第216話 できるか、できないか、ではなく

「でも……この世界に存在しない魔王の城には……どうやって行くんですか? やはり魔法ですか?」


 酒場からの帰り道。俺とミラ以外は全員解散し、俺たちは二人で歩いていた。

俺は単純に疑問に思ってしまってミラにそう尋ねる。


「そうだね。魔法だね」


「そうですか……えっと……もしかして、ミラはその魔法を使えたりするんですか?」


 俺がそう言うとミラが目を丸くして俺を見る。そして、急に笑顔になって笑い出した。


「フフッ……確かにウチはそれなりに魔法が使えるけど、言ったでしょ? 状態異常関連の魔法しか使えない、って」


「え……じゃあ、どうするんですか?」


「そりゃあ、使えるようになるしかないでしょ」


 ……使えるようになるって……そんなことできるのか? ミラの話を聞けば、その別の世界に行く魔法はマギナにしか使えないようなものなんじゃないのか? そんな簡単に会得できるのだろうか?


「えっと……そんなことできるのですか?」


「う~ん、どうだろうね。できるってことは聞いたことがあるような気はするんだけど……」


 そう言って難しい顔をするミラ。あるような気がするって……割とその点が重大なのだが……


「……でも、なんとかしないといけないでしょ。あんまり先延ばしにすると……リアがなにするかわからないし」


 ミラのその言葉に俺も同意する。確かにそのとおりだ。リアとしてはおそらく一刻も早くラティアを救い出したいだろう。そのためならばなんでもする勢いのはずだ。


 だとすればどうにかして、その別の世界にある魔王の城への行き方を探らなければならない。


「……そうですね。それこそ……ラティアだったら、魔王の城への行き方を知っていたかも知れませんね」


「あ~……確かに。サキはだめだったけど、それこそ、魔王に近い魔物なら、魔王の城への行き方もわかって――」


 そこまで言ってから、なぜかミラはいきなりポンと手のひらを叩く。


「いるじゃん。魔王に近い魔物。うちら知っているし、なんなら、戦ったこともあるし」


「え? ……あ!」


 そう言われて俺も同様に思わず声をあげてしまう。


 確かに……いるではないか。先代の魔王の側近ではあるが、魔王に匹敵する力があり、最強の吸血姫と言われた魔物が。


 しかし、次の瞬間には果たしてその魔物から話を聞くことができるのかが不安になる。


「……できますかね。そんなこと」


「できるか、できないかっていう問題じゃないでしょ。それに、レイリアだって実の娘が氷漬けのままじゃ嫌なんじゃない?」


 ミラの言葉にある程度は納得しながらも、俺は疑問だった。


 果たしてあの邪悪の化身レイリアが、実の娘を思って行動したりするだろうか。


 そもそも、あのレイリアが俺たちの協力するのかどうか……甚だ不安なのであった。

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