第231話 協力の持ちかけ
「……しかし、明日、なんとしても適当な依代を見つけることができれば……」
「……リアやラティア以上の依代を見つけることができるんですか?」
俺がそう言うとレイリアは言葉に詰まる。恨めしそうに俺を見るレイリア。
「……お前は妾に何をさせたい? この身体を返してほしいのか?」
「えぇ、ミラの身体は当然、返してもらいます。しかし、それではアナタに何も得がありませんよね?」
「その通りだが……どういう意味だ?」
レイリアは怪訝そうな顔で俺を見る。
「……どうです? 俺と……取引しませんか?」
俺はそんなレイリアを見ながら、なるべく落ち着くようにしながらそう言う。
「取引? お主……いきなり何を言い出す? 妾はお主達にとって敵であろう?」
「えぇ。おそらく、俺たちとあなたは分かり合えない……それをわかった上で取引を持ちかけているんです」
俺がそう言うとしばらくレイリアは俺を睨んでいた。中身はレイリアとはいえ、ミラに睨まれているようで、居心地が悪かった。
「……いいだろう。戯言として聞いてやろうではないか。で、妾に何を持ちかけるつもりなのだ?」
俺は少しの間黙ったあとで……レイリアのことをまっすぐに見る。
「……俺たちのパーティに協力してほしいんです」
「はぁ? 協力? ……あぁ、魔王の城への行き方か? 確かに言っていなかったな。しかし、それでは妾に利がないではないか」
レイリアがそう言うと俺は首を横に振る。
「もちろん、その方法も教えてもらいます。俺が言っている協力とは……アナタに戦力として協力してもらいたいということです」
俺がそう言うとレイリアはしばらく目を丸くしていたが、すぐにおかしくて仕方ないという感じで意地悪く笑い出した。
「……つくづくお主は面白いヤツだな。なるほど……で、それでお主らに妾が協力するとして、それで妾に得があるのか?」
「えぇ。アナタに……新しい身体を渡すことができます」
俺は自分でも中々勝負に出ていることを自覚していた。レイリアに新しい身体を渡す……それがどういう約束であるかは、俺自身も理解できていないわけではない。
「……お主、それは、本気で言っているのか?」
レイリアもさすがに信じられないという顔で俺を見る。
「えぇ……俺は仲間を取り戻すためなら、何でもします」
「……なるほど。そのためには宿敵の吸血姫とさえ取引する。と」
レイリアはニヤニヤしながら俺を見ている。そして、しばらくすると腕を組んで小さくうなずいた。
「……よかろう。その酔狂、乗ってやろうではないか」
そう笑顔で言うレイリア。どうやら……納得してくれたようである。俺も思わず安心してしまう。
「……で、この身体は返却してやろう。どうせ、明日には毒が全身に回って死ぬからな」
「あ……えっと、レイリア。その……もう一つお願いがあるんですけど……」
「何? これ以上妾に何を望むのだ? ……まぁ、協力してやると言ったからな。聞いてやろう」
怪訝そうな顔をするレイリア。俺は苦笑いしながら先を続ける。
しかし、これは俺達にとって……そして、リアにとって重大なことだ。だからこそ、俺はレイリアに協力を持ちかけたのだから。
俺はこれから俺がしようとしていることを、レイリアに話した。
「……なるほど。やれやれ……お主は本当に変わり者だな」
俺の話を聞いたあとで、呆れ顔でそう言うレイリア。しかし、納得はしれくれたようである。
「まぁ、いい……お前の願い、聞いてやろう」
そう言って、レイリアは席を立ち、店の外へ出ていってしまった。
「……あとは、リア次第ですね」
レイリアがいなくなったあとで俺はホッと胸を撫で下ろすとともに、明日のことを考え、不安を感じずにはいられなかったのであった。
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