いた表情でそういうサキ。しかし、メルの視線は真剣だった。


「アンタが自分のことを魔物だというなら、今ここで私とアストがアンタのことを魔物として処理するわ」


「え……ちょ、ちょっと、メル……!」


 俺が反論しようとすると、メルは鋭い視線で俺を見る。俺はその迫力に黙ることしか出来なかった。

 それに、メルのこの行動……何か思うところがあってしているように思えるのだ。


「そ、そんな……ほ、本気なんですか、メルさん……?」


「本気よ。本気じゃなきゃこんなことを言わない。さぁ、どうするの?」


 メルはあくまで真剣な態度でそういうメル。サキは助けを求めるように俺のことを見るが……俺としても何も助け舟を出すことは出来ない。


「え、えっと……私は――」

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