第217話 聞きたいこと
そして、次の日。俺達……といっても、リアと俺、ミラの三人は街のはずれに集まっていた。
レイリアを呼び出すかも知れないという危険な試みであるため、メルには街で待機してもらうように言っておいたのである。
「えっと……そういうわけなんだけど……リア、大丈夫ですか?」
俺は申し訳ない気持ちでリアに尋ねる。リアは黙ったままで俺の話……つまり、昨日、俺とミラが話していた話を聞いていた。
「……つまり、今一度レイリアを私の身に宿さないと、魔王の城への行き方がわからないということか?」
「えぇ……少ない可能性としてはそれしかないかと」
俺がそう言うとリアは苦々しい顔をする。俺としてもただでさえラティアを失っているリアにこんなことを頼むのも嫌なのではあるが。
「……わかった。いいだろう」
「そうですよね、やっぱり嫌で……え? リア、今なんて……?」
「だから、わかったと言ったんだ。私は姉上を解放してあげたいんだ。そのためならば手段など選んでいられないだろう?」
リアは苦笑いしながらそう言う。ラティアのためとはいえ……酷な選択をリアにさせる結果となってしまった。
「わかりました……リア。ありがとうございます」
俺はそう言ってからミラに合図する。と、ミラは何か輪っかのようなものを手にしてこちらにやってくる。
「これ、魔物の動きを封じ込める道具。知り合いから借りてきたよ」
「え……そんな道具が……っていうか、知り合いって……」
「まぁまぁ、そんなことはいいから。もっとも、レイリアにこんなものが通用するかわからないけど」
そう言ってミラはリアの両手首と足首にその輪っかを嵌めていく。
「……じゃあ、リア。悪いんだけどその状態で吸魂の剣を抜いてみて」
ミラに言われるままにリアは剣の柄を握る。しかし、中々剣を引き抜こうとしなかった。
「……リア?」
「……アスト。約束してくれ。万が一、レイリアが暴れたら……迷いなく私の体ごと斬り倒すということを」
リアは思いつめた目で俺のことを見る。俺は……その瞳に答えるように大きく頷いた。
「では……行くぞ」
そう言って、リアは吸魂の剣を引き抜いた。それと瞬時に、気迫が大きく変化する。俺は剣を抜き、ミラも杖を構える。
「……ククク。懲りぬ奴だな。お主も」
声色も既にリアのものではなくなっている。レイリアのものだ。
鋭い邪悪な視線が俺とミラのことを捉える。
「さて……妾を呼び出すということは……殺される覚悟はしておるということだよな!」
そう言って一気に俺たちの方に飛びかかってくる……かと思ったが。
ドシャ、という音と共にいきなりレイリアは地面に倒れた。
「なっ……なんだこれは……!」
と、先程リアに嵌めてもらった輪っかが、両手首と両足首に光っている。
「お。効くもんだね」
ミラはレイリアに近づいていきながら珍しそうに地面に倒れ伏している彼女を見ている。
「こ、この! 妾の身体に何をした!?」
「アンタのじゃなくてリアのでしょ。それより、その状態のアンタに聞きたいこと、あるんだよね」
「……何? 妾に聞きたいこと?」
「そう。魔王の城について、なんだけど」
レイリアは先程までの気迫はどこへやら、キョトンとした顔でミラと俺のことを見ていたのだった。
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