第193話 探索と実行
それから俺達はしばらくの間探索と情報収集をすることになった。
それでわかったことといえば、この街は完全にルミス教の信者だけで構成されているということ、そして、中央部の白い塔……そこに女神様がいらっしゃる、ということらしい。
「……で、白い塔に入るには……どうやら、このアクセサリーじゃダメみたいなんだよね」
ミラが面倒くさそうな顔をしながらアクセサリーを指先で弄んでいる。
「なんとなく予想はしていたけど、信者の中にもランクがあって、白い塔に入るにはただの信者じゃなくて、信徒でなければならないみたいなんだよね」
「信徒? 信者と信徒が違うのですか?」
俺がそう言うとミラは小さく頷く。
「そう。信徒は信者のまとめ役みたいな立場らしいよ。だから、白い塔に入るには……信徒を探すところからだね」
ミラの言葉で方針は決った。とりあえず、今は信徒とやらを探さなければいけないようだ。しかし、信徒を探すとなると……どうやって探せばいいのだろうか。
「簡単ですね! また、私に任せて下さい!」
サキがまたしても得意げにそういう。と、いきなりメルがサキのことを小突く。
「あのねぇ……さっきの街の信者の信仰心にさえアンタの能力、負けかかっていたじゃない。信者よりも信仰心が強そうな信徒にアンタの能力は効くわけ?」
「え……ちょ、ちょっと強めにかければ……」
「だから! またさっきみたいに加減を間違えて相手に暴走されたから騒ぎになっちゃうでしょうが!」
メルに怒られてサキはしょんぼりしている。だが、メルの言う通りだ。先程の感じを見ると、サキの能力に頼ってアクセサリーを集めるのは危険だろう。
「ならば……我に任せよ。その信徒のアクセサリー以外の部分を凍らせてしまえば簡単に手に入るだろう?」
ラティアがそう微笑むと、周囲が少し肌寒くなる。
「あ、姉上……さすがにルミス教を信仰しているとはいえ、罪なき人たちを氷漬けにしてしまうのは……」
「何? ダメなのか?」
……リアの言う通り、さすがにラティアの魔術で氷漬けにしてしまうのは不味いだろう。しかし、そうなるとどうやって信徒達からアクセサリーを奪えば良いのか……
「まぁ……そうなると、ウチの出番かな」
と、ミラが急にそんなことを言い出した。
「ミラ……何かいい案があるのですか?」
「……あのねぇ、アスト君。ウチ、魔法使いになる前はなんだったか、言ってたことあるよね?」
「え、えぇ……アサシンだったことは、覚えていますが……」
「こういう誰かから情報を得たり、物品を奪うってことも随分とやってきたわけ。で、こういう時どうするかもウチは知っているわけ」
そう言うと、ミラの雰囲気が変わる。いつもの魔法使いとは違って、さらに鋭い雰囲気を感じる。
「さて……じゃあ、みんなにも協力してもらおうかな」
「え……協力ですか?」
「うん。皆には、とりあえず、この街にいる信徒を探してきてほしいんだ。六人ね」
「わ、わかりました……でも、ミラは?」
「その間に準備をしておくよ。で、見つけたら適当な理由を言って、酒場まで連れてきてね。じゃ、また後でね」
そう言ってミラは歩いていってしまった。残された俺達は顔を見合わせる。
「えっと……じゃあ、とりあえず、探してみますか。あ……でも、誰か一人は二人連れてきて貰う必要があるんですが……」
そう言って俺はチラリとサキを見る。と、サキは満面の笑みで俺のことを見る。
「わかりました! サキに任せてください!」
そう言うと同時に、サキはそのまま走っていってしまった。俺達は今一度顔を見合わせて苦笑いする。
「じゃあ……俺達も行きますか」
こうして俺達は信徒探しへ出かけていったのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます